【5分でわかる】中小企業の事業再生等に関するガイドライン徹底解説

2024年01月30日

2022年4月から「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」が施行されています。この新たなガイドラインでは、大企業・中堅企業を念頭に置いて2001年9月に策定されていた「私的整理に関するガイドライン」とは異なるポイントがいくつかあります。そこで本記事では、その概要をわかりやすく解説していきます。

中小企業の事業再生等に関するガイドラインとは

中小企業の事業再生等に関するガイドライン」とは、中小企業の実態を踏まえた中小企業の事業再生の私的整理に関する民間ルールをまとめたものです。これは2021年6月18日に閣議決定された「成長戦略実行計画」を受けて制定されています。そこでは中小企業者の、「平時」「有事」「事業再生計画成立後のフォローアップ」の各段階に応じて、中小企業者と金融機関の果たすべき役割を明確化し整理して表記されています。

中小企業向けのガイドライン制定の背景

中小企業向けのガイドラインが制定された背景には、新型コロナウイルスの感染拡大により中小企業が経営などに大きな影響を受けたことが背景にあります。中小企業庁が発表した「2021年版 中小企業白書 小規模企業白書」によると、日本の中小企業数は企業全体の99.7%を占めています。そのため、新型コロナウイルス感染拡大の影響に対して経営改善に取り組む中小企業者がこの難局を乗り切り、今後は持続的成長に向けて踏み出していくためのガイドラインが必要となったことが背景にあります。

中小企業の事業再生等に関するガイドラインの2つの目的

中小企業の事業再生等に関するガイドラインの内容は、3部構成になっています。まず第1部ではガイドラインの目的が2点、掲げられています。それぞれ記載されている概要は以下のとおりです。

1. 中小企業者の「平時」、「有事」、「事業再生計画成立後のフォローアップ」、各々の段階において、中小企業者、金融機関それぞれが果たすべき役割を明確化し、中小企業者の事業再生等に関する基本的な考え方を示すこと。

2. より迅速かつ柔軟に中小企業者が事業再生等に取り組めるよう「中小企業の事業再生等のための私的整理手続」を定めること。

1.事業再生を3つの段階に分け、それぞれの取り組みを明確化

1つめの目的は、事業再生を「平時」、「有事」、「事業再生計画成立後のフォローアップ」と3つの段階に分けて、それぞれの段階で中小企業と金融機関の双方の役割を明確に定めることです。特徴としては、経営危機が発生した「有事」だけでなく、経営危機が発生する前の「平時」の段階の対応について着目している点です。この目的に対応する内容は、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」の第2部にまとめられています。

2.「中小企業の事業再生等のための私的整理手続き」を制定

2つめの目的は、中小企業が私的整理を実施にするに当たって、準拠すべきルールを定めたことです。そこでは、中立的で公平・公正な第三者の支援専門家を専任することによって、中小企業や金融機関が迅速で円滑な私的整理手続を進められるように定めています。

第三者支援専門家は、中小企業が策定する事業再生計画に相当な理由があるか、また実現性はあるかなどを検証することになっており、この目的に対応する内容は、本ガイドラインの第3部である「中小企業の事業再生等のための私的整理手続 (中小企業版私的整理手続)」にまとめられています。

事業再生への取り組み方の基本的な考え方

ここからは、具体的な事業再生の取り組みについて解説します。まずは第2部で示される「事業再生への取り組み方の基本的な考え方」についてですが、本ガイドラインにおいては「平時」と「有事」が区別されている点に特徴があります。

「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」における「有事」の定義は、下記のとおりです。

有事とは…
収益力の低下、過剰債務等による財務内容の悪化、資金繰りの悪化等が生じたため、経営に支障が生じ、又は生じるおそれがある場合。

本ガイドラインにおける「平時」とは、なんらかの要因で「有事」に移行する前の段階と定義されています。

1.「平時」における中小企業者と金融機関の取り組み

「平時」における取り組みは2つの効果が期待されています。1つは中小企業者が「有事」に陥ることを防止するという予防的効果。もう1つは、「平時」から中小企業者と金融機関が信頼関係を築いておくことで、中小企業者が「有事」に陥ったときでも早期に事業再生などに取り組むことができるという効果です。

中小企業
金融機関
  • 収益力の向上と財務基盤の強化
  • 情報開示等による経営の透明性確保
  • 法人と経営者の資産等の分別管理
  • 有事への段階的移行に対する予防的対応
  • 中小企業者の経営課題の把握・分析等
  • 最適なソリューションの提案
  • 経営情報等の説明を受けた場合の誠実な対応
  • 有事への段階的移行に対する予兆管理

中小企業側が行う取り組みで重要なのは、適切な情報開示を行い経営の透明性を確保するように努めることです。その上で中小企業側に「有事」に陥りそうな兆候が見られたら、「金融機関へ報告する」「専門家等の助言を得る」「本源的な収益力の改善に向けた事業改善計画の策定等の予防的対応をとる」といった行動を取ります。

そのとき金融機関側としては、中小企業から開示された情報をもとに不利な対応を行わないこと、中小企業が「有事」へ移行している兆候を見逃さないように努めること、「有事」の予兆を察知したら事業改善計画の策定やその実行への取り組みを支援することが求められています。

2.「有事」における中小企業者と金融機関の取り組み

中小企業に経営危機が訪れるという「有事」に陥った際、中小企業側と金融機関側が事業再生に取り組む上での基本的な対応を示したものです。

中小企業
金融機関
  • 経営状況と財務状況の適時適切な開示等
  • 本源的な収益力の回復に向けた取組み
  • 事業再生計画の策定
  • 有事における段階的対応
  • 事業再生計画の策定支援
  • 専門家を活用した支援
  • 有事における段階的対応(債務返済猶予や債務減免等の申出など)

「有事」の際は、債務返済猶予や債務減免などによって借入金の負担を軽減することが検討されます。それだけでなく、債務者である中小企業が成長していくために必要な「本源的な収益力の回復」を目指して、自ら取り組むことも求められます。

3.事業再生計画成立後のフォローアップ

中小企業
金融機関
  • 事業再生計画の実行に向けた取組み
  • 金融機関への適時適切な状況報告
  • 事業再生計画の達成状況の継続的なモニタリング
  • 経営相談・経営指導
  • 事業再生計画の見直しの要否の検討等

事業再生計画の成立は、事業再生のための具体的な取り組みの第一歩です。成立後は、事業再生計画の達成状況を常にモニタリングしていくことが重要です。

そこで事業再生計画と実績の乖離が大きくなっている場合には、中小企業者と金融機関は相互に協力して乖離の原因を分析していく必要があります。同時に、計画を達成するためにはどうしていけば良いのかを誠実に協議することが必要となってきます。

中小企業版私的整理手続を利用するためには

「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」の第3部には、「中小企業の事業再生等のための私的整理手続 (中小企業版私的整理手続)」が定められています。

「私的整理手続」とは、法的手続によらずに、中小企業と金融機関との間の合意に基づき、債務について返済猶予、債務減免等を受けることにより、中小企業の円滑な事業再生等を行うこととされています。

そこで次に、再生を目指す企業の私的整理手続についてポイントを解説します。

再生型中小企業版私的整理手続の利用の条件

再生型の私的整理手続を利用できる条件は、次の3項目すべてを満たすことです。

① 収益力の低下、過剰債務等による財務内容の悪化、資金繰りの悪化等で経営困難な状況に陥っており、自助努力のみによる事業再生が困難であること。

② 対象債権者に対して経営状況や財産状況に関する経営情報等を適時適切かつ誠実に開示していること。

③ 中小企業者及び中小企業者の主たる債務を保証する保証人が反社会的勢力又はそれと関係のある者ではなく、そのおそれもないこと。

再生型私的整理手続における主な取り組み

中小企業版再生型私的整理手続では、債務者である中小企業が第三者の支援専門家の支援を受けることが求められます。この第三者の支援専門家とは、「弁護士、公認会計士等の専門家であって、再生型私的整理手続及び廃業型私的整理手続を遂行する適格性を有し、その適格認定を得たものをいう」と定義されています。

再生型私的整理手続において、中小企業、第三者の支援専門家、金融機関のそれぞれが取り組む内容を以下で解説していきます。

●中小企業の主な取り組み

  • 事業再生計画案の内容の相当性・実行可能性等の調査・報告等を行う公正中立な第三者の支援専門家の候補者の選定
  • 手続利用を検討している旨を主要なお取引金融機関に申し出るとともに、選定した第三者支援専門家に支援を依頼
    ※ 手続利用の要件ではありませんが、取引金融機関への事前相談は、円滑な手続進行のために、できる限り時間的余裕をもって行うことが望ましいと考えられます。
  • 事業再生計画案の作成
    ※ 事業再生計画が成立した場合、計画実行と達成に向けた誠実な対応、金融機関等への適時適切な状況報告等が必要となります。

●第三者支援専門家の取り組み

  • 再生支援開始の判断
  • 中小企業者が作成する事業再生計画案の進捗状況等について、適宜協議・検討
  • 事業再生計画案の調査報告書の作成、債権者会議における調査結果の報告
    ※債権者会議を開催せず、持ち回りで説明等を行うことは妨げられません。

●金融機関等の取り組み

  • 第三者支援専門家の選任について判断
  • 中小企業者が作成する事業再生計画案の進捗状況について、適宜協議・検討
  • 事業再生計画案、第三者支援専門家による調査結果の分析
  • 事業再生計画案への同意の判断
    ※不同意とする場合、その理由の第三者支援専門家への速やかな説明が必要です。
  • ・事業再生計画成立後の定期的なモニタリング

この記事のまとめ

ここまで記載した内容は、あくまで「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」の要点をまとめたものです。実際の利用に関しては、本ガイドラインの本文をご確認ください。

2021年6月に閣議決定された「成長戦略実行計画」をもとに策定されている「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」は、中小企業に特化した内容です。そのため、経営危機を防ぐ視点が盛り込まれている点が特徴です。

また、再生型私的整理手続を利用するためには、第三者支援専門家による支援が必要となっています。中小企業が事業再生に取り掛かる際は、きちんと寄り添ってくれる適切な第三者の事業再生専門家に依頼するようにしましょう。

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