事業再生とは?【流れ・手続き完全ガイド保存版】

事業再生とは?【流れ・手続き完全ガイド保存版】

事業再生とは、いったいどのようなことを指しているのでしょうか。事業再生の方法や事業再生を成功させる条件、手法ごとのメリット・デメリット、事業再生の流れまで、関連する過去記事を紹介しながら解説していきます。

本記事を読むことで、事業再生に関するあらゆる知識を一から得ることができるでしょう。

事業再生とは?

事業再生とは債務整理における再建型の代表的な方法の1つです。清算型の破産とはどのような違いがあるのでしょうか。

事業再生の基本は債務整理

企業が資金繰りに苦しくなったときは債務整理を行うことになります。その方法としては、裁判所が介入して債務の調整を行う法的整理と、債権者と債務者が直接折衝して債務を処分していく私的整理という2つの方法があります。

どちらにせよ、事業を廃止して財産を清算し、企業の解散を目指す債務整理方法として清算型の破産を選ぶか、事業を存続させるために再建型の方法を選ぶかどちらかとなります。

再建型の基本的な債務整理方法としては事業再生が挙げられます。

なお、2010年代後半、全国で100店舗近くを展開した人気アパレルブランド「マザウェイズ」は、事業再生の方法として破産を選択しました。マザウェイズが破産に至った詳細は過去記事で紹介しています。

事業再生と企業再生の違い

事業再生とよく似た言葉に企業再生があります。一般的には、どちらも同じような意味で使われることがありますが、厳密にいえば内容は異なります。

事業再生とは、企業の特定の不振事業に着目し、その事業を再生し安定して収益を得られるようにしていくことで再建を目指す方法のことです。

対して企業再生とは、1つの事業ではなく会社全体を立て直して再建していく方法です。複数の事業が赤字に陥っている場合や、企業全体の経営状態が悪化している場合に選択する形態となっています。

以下の過去記事では、事業再生と企業再生の違いを詳しく説明しています。

事業再生の方法

法的整理と私的整理に分かれる事業再生ですが、私的整理にも一定のルールに基づく準則型とルールは定められていない非準則型の2つがあります

私的整理

まずは私的整理の種類を見ていきましょう。

準則型と非準則型に分かれる

準則型とは一定のルールに基づく私的整理の方法のことです。

私的整理は債務者が債権者と個別に話し合いを行って進めていきます。その話し合いの状況は外部に不透明であるため、債務者に不公平な扱いがされる可能性があります。

そこで、統一的に一定のルールを設け私的整理を進めていく方法が準則型と呼ばれています。

準則型の4つの私的整理方法

準則型には以下のような4つの方法が存在します。

  • ①中小企業の事業再生等ガイドライン(旧:私的整理ガイドライン)
  • ②中小企業再生支援協議会による再生支援事業
  • ③事業再生ADR
  • ④地域経済活性化支援機構による再生支援事業

①中小企業の事業再生等ガイドライン(旧:私的整理ガイドライン)

コロナ禍で過剰債務に陥った企業を救うために、また、コロナ禍が終息した後の経済回復を早めていくために、「私的整理」が行われやすいよう規制緩和をし、2021年にルールを策定したのが中小企業向けの私的整理ガイドラインです。

2022年4月には、この私的整理ガイドラインの利用条件がさらに緩和され、中小企業の事業再生等に関するガイドラインとして生まれ変わりました。

この新ガイドラインでは、元本等返済の一時停止のタイミングは「事業再生計画案の策定前(債権放棄案件であっても再生の基本方針で可)」となっており、実質債務超過解消までの年数は「5年以内を目処」となっています。

また、中小企業版私的整理手続きである中小企業の事業再生等に関するガイドラインで私的整理を行うことで、1案件につき700万円までの補助金を受けられるようになっています。

中小企業の事業再生等に関するガイドラインについては、以下の過去記事で詳しく解説しています。

②中小企業再生支援協議会による再生支援事業

中小企業が単独で事業再生の計画を策定するのは難しいため、中小企業診断士などの専門家を交えて再生計画を策定していくのが中小企業再生支援協議会による再生支援事業です。

中小企業の中には優れた技術やノウハウ、人材を持つ会社も少なくありません。そこで官民が一体となってファンドを設立し、こうした企業に資金支援と経営指導等を実施することで再生を図っているのが本再生支援事業の趣旨です。

事業再生ファンドは、投資事業有限責任組合といった形で組成していきます。その組合員には無限責任組合員(GP=ジェネラルパートナー)と有限責任組合員(LP=リミテッドパートナー)の2つがあります。

無限責任組合員は、主に投資専門会社から構成され、出資額にかかわらず、出資対象の中小企業経営者に対して無限の経営責任を負います。そのために経営支援についても直接関与していきます。

有限責任組合員は、地域の金融機関、民間事業会社、地方公共団体、信用保証協会などから構成され、対象中小企業に対し、出資額の範囲でのみ経営責任を負うものです。

なお、中小企業再生支援協議会による再生支援事業については、以下の過去記事でも詳しく解説しています。

③事業再生ADR

法的整理の新たな手続方法として、事業再生ADR(Alternative Dispute Resolution:裁判外紛争解決手続)は2007年に制定されました。

法的整理でありながら私的整理と同じように、事業をスムーズに続けながら金融機関との話し合いで事業再生のための解決策を探っていける再生方法が事業再生ADRです。

事業再生ADRでは、債務者の財産状態や再建計画案は中立的な専門家がチェックすることとなっています。そのために、メインバンク以外の金融機関にも交渉を応じてもらえるようになるというメリットがあります。

事業再生ADRについては、以下の過去記事でも詳しく解説しています。

事業再生ADRは法的整理と私的整理のメリットを兼ね備えた事業再生方法です。そのため近年では、債務超過に陥った中堅~大規模企業が利用することも多くなっています。

事業再生ADRを利用した企業の具体事例については、過去記事で紹介しています。

④地域経済活性化支援機構による再生支援事業

経営資源を有しながら負債を背負っている事業再生を支援するために、株式会社企業再生支援機構法に基づいて設立された会社として、株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)があります。このREVICでは事業再生支援業務を行っていますが、そのほかにも民間事業者と共同してのファンド運営や地域金融機関などに対する専門家の派遣、金融機関の事業再生子会社への出資や融資といった業務も行っています。

なお、地域経済活性化支援機構における事業再生支援の期間は5年までとなっています。

法的整理

法的整理には「民事再生」「会社更生」「特定調停」という3つの手続き方法があります。

法的整理の詳細を知りたい方は、以下の過去記事でも詳しく解説しています。参考にしてみて下さい。

経営者を変えずに会社の再生を目指していく民事再生は、資金繰りが悪化した中堅企業にも利用されています。

会社更生

司法が介入して広く関係者の権利調整を行いながら抜本的な再生を目指す事業再生方法が会社更生です。裁判所が介在する手法であり、事業再生のために経営者や株主は退任しなければいけません。退任後は裁判所が選出した再生管財人が裁判所の監督を受けながら事業の再生を図っていきます。

会社更生は、民事再生よりも債権者の人数が多い大企業などでよく選択されています。

会社更生については、以下の過去記事でも詳しく解説しています。

M&A

私的整理と法的整理以外の事業再生方法としてM&Aがあります。M&Aとは「Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」の略であり、企業の合併・買収を意味しています。合併で複数の会社が1つの会社になったり、ある会社が他の会社を買収したりすることを意味しています。

自社にとっては不採算部門であっても、他の企業にとっては魅力的な事業というものもあります。また、新しい事業を始める際にいち早く収益化するためには、人材や設備が整っている既存の他社事業を買い取ることで人材育成にかかる時間や設備を購入するコストを削減できます

そのほか、他社の既存事業を買収し、自社の事業と組み合わせて新たな付加価値を生み出せれば、市場や顧客を拡大できます。このような考えにもとづいてM&Aは行われます。

M&Aといえば「外資系企業のハゲタカファンドが会社を乗っ取っていく」というようなイメージもありました。しかし近年では、企業が成長していくための戦略の1つとして考えられることも多くなっています。

なお、M&Aにも「事業譲渡」「会社分割」「株式譲渡」「企業再生ファンド」という4つの方法があります。

M&Aについては、以下の過去記事でも詳しく解説しています。

過剰債務に陥った事業はスポンサー企業が設立した新会社に譲渡し、スポンサー企業が事業の継続と経営の立て直しを担う第二会社方式を採用した事例は以下の過去記事をご覧下さい。

事業譲渡

特定の事業部門の資産や負債を売却することは事業譲渡と呼ばれます。企業が収益化されていないノンコア事業部門の資産と負債だけを事業譲渡することによって、売却した企業はコア事業へ経営資源を集中できるようになり、事業再生を行うことができます。

会社分割

会社の事業をいくつかに分け、不採算事業などを元の会社から切り離す組織再編の方法は会社分割と呼ばれます。分割した事業は、新しい会社として運営していく新設分割という方法か、既存の会社の一部にする吸収分割という方法が採られます。

なお、この会社分割は、会社法上では組織再編に該当します。そのため、債権者保護の手続きが必要となり、債権者の合意を得ないと実行できません。そこで事前に、金融機関などの債権者と調整を行うことは不可欠です。

株式譲渡

経営者の保有株式を買い手企業に売却し、事業の一部もしくは全部を承継していく方法は株式譲渡と呼ばれます。売買の手続きが比較的用意であるため、中小企業のM&Aにも用いられている方法です。ただ中小企業では、全株式譲渡を前提にして現経営陣が経営権を手放して総退陣して、新しい経営体制に移行する形が多くなっています。

企業再生ファンド

投資家から集めた資金を元手にして金融機関から債権を買い取ったり、企業へ出資を行ったりする方法は企業再生ファンドと呼びます。

方法としては、ファンド運用会社が事業再生の専門家を企業に派遣。不採算事業の売却や資金調達の見直し、営業手法の改善、コスト削減など、総合的に事業再生を行っていきます。そこで最終的には、株式公開や第三者への株式譲渡によって利益を上げて、その利益を投資家に還元していきます。

事業再生までの流れ

事業再生を行っていくためには、事業再生に至る前に事業実態の現状を把握します。まず借入金返済のリスケ(リスケジュール)を金融機関にお願いしていきます。

ただリスケだけでは資金繰りを改善できずに債務免除が必要と判断したら私的整理の事業再生方法から検討していきます。私的整理の利用が無理なようでしたら法的整理を検討するようにします。もしここで事業再生できない場合は破産への道を辿ることになりますので、この流れは重要です。

①デューデリジェンス

  • 自社の事業内容や財務状況、事業再生の法的な問題など、現状を客観的な立場から把握する調査を行う

②再生方法の決定

  • 債務免除を受けずに事業再生できるかどうかの判断のため、財務内容や資金繰り表を細かくチェック
  • 私的整理、法的整理のどちらを利用して事業再生を行うかを検討

③再生計画の作成とその合意

  • デューデリジェンスの調査内容を受けて事業計画書を作成
  • 債権者あるいは裁判所に対して再生計画の合意を得る

④再生計画実行

  • 再生計画にもとづいて再生手続きを実行
  • 再生計画のとおりに債権者に弁済が行われれば再生手続は完了

事業再生の流れについては、以下の過去記事でも詳しく解説しています。

①デューデリジェンス(案件の調査)

デューデリジェンス(Due Diligence)とは、投資にあたり投資対象となる企業や投資先の価値やリスクなどを調査することです。案件の調査とも呼ばれます。

事業再生においては、事業再生を検討している企業の事業内容や財務状況、事業再生の法的な問題など、その企業の現状を客観的な立場から把握していきます。

デューデリジェンスについては、以下の過去記事でも詳しく解説しています。

負債がなければ継続できるか?

デューデリジェンスにおいては、案件の調査を行っていく過程で「その企業は本当に事業を続ける価値があるのかどうか?」を見極めていくことが必要です。しかしその見極めは難しさを極めることもあります。そこでデューデリジェンスは事業再生の専門家に相談しながら実施していくのがベストです。

なおデューデリジェンスは、以下のような内容を調査した過去記事が参考となります。

②再生方法の決定

私的整理には、「中小企業の事業再生等ガイドライン」「中小企業再生支援協議会による再生支援事業」「事業再生ADR」「地域経済活性化支援機構による再生支援事業」といったさまざまな方法が用意されているほか、M&Aにも4つの方法が存在します。

どの再生法法を選んでいくかは、「事業を存続させたいのか」「取引企業、従業員を優先したいのか」など、会社の将来像を見据えて最善の方針を決定しなければいけません。ここで方針を間違えて私的整理ができないとなれば、法的整理に移行せざるを得なくなります

そこで、再生法法を決定する際には事業再生の専門家に相談することをおすすめします。

選択によって債務整理方法が異なってくる「経営権を誰が保有するのか?」について、参考となる事例は以下の過去記事をご覧下さい。

③再生計画の作成とその合意

デューデリジェンスの調査結果を踏まえて再生計画を作成。債権者あるいは裁判所に対して、その再生計画の合意を得ます。

④再生計画実行

再生計画が決定されたら計画実行のプロセスに移ります。この実行プロセスにおいて、支援対象企業の株式や新株予約権付社債の取得、金融機関の保有する貸出債権の買い取りといった資金・金融支援策が実行されるようになります。

そのため、再生計画と実際の進捗状況との予実管理が重要になります。

資金繰り改善を図る方法

資金繰りを改善するためには、借金残高を減額してもらったり、返済スケジュール計画を組み直してもらったりする必要があります。

リスケジュール

借入金が増えて返済ができず、かといって追加融資も受けることができないのであれば、返済のリスケ(リスケジュール)を金融機関に依頼します。ただ、銀行に駆け込んでリスケをお願いしても、事業を立て直せる証拠を用意しないと応じてくれないことがあります。

また、リスケをすると融資条件が変更になったり追加融資が難しくなったりする場合があります。そこでリスケを行う際には、事業再生の専門家に相談することをおすすめします。

リスケについては、以下の過去記事でも詳しく解説しています。

DDS(デッド・デッド・スワップ)

既存の借入金を、他の債務よりも債務弁済の順位が劣る借入金である劣後ローンとして借り換える手法のことをDDSと呼びます。とくに資本的劣後ローンは金融機関で資本とみなされますので、良い条件での融資を受けられる可能性があります。

DDSについては以下の過去記事でも詳しく解説しています。

債務放棄(債権カット)

リスケもDDSも無理も無理だったとしても、金融機関に債権の一部を免除してもらうよう交渉する余地は残っています。それが債務放棄(債権カット)です。

債務放棄(債権カット)の最大のメリットは元本そのものが減ることです。ただ、金融機関としては損をするだけですので、かなりの難色を示されるはずですので、事業再生の専門家に相談を行いましょう。

債務放棄(債権カット)については、以下の過去記事でも詳しく解説しています。

劣後ローン

「劣後(れつご)」には「後回し」という意味があります。そこで劣後ローンというと、一般的な債権よりも返済の優先順位が低い融資のことを意味しています。とりわけ資本性劣後ローンは「資本」的な性格を持った融資となります。

資本性劣後ローンは、金融機関の審査時に負債と見なされず、自己資本の一部と解釈されます。そのため、融資が受けやすくなり、財務を安定させるための資本強化が図れるようになります。

劣後ローンについては、以下の過去記事でも詳しく解説しています。

大手飲食企業「ワタミ」が、資本性劣後ローンでコロナ禍による苦境を乗り切った事例は、以下の過去記事をご覧ください。

事業再生の注意点

収益を改善しなければ意味がない

いくら自社の資金繰りが改善したとしても、収益を改善し収益力を上げていかないと、せっかくの事業再生が無駄になってしまいます。そこで事業再生の専門家に相談することで、現状の事業の良し悪しの見極めをしてもらうことをおすすめします。

収益を改善するためのコスト管理の重要性については以下の過去記事でも詳しく解説しています。

過剰債務の見直しを

事業再生を成功させるためには、リスケやDDS、債務放棄(債権カット)、資本性劣後ローンといった資金繰り改善を図る方法を実行するだけでなく、コストカットやリストラを行いながら過剰債務を見直していくことも必要です。

企業におけるコストカットやリストラは従業員にとって、とかくイメージは良くありません。とくに、リストラクチャリング(再構築)の略であるリストラは、「人員整理=首切り」というイメージを強く持たれることが多いようです。

しかしリストラクチャリングとは「再構築」を意味するように、経営不振に陥った企業が、その原因を究明し、余剰の人員や設備などの資産を整理。新たに資金を投入することで、新規の事業分野に進出するなどで企業や事業を再生させ、新たな成長軌道に乗せるための一連の変革プロセスのことです。

経営不振の原因が高コスト体質にあるのであれば、原材料の見直しや人件費カットなどを行い、コストカットとリストラによって企業のスリム化を図ることで事業再生が進められるようになります。

リストラの重要性については、以下の過去記事でも詳しく解説しています。

コストカットの重要性が理解できる事例を紹介した過去記事は以下をご覧下さい。

事業再生を成功させるには知見豊富な専門家に相談を

自社の現状把握をしたり自社にとって最善な事業再生の手法を選択したりするためには、経験豊富な事業再生の専門家に相談するのがベストです。自社にとっての重大な局面である事業再生を成功させるには、必須といえるでしょう。

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