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Case1 過剰債務に陥った飲食運営会社を第二会社方式で再生支援
今、景気が落ち込んで多くの企業が窮地に立たされています。ニュースなどで企業の倒産や廃業が報じられて他人事ではないと考えられている経営者の方も少なくないのではないでしょうか。
企業が経営不振に陥ってしまうとどうなるのでしょうか?どのように再建していけばいいのでしょうか?今回は5つの異なる業種の中小企業における事業再生事例をご紹介します。経営の悪化に悩まれている経営者の方にとって役に立つよう、経営不振に陥った経緯から再生のプロセス、結果まで、可能な限り詳しくまとめました。
いずれの企業も事業再生という手段を選択することで倒産を免れ、事業と従業員の雇用を守り、新しい道を歩みはじめています。ぜひ、数ある事例の中からヒントを見つけていただければ幸いです。
事業の経緯
A社はショッピングセンターやサービスエリア内で飲食店を運営していました。20店舗以上を構え、地元では知名度も上々。800人以上の従業員を雇用し地域にも貢献し、経営は順風満帆に思われました。
さらに事業を拡大するため精力的に新規出店を進めてきましたが、売上が予想に反して頭打ちに。出店資金はメインバンクをはじめとした銀行や日本政策金融公庫からの融資で賄っていたため過剰債務に陥り、資金繰りがショート。破綻寸前となりました。
渋る社長を説得して実行されたスキーム
A社は経営改善計画を作成して経費の削減や採算が採れない店舗の閉鎖、資産の売却などの改善策を実行してきましたが、 すでに負債が膨らんでいた状態では焼け石に水でした。資金繰りがまずます悪化し、メインバンクへの返済は滞り、仕入れ業者への支払いや従業員への給料も遅れるという事態に。もはやA社だけで経営を立て直すのは不可能なレベルに陥っていました。そこでメインバンクが再生に乗り出したのですが、そこで問題が発生します。
経営手腕に自信があり、経営権に固執する社長は銀行が提案する再生案に対して首を縦に振りませんでした。自助努力では再建が不可能な状態であること、経営者が責任をとって辞任しなければ再生が進まないことなど、担当者が何度も地道に社長を説得した結果、ようやく了承を得ることができたのです。
公的再生支援機関も関与し、具体的な再生計画が立てられ、実行することになります。主なポイントは「債務の整理」と「事業を引き受けてくれるスポンサー探し」の2点。A社は特別清算を行い、メインバンクをはじめとした金融機関や日本政策金融公庫は債権放棄を行うことに。同時に支援してくれるスポンサー企業を募りました。事業自体は規模が大きく、収益が見込まれ、さらに地域への貢献度も高いことから、すぐに支援を名乗り出る企業が現れました。
飲食店事業はスポンサー企業が設立した新会社に譲渡するという第二会社方式を採用し、スポンサー企業が事業の継続と経営の立て直しを担うことになったのです。
守られた従業員の雇用
A社の経営者は責任をとって退任することになりましたが、事業をスポンサー企業に譲渡することで店舗は営業が継続でき、従業員800人以上の雇用が守られました。ノウハウと資金力があるスポンサーが経営の舵取りを行うことで、キャッシュフローも改善。店舗にも会社にも、以前のような活気が戻り、順調に事業拡大を続けています。
Case2 リスケジュールとDDSで老舗温泉旅館を支援
事業の経緯
温泉街で老舗温泉旅館を運営するB社。やはりA社と同様、知名度が高く、これまで堅調に経営を続けられていたのですが、 老朽化した建物や設備の大規模改修が経営を逼迫することになります。旅館をリニューアルすれば客足が増えることを見越して設備投資費用はすべて金融機関からの融資で調達しました。
しかし、その後予想に反して客足が少なくなってしまい収入が激減。徐々に返済が厳しくなってきました。
経営努力だけでは改善できない経営状況
自力で窮地を脱しようと老舗ブランドを活かしたプロモーションや経費の削減など、さまざまな経営努力の結果、B社の収益率はわずかに改善しました。しかし、返済金や利息の支払いができるほどのインパクトはありませんでした。それに加えて日々の運営費や老朽化した設備の保守・修繕など、今後も定期的な出費が見込まれる状況で、経営者は 自助努力だけでは再建ができないと判断。再生支援協議会に相談することにしたのです。
B社に関しても事業の価値自体は高く、収益や資金繰り、財務体質の改善によって経営を立て直せる可能性が高いと判断され、事業再生の道を歩むことになりました。
リスケジュールとDDSで財務体質を強化
事業再生の専門家によって事業面、財務面などさまざまな側面から分析が行われ、B社が抱えている問題点を洗い出しました。まずは返済の負担を軽減して現金を会社に残すことを最優先に考え、 リスケジュールを実施。返済期間を延長することで、月々の返済額軽減に成功しました。また、金融機関に対してDDSにより借入金を劣後ローンとして借り換えることになりました。今後必要になるであろう設備投資の資金は「 事業再生計画実施関連保証」による支援で賄います。
リスケジュールとDDSによって返済の負担を軽減することで、B社の財務体質は改善。引き続き老舗旅館への集客強化や経費削減などの自助努力も併用して実践し、事業再生に向けて歩み続けています。
Case3 従業員500人の大手クリーニング会社をDDSで支援
取引行が金利減免などの金融支援
まずは資金繰りと財務体質の改善を目指し、政策金融公庫からの資本性ローン、金融機関からの融資で運転資金を調達しながら再建の道を目指しました。しかし、収益が減少する中で経営が持ち直す兆しはなかなか見られませんでした。
そこでC社のメインバンクが公的再生支援機関に支援を求めることに。経費削減や拠点の見直し、採算管理を強化するなど経営改善計画を策定しつつ、各債権者に対してリスケジュールや金利免除の申し出を行いました。
政策金融公庫、取引銀行、専門家が協議を重ねた結果、DDSによる支援が決定。金利免除やリスケジュールなどと組み合わせて支援が行われました。同時にC社は専門家の支援を受けながら収支改善や設備投資など経営再建計画を策定し実行していくこととなりました。
地元では大手でありこれまで順調に経営を続けられてきたこと、C社が現実的な改善計画を策定して経営努力を続けてきたこと、そして経営破綻に陥った際に地域経済に影響を及ぼす懸念があったことから、債権者である金融機関は積極的に支援に乗り出しました。
多くの雇用維持と将来の債務超過解消
当面の資金繰りの目処が立ったことで事業を守ることができ、500人以上の従業員の雇用を維持。将来の設備投資ができるくらいの水準にまで経営状況が改善されました。
今後はDDSによって債務超過状態の解消が見込まれています。現在もモニタリングを行いながら再生計画を着実に実行し、堅調に業績が推移しています。
Case4 債権放棄による支援を受けた再生医療用器具製造会社
事業の経緯
医療機器メーカーであるD社は製品の品質の高さと安価な価格設定から、長らく医療業界で支持を集めてきて、当時の経営者の判断によって海外市場にも進出していました。しかし、 現地メーカーとの価格競争により収益は減少。公的再生機関の支援を得ながら事業再生の道を模索していました。
その矢先に東日本大震災が発生しD社も工場が被災。生産力が低下して特殊製品の小ロット受注や採算管理の強化などで経営を立て直すことで当面の経営維持を目指していましたが、設備の老朽化によってそれも立ち行かず、再生計画の実行はおろか、資金繰りの目処すら立たなくなってしまったという事態に陥りました。
取引行が金利減免などの金融支援
D社に融資をしていたメインバンクと政策金融公庫は、被災をした上に設備更新もままならない状態で事業継続が困難と考え、公的再生支援機関に支援を求めました。
「設備を刷新し生産性を向上させる」「経営陣を刷新して新たな体制を構築する」という2点が経営を改善させる大きなポイントとなりました。
まずは債務超過を解消するため債権放棄が大きな軸となりましたが、メインバンクと政策金融公庫からも借り入れをしており、首を縦に振らない金融機関もありました。メインバンクと公庫は債権放棄を行い、債権放棄に同意しなかった債権者に対しては金融減免などの 条件変更を行い、返済の負担を軽減しました。
同時にスポンサー企業による再建を目指しました。D社はもともと技術力が高く、経営不振も経営者の判断ミスや東日本大震災による被災などの一時的な要因によるものであったため、事業を引き継いでくれるスポンサー企業を募ったところ、複数の企業が名乗りを挙げました。
公正な入札を行った結果スポンサーが決定し、D社は株式を無償譲渡。スポンサーからは出資・融資と経営陣の派遣という支援を受けることができました。
生産力向上と経営位管理体制の財務体質が強化
スポンサーによる資金支援と、それを元手にした設備投資によって生産性は大幅に向上。社内体制も刷新して的確な施策を実施したことで財務体質も改善。業績は堅調に回復しています。
Case5 「保証付債権DDS」で再生した木材加工製造業者
事業の経緯
木材加工を50年以上営んできたE社。住宅設備や内装材を製造・販売してきましたが、リーマンショックによる不動産低迷の煽りを受け売上が激減。景気が回復した後は新規顧客の開拓や経費削減といった企業努力を行ったものの、 不良債権の発生で利息の支払い負担が重く、経営不振に陥りました。
新たな再生手法「保証付債権DDS」を提案
E社は金融機関からの支援を得るために県内の専門機関に相談。事業面・財政面の両方から問題点を分析し、再生計画を策定しました。まず利息の支払い額を軽減するためにDDSを実行。利率を0.4%程度に設定することで大幅な負担軽減が実現しました。また、DDSでの借り入れは自己資本とみなされるため、財務体質を改善することができました。
本来DDS契約を締結するためには信用保証協会が金融機関に対して代位弁済を行わなければいけません。しかし、代位弁済を行うと信用保証協会が債権の請求権をもつことになり、他の金融機関からの融資が受けられなくなる恐れがありました。そこで、 代位弁済の必要がない「保証付債権DDS」という2014年に新設された、新しい手法を用いてDDS契約を締結しました。
加えて、メインバンク、再生専門家に対して再生計画の進捗状況を毎月報告。経営改善施策を行い、再生の道を歩み続けています。
金利負担軽減で収益が向上
保証付再建DDSによりE社の利子負担は大幅に軽減されました。加えて新規販路の開拓によって売上が向上。利益率が改善され、着実に事業再生のプロセスが進んでいます。専門家に力を借りながら、経営の健全化に向け今も再生計画を着々と実行しています。
まとめ
以上で紹介した企業はいずれも事業再生に成功した、もしくはあと一歩という段階です。どの企業にも共通するのは「 専門家に相談してサポートを受ける」「適切な再生計画を策定して実行する」「企業努力を惜しまない」という3点です。事業再生を成功させるのは容易なことではありませんが、この3つのことを意識すれば、会社を立て直せる可能性が高くなります。
とりわけ経営不振に陥った要因が一時的なものである場合、事業自体に価値や魅力がある場合は、金融機関やスポンサーから積極的な支援が受けられるでしょう。
特に重要なのは専門家に相談するということ。これができなければ、自社に合った再生計画を立てることができない、経営努力をしてもそれが的はずれなもので徒労に終わってしまうという結果になりかねません。
事業再生を考えられている経営者の方は、まずは「もはや会社が自分たちでは立て直せる状況にない」という現実を受け入れ、第三者に相談してみることからはじめましょう。それが、大切な事業と雇用を守る第一歩です。
厳しいことを言いましたが、諦めない限りはまだチャンスが残されています。事業再生のリアルでは、実績とノウハウが豊富な「事業再生に強い、おすすめ企業」を厳選して5社紹介しています。「 誰に相談していいかわからない」「再生支援を受けながら事業を立て直したい」「とにかくすぐにどうにかしたい」という経営者の方はぜひ参考にしてみてください。
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