2021年01月12日
目次
コスト管理の重要性
無駄にかかっているコストを見つけてそれを削減することで企業の利益は増加し、事業再生を果たすことができます。
しかし、短期的な利益向上を求めるがあまりに必要なコストまで削減して“やぶ蛇”に陥ってしまう企業も少なくありません。無駄なコストなのか、長期的に見て必要なコストなのかを見極めるのは非常に難しいものです。
そこで、今回は事業再生という観点からどんなコストを削減すべきなのか?失敗しないためにはどうすればいいのか?解説します。
コスト管理は事業再生の第一歩と言っても過言ではありません。いくら売上が伸びていたとしても出費が多ければ利益は出ません。コストが売上額を上回れば赤字に陥り、最悪の場合資金ショートを招いて倒産という結末を迎えてしまいます。
逆に言えば、無駄なコストさえ削減できれば事業再生、ひいては会社の今後の成長につながるのです。
事業にかかるコスト
無駄なコストを削減して事業再生を行うには「リストラチャクリング」の実行が効果的です。「リストラ」と聞くと人員整理のことを思い浮かべますが、それだけではありません。
会社の経営状態を改善するために設備や事業にかかる経費など、ありとあらゆるコストを見直し、無駄なものを削減していきます。また、債務の負担軽減や資本増強もリストラチャクリングと言えます。
事業にかかる代表的なコストのなかで削減しやすいものをいくつか見てみましょう。
人件費
「リストラ」という言葉を耳にして真っ先に思い浮かぶのが人件費の削減です。よく新聞やニュースなどで「●●人の早期退職者募集」など、企業のリストラに関するトピックを見聞きします。人件費は事業にかかるコストの中でも高い割合を占めているため、削減すれば大きな効果が期待できます。
しかし、安易に人件費を削減すると退職した従業員が路頭に迷う、残った従業員のモチベーションが下がるといったデメリットも多分にあります。まずは他のコスト削減を行った上でやむを得ない場合にのみ人件費に手をつけ、実行する際には慎重に対応することが重要です。
購買費
購買費とは商品やサービスを提供するために必要な材料や設備を仕入れるための費用です。人件費を削減する前に、まずはこの購買費を見直してみましょう。購買品を安価なものに切り替える、仕入先を再検討する、数量を適正化するといった方法でコストを下げることができます。
しかし、コストカットをしすぎたために商品やサービスのクオリティが下がってしまうと売上も減少しかねません。こちらもよく検討する必要があります。
コストカットを失敗しないために
無駄なコストを発見して正しく削減するためにはどうすればいいのでしょうか?コストカットに失敗しないためのポイントをご紹介します。
現状分析
まずは今会社がどのような状況なのか?どんなコストがかかっているのか?を徹底的に分析しましょう。経営状態を悪化させているボトルネックが見えてくるはずです。次にそれが削減可能なものなのかどうか検討しましょう。
たとえば、前述のとおり人件費は安易に削減するべきではありません。
人件費と購買費の両方がかかっているなら、まずは購買費を削減するのが得策です。「必要なコスト」と「不必要なコスト」に切り分けて考えると、コスト削減の優先順位がつけやすくなります。
客観的な視点
経営者あるいは社内の人材がコストカットを検討すると私情が入って適正な判断ができない場合もあります。
「今まで頑張ってくれた社員に申し訳ない」という気持ちが強すぎて人件費が削減できなかったがために倒産し、従業員が全員路頭に迷う結果になってしまったら意味がありません。
そこで会社と直接的な関わりがない第三者からの意見も聞いてみましょう。私情を挟むことがないので、客観的な意見を得ることができます。
迅速かつ正確な削減
現状分析をしっかり行うことは重要ですが、そこにばかり時間を掛けるのも考えもの。今、会社は黄色信号が点灯している状態です。のんびりしているとコスト削減を行う前に倒産してしまうでしょう。
事業再生を果たすためには迅速かつ正確な判断と実行が求められます。
いざというときにとっさに正しい対策を行うためにも、日頃からコスト管理を行うことが重要です。常にお金の動きが把握できていれば今後同じ失敗を未然に防ぐこともできます。
改善
現状分析を行って課題を抽出し、それを改善するための方策が決まったら、いよいよ実行に移します。
ただし、やりっぱなしでは不十分です。施策が間違っていたり、もっと良い方法があったりするからです。
どのような結果になったのか?1ヶ月後、3ヶ月後、半年後というようにある程度期間が経過したら検証し、施策に問題があれば改善を行います。事業再生においても計画・実行・評価・改善というPDCAサイクルを回すのは非常に重要です。
日常的なキャッシュフローの可視化
先ほども少し触れましたが、なによりも日頃からキャッシュフローを明確にしておくことが重要です。日頃から収支を確認しておくことで、不必要な出費が見つかりやすくなり、適切なコストカットができるようになります。
そもそも、キャッシュフローが明確になっていないことが事業の失敗を招く一因です。繰り返しになりますが、お金の動きを把握していれば同じ轍を踏まずに済みます。
コストカットに成功し事業再生した企業例
ここからは適切なコストカットを行うことで見事事業再生を果たした企業の実例を見ていきましょう。
日産
日本を代表する自動車メーカーである日産も、かつては2兆以上の負債を抱え倒産寸前に追い込まれました。
再建の立役者となったのがカルロス・ゴーン氏。強力なリーダーシップを発揮し各部署から人材を集めて結成した「クロスファンクションチーム」がアイディアを出し合って事業の立て直しを行うとともに、2万1000人の人員削減、1415社あった取引先を600社に絞り込む、航空宇宙産業などの事業売却といったリストラチェクリングを断行し1兆円以上のコスト削減を実現。2年で赤字から一転して過去最高益を記録しました。
日本電産サンキョー
精密小型モーターを製造する日本電産サンキョーは事業転換に失敗して50億円もの赤字を計上。
そこで永守社長は「経費削減部」を設立し、購買費20%削減、一般経費半減を目標に掲げました。購買費は各部署の課長クラスの人員を集めた「Mプロジェクト」が徹底的に見直して目標達成。一般経費に関しても各部署の人材から構成される「Kプロ推進委員会」によって目標を達成しました。
日産、日本電産サンキョーの事業再生事例は「【事例から学ぶ】事業再生で必要なリーダーシップ」で詳しく掲載しています。事業再生のヒントがたくさん詰まっているので、ぜひご覧ください。
企業や事業への最適なメス入れが経営状態改善の近道
無駄なコスト削減なくして事業再生はありません。出費を抑えることができればお金が会社に残り、黒字転換を目指すことができます。しかし、どのコストを削減すべきか?自分たちだけで正確な判断を下して実行するのは容易ではありません。
事業再生のプロに相談すれば、客観的な視点で会社を見て計画から実行・評価、そして改善までサポートしてくれるはずです。事業再生を行う上でコストカットは急務です。早めに専門家に相談してみましょう。
関連記事
-
2024年11月29日資金繰り表とは?作成のメリットや記載するべきことについてもわかりやすく解説!
一定期間の現金収入と支出を記録し、会社の資金状況を把握するために作成される資金繰り表。作成義務はあり...