2021年01月06日
目次
中小企業再生ファンドの支援の流れ
企業のことを「法人」と呼びますが、これは私たち個人を「自然人」といった権利・義務の主体にするのと同様の趣旨によるものです。私たちは自然人として社会生活や経済活動をする上で、法的な権利・義務を負っています。同様に企業も、法人としての権利・義務を負い、その経営を行いながら社会の一員として存在しているわけです。
私たち自然人には、誕生から成長期、成熟期、衰退期を経て死に至るというプロセス、「ライフサイクル」があります。法人である企業も同様に、ライフサイクルで捉えることができます。設立に始まり、成長期、成熟期、衰退期と、自然人と同じプロセスを経るのです。
この自然人のライフサイクルの中では、病気を患い危機的状況から死に直面することもありますが、適切な処置により回復することができます。このような危機的状況は企業である法人にもあてはまります。今年初めから続く新型コロナウイルスも、ライフサイクルの中の一つの事象で、急激な景気の悪化から、多くの企業が深刻な経営不振に陥っています。新型コロナウイルの流行がなければ、健全な経営を行い、売上・収益をあげていたであろう企業が倒産してしまうと、雇用が失われるばかりでなく、取引先企業も連鎖倒産するなど、その社会的・経済的影響は大きなものとなってしまいます。
このような業績の悪化した企業を支援し、再生させるものに「企業再生ファンド」、「事業再生ファンド」があります。
ファンドを活用した企業再生、事業再生については、近年、国などでも積極的に取り組んでいます。それが「中小企業再生ファンド」と呼ばれる事業再生ファンドです。この中小企業再生ファンドは、国の機関が主体となって行われるため、一般的な再生ファンドとは、そのスキームの内容や手続きの流れも異なります。中小企業再生ファンドのスキームの内容や流れを理解し有効活用することで、企業や事業の再生を成功させるポイントなどについて解説していきましょう。
なお、企業再生、事業再生ファンドについては、「事業再生ファンドの仕組みと支援内容」を参照ください。
出典:独立行政法人 中小企業基盤整備機構|中小企業再生ファンド
中小企業再生ファンドは、国の機関である「中小企業基盤機構(以下:中小機構)」が主体となって、経営不振の中小企業経営者を支援して再生を図るものですが、限られた予算の中で実施するものですから、単に経営が悪化し、資金繰りに苦しむ全ての中小企業経営者を対象にした支援ではありません。
対象となるのは、以下のような中小企業です。
- 一時的な業況悪化などにより経営不振となってしまったが、中長期的に成長が見込める事業や経営資源を持ち合わせている
- ファンドによる支援とともに金融機関からのリスケジュールやリファイナンス、徹底したリストラクチャリングを行うことで再生し再び成長軌道に乗せることができる
- 仮に倒産してしまうと、多くの従業員の失業、取引先企業の連鎖倒産など、地域経済ひいては国民経済に重大な悪影響を及ぼしかねない
そのため、経営規模も中小企業とはいえ、従業員数が数十人から数百人、売上も最低数十億といった中企業・中堅企業などが主に対象となります。
中小企業再生ファンドの支援内容
中小企業再生ファンドを活用して企業を再生させるためには、その流れを理解しなければなりませんが、その前にどのような支援が受けられるのか見ておく必要があります。
中小企業再生ファンドは、民間の金融機関や事業会社、信用保証協会、自治体、中小機構などの「有限責任組合員」、そして民間の投資ファンド運営会社など「無限責任組合員」からなる「投資事業有限責任組合」です。
また、中小企業再生ファンドは、各地域によりその具体的支援内容が異なるため、「地域中小企業再生ファンド」とも呼ばれています。一般的には次のような支援となります。
「中小企業再生支援協議会」との連携による支援
中小企業再生支援協議会とは、各都道府県に設置されている中小企業の再生を支援するための公的機関です。
中小企業再生ファンドによる再生支援を受ける際に必要となるのが「再生計画」です。この再生計画は、中小企業再生支援協議会との連携のもとで作成されます。
株式あるいは新株予約権付社債等の取得を通じた資金支援
中小企業再生ファンドが、支援対象企業の株式を取得したり、当該企業が発行する新株予約権付社債を取得することで資金を提供します。
なお、新株予約権とは、株式会社に対して行使することで当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利です。この権利を付けた社債を新株予約権付社債といいます。
簡単にいえば、債権者であるけれども株主として会社の所有者の一人にもなり得るものです。
銀行等金融機関の保有する貸出債権の買取りによる金融支援
銀行等の金融機関が支援対象企業に貸出している債権を中小企業再生ファンドが買取ることで支援対象企業の過剰債務を軽減します。
ファンド運営会社による経営支援(ハンズオン支援)
中小企業再生ファンドの組合員の一つであるファンド運営会社による、専門的なアドバイスその他直接的な支援を受けることができます。
中小企業再生ファンド支援の一般的な流れ
中小企業再生ファンド支援の一般的な流れは、
①中小企業再生協議会への相談、②中小企業再生ファンドへの案件紹介、③案件の調査(デューデリジェンス=DD)、④再生計画の策定、⑤再生計画の実行、⑥再生計画の終了、⑦再生計画の最終チェック
といったものです。
以下詳しく見ていきます。
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①中小企業再生協議会への相談
経営不振に陥っている中小企業経営者、あるいは当該中小企業に融資している金融機関などから中小企業再生支援協議会へ経営支援についての相談が持ち込まれる。
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②中小企業再生ファンドへの案件紹介
中小企業再生支援協議会では、相談後、その相談内容に応じて適宜、中小企業再生ファンドへ案件の紹介を行う。
中小企業再生ファンドでは、組合員による協議により支援対象企業に決定するかどうか判断する。 -
③案件の調査(デューデリジェンス=DD)
中小企業再生ファンドは、支援対象に決定した企業について、企業の現状や経営不振となった原因究明など、徹底した調査(デューデリジェンス)を実施する。
公認会計士や税理士といった専門家による詳細な調査がポイントになる。 -
④再生計画の策定
デューデリジェンスの結果を踏まえて、再生計画を策定。
この再生計画の策定については中小企業再生協議会と連携して行われる。 -
⑤再生計画の実行
再生計画が策定されると、計画実行のプロセスに移る。
この実行プロセスにおいて支援対象企業の株式や新株予約権付社債の取得、金融機関の保有する貸出債権の買取りといった資金・金融支援策が実行される。
ここでは再生計画と実際の進捗状況との予実管理が肝となる。 -
⑥再生計画の終了
再生計画が予定通り進行し、当初の目標に達すると再生計画は終了。
そして再生計画により得られた利益を中小企業再生ファンドの組合員に分配する。 -
⑦再生計画の最終チェック
再生計画通りの進捗状況かどうか最終チェックし、計画通り進まなかったことが判明した場合には、新たな再生責任者のもと、引き続き再生計画が策定、実行されることもある。
中小企業再生ファンド組成の流れ
中小企業再生ファンド支援が成功するかどうかのポイントは、中小企業再生ファンドの無限責任組合員であり、直接支援を行う投資会社(ファンド運営会社)との相性(マッチング)も重要なポイントとなります。
そのため、中小企業再生ファンドの主体である中小機構では、直接支援する投資会社については、投資会社による出資提案の受付・相談、書面による事前審査、面談・面接による本審査を経て出資決定、ファンド組成といったプロセスを踏んでいきます。
企業再生ファンドの成功確率を上げるためには…
企業再生ファンドや事業再生ファンドともいわれる中小企業再生ファンドを活用し、企業あるいは事業の再生を図るには、これら再生ファンドのスキームの内容や手続きの流れについて十分理解することが重要です。それとともに大切なのは、先にも述べましたが、これら再生スキームを実際に行い、支援してくれる投資会社等との相性です。
多くのスタッフが常駐し、様々な案件に対応できる大手事業者も良いですが、クライアントの抱える経営課題を共有し、親身になって支援してくれるパートナーとしての事業者が、企業や事業再生には求められます。
このようにクライアントに寄り添い、その経営課題を解決してくれる良きパートナーとして高い評価を得ている事業者には、「みそうパートナーズ」、「山田コンサルティンググループ」、「フロンティア・マネジメント」などがあります。特に、「みそうパートナーズ」は、中小企業の企業再生・事業再生について専門的な知識・ノウハウを持ったスタッフが多く在籍しています。