事業再生ファンドの仕組みと支援内容

2021年01月06日

再生ファンドとそれぞれの違いについて

新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの中小企業経営者経営不振に陥っています。会社経営を長く続けていると、今回のようなウイルスによるパンデミックや政治的な混乱、景気の変動などの外的な要因から、幾度となく経営危機に直面するものです。

急激な売上の減少から赤字経営となり倒産してしまう企業もありますが、一方で多くの経営者は、様々な手段を講じて危機的状況を脱し、会社の再建を図ろうと努力します。

こうした会社の再建を、「企業再生」、「事業再生」などと呼びます。そして、その再生には、取引先の金融機関から追加融資を受けたり、リスケジュール(リスケ)という形で返済を猶予してもらう、あるいは取引先企業や友人・知人などにスポンサーとなってもらうなど、いろいろな方法があります。

こうした再生方法以外にも、近年ではファンドを利用したものが注目されています。「再生ファンド」と呼ばれ「企業再生ファンド」「事業再生ファンド」があります。

そこで今回は、この再生ファンドについて、密接な関係にあるM&A(合併・吸収)にも言及しながら解説してみたいと思います。

再生ファンドについて、具体的に見ていく前にファンドとは何か、その定義などについて確認しておきましょう。

ファンドには、本来「基金」という意味がありますが、通常は資産運用する会社・事業者をさします。

主なものに、民法上の「任意組合」、商法上の「匿名組合」・「投資事業有限責任組合(LSP)」・「有限責任事業組合(LLP)」といったものがあります。いずれの事業体においても、他者から金銭等の出資を募り、それを利用して何らかの事業や 投資を行い、その事業や投資から生じる収益を投資者に分配するもので、金融商品取引法では、「集団投資スキーム」などとも呼ばれています。

再生ファンドも広い意味では、こうしたファンドのひとつですが、その手法が違っています。一般的なファンドは、株式や債権といった金融商品や不動産に投資し、その運用益である利子・配当、不動産賃料等を投資家に分配します。

これに対し再生ファンドは、経営不振に陥った企業の株式などを取得する形で資金支援を行い、経営を再生させます。そして企業価値、つまり株価が高くなったところで売却して多額のキャピタルゲイン(売却益)を取得し、投資家に分配するものです。

このように、経営不振企業の株式をできるだけ安く買い叩き、徹底したリストラクチャリングにより、短期に株価を高めて会社を売却し、多額のキャピタルゲインを獲得することから、「ハゲタカ」、「ハゲタカファンド」などのネガティブなイメージを持たれることもあります。

次に、企業再生ファンドと事業再生ファンドについて見ていきますが、一般的な企業再生・事業再生という用語に明確な区分はなく、両者が併用されていることも少なくありません。

ただ、企業再生では、全社的な立場から、採算性のある事業・ない事業に分け、事業の選択と集中を行うのに対し、事業再生は、ある事業に着目してその事業を立て直し、収益性を高めるような場合に使われるように思われます。これが再生ファンドの場合、両者には違いが見られます。企業再生ファンドから見ていきましょう。

「企業再生ファンド」とは

企業再生ファンドとは、前の一般的なファンドとの違いでも述べたように、投資家から集めた資金を経営不振の企業に資金支援して経営を立て直し、株価が上がったところで売却し、キャピタルゲインを投資家に分配するものです。

経営不振でも再生できるだけの経営資源、その他潜在的なポテンシャルがあるかどうか見極める判断力が要求されます。

「事業再生ファンド」とは

事業再生ファンドは、「中小企業再生ファンド」という、中小企業の事業再生を目的とした「官民ファンド」のひとつです。投資事業有限責任組合(LSP)などの経営体により運営されます。

多くの中小企業の経営者は、自転車操業といった状況で、今回のような新型コロナウイルス感染症などでの景気変動で、経営が傾いて最悪倒産に追い込まれてしまいます。

ただ、中小企業の中には、優れた技術やノウハウ、人材のある企業も少なくありません。そこで官民が一体となってファンドを設立し、こうした企業に資金支援と経営指導等を実施することで再生を図るというものです。

企業再生ファンドが再生からのキャピタルゲインを目的とするものに対し、中小企業支援を第一にする点で違いがありますが、ファンドである以上収益が出たときは、出資者に分配されることになります。

事業再生ファンドの仕組みについて

事業再生ファンドの仕組み・組織の構成としては、まず、投資事業有限責任組合といった形で組成します。その組合員は「無限責任組合員(GP=ジェネラルパートナー)」、「有限責任組合員(LP=リミテッドパートナー)」の2つがあります。

無限責任組合員(GP=ジェネラルパートナー)

主に、投資専門会社からなります。出資額にかかわらず、出資対象の中小企業経営者に対して無限の経営責任を負います。そのため、経営支援についても直接関与してきます。

有限責任組合員(LP=リミテッドパートナー)

地域金融機関、民間事業会社、地方公共団体、信用保証協会等からなり、対象中小企業に対し、出資額の範囲でのみ経営責任を負うものです。

投資する側にとっても、民間の金融機関や地方公共団体、信用保証協会が参画しているため、特に投資専門会社など無限責任組合員も、心理的には一般の企業再生ファンドに出資するよりも気が楽な面があるかもしれません。

また、株式を購入する際には、株価が安いというだけで判断してはいけません。同業他社に対して、競争優位となり得る経営資源を保有しており、将来的には業績が回復し、成長が見込まれる企業でなくてはなりません。

事業再生ファンドのメリット・デメリット

経営再建を図ろうとする中小企業にとって、事業再生ファンドはありがたい存在です。再生するためにはまず資金の注入が必要ですが、経営不振企業には金融機関も容易に追加融資に応じてくれませんし、スポンサーもなかなか見つかるものではありません。

このようなときに、再生する上でこうしたファンドが大きなメリットとなります。また、信用保証協会が出資者として参画しているため、経営不振企業でも信用保証協会とのパイプが確保できることもメリットになります。将来的に保証付融資が受けられる可能性があります。

一方、デメリットとしては再生の見込みのない中小企業は利用できないこと。また、再生後株式が譲渡された際、好ましくない株主に大量の株式を取得されることで、経営に支障をきたすリスクもあります。

事業再生ファンドによる支援

事業再生ファンドによる支援の一般的なプロセスは、

①中小企業再生支援協議会との相談、②再生対象企業の調査と再生計画の作成、③再生計画の実行、④再生計画の完了

という流れです。

また、事業再生ファンドによる支援は、他の投資ファンドのように集めた資金を投資するといった形で、資金提供するだけにとどまりません。次のような支援策も実施しています。

① 中小企業再生支援協議会との再生計画

中小企業が単独で再生計画を策定するのは難しいため、中小企業診断士などの専門家を交え、中小企業再生支援協議会とともに再生計画を策定します。

② 資金の支援

再生計画策定後、事業再生ファンドが株式の買取り・新株引受などにより資金を提供します。

③ ファクタリング(債権買取り)

資金提供に代わって、あるいは資金提供とともに債権の買取りを行い、中小企業の再建を容易にします。

④ ハンズオン支援

中小企業経営者だけでは再生計画を実行することが困難な場合には、経営アドバイザーなどのスタッフを補佐役として常駐させることもあります。

⑤ 事業売却によるM&A

事業再生ファンドでは、再生計画を効果的なものにするため、必要であれば不採算事業を売却し、採算のとれる事業に経営資源を集中させることもあります。その際のM&Aスキーム(手法)としては、 「事業譲渡」によるものが一般的です。

自社で事業再生ファンドができるかわからない…

自社だけでは事業再生方法がわからない、あるいは事業再生ファンドによる再生のため、事業再生支援協議会と相談し、再生計画を策定しようとしたけれどうまくいかないなど、事業再生を図ろうとする中小企業経営者は頭を抱えることばかり。

そのようなときには、事業再生に強い経営コンサルタント会社(コンサルファーム)に依頼することをおすすめします。限られた時間の中で、自社に合った的確なアドバイスを受けることができます。

事業再生に強く、事業再生ファンドにも造詣の深い代表的な経営コンサルタント会社としては、「みそうパートナーズ」、「山田ビジネスコンサルティング」、「フロンティア・マネジメント」などがあります。中でも「みそうパートナーズ」は、中堅・中小企業の経営支援に強く、事業再生においても個々の中小企業の経営環境を正確に把握し、事業再生プランの提示や事業計画策定を通して納得のいく支援をしてくれます。

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