法的整理とは|超過債務を整理して事業再生する方法を解説

2023年09月04日

コロナ禍が長引いた影響によって、事業が赤字に転落したり、債務超過に陥ったりしている企業が増加。今や社会問題となっています。そこで、このように企業が債務超過に陥り早期の黒字転換が難しい場合は、「事業再生」を実施することが必要になってきます。

この事業再生の実施には、経営計画の見直しとともに債務の整理が欠かせません。そこで本記事では、債務の整理を進め事業再生を行うための「法的整理」について紹介していきます。同時に、「法的整理」と「私的整理」との違いや手続きの選択方法などを解説します。

法的整理とは?

法的整理とは、法律の規定に基づいて行われる債務整理のための手続きのことです。この債務整理方法を選択すると、裁判所に対して法的手続きを申請します。そして裁判所の監督のもとで、決められた法律に則って債務者の再建、あるいは清算手続きを進めていきます。

法的整理には再建型と清算型がある

法的整理は大きく2つに分けて、事業を継続しながら会社を再生・再建していく再建型と、会社の事業を停止し、会社を清算していく清算型があります。また再建型で行う法的整理には「民事再生手続」「会社更生手続」の2つがあり、清算型で行う法的整理には「破産手続」「特別清算手続」の2つがあります。

再建型の法的整理の種類

このように法的整理には4つの手続方法がありますが、事業再生を行う再建型の法的整理である民事再生手続きと会社改正手続きには以下のような特徴があります。

民事再生手続

民事再生手続きは、民事再生法に基づいて手続を進めていく、法人・個人どちらでも利用可能な方法です。手続き中でも現経営陣が継続して経営権を持ちながら再生を進められるという特徴があります。手続きにかかる費用は安価であり再生期間も短いスピーディーな再生方法です。

会社更生手続

会社更生手続きは、会社更生法に基づいて手続きを進めていく方法であり、株式会社のみを対象としています。この手続きを選択すると経営陣は退任し、会社の経営権は選任された管財人に移管する必要があります。

会社更生手続は資産、負債、純資産のすべてが対象となり、資産の評価替えや担保が付いている債権も含めたすべての債権の債務整理を行う強力な再生方法です。再生期間は会社更生の開始決定から認可決定まで約1年程度と想定されています。

法的整理で事業再生を行うには

法的整理で事業再生を行う場合には、以下のような手順で債務の削減を図っていきます。

  1. 債務の減額・免除などによって、債権者に大部分の債権放棄してもらいます。
  2. 残った債務については弁済計画(再建計画)を策定します。
  3. 債権者の多数決によって弁済計画に法的効力をもたせます。

法的整理以外の「私的整理」とは?

債務整理には、「法的整理」だけでなく「私的整理」という方法もあります。

私的整理とは、裁判所を介在させずに債務者と債権者の合意のもとで行われる債務整理の手続です。この私的整理の方法にはかつて、法律やルールはありませんでした。しかし2001年9月19日に「私的整理に関するガイドライン」が策定され、私的整理のルールが取りまとめられました。

なお金融機関を対象とする私的整理は、第三者が関与して行われる一定の手続ルールに則った「準則型私的整理」を利用することが多くなっています。この準則型私的整理は、大企業向けには「事業再生ADR」が、中小企業向けには「中小企業再生支援協議会」が利用されています。

私的整理で事業再生を行うには

私的整理で事業再生を行う場合には、以下のような手順で債務の削減を図っていきます。

  1. 主に金融機関となりますが、対象となる債権者を決めて債務整理の協議を行います。
  2. 両者合意のもとで、債務返済条件の変更や金額の圧縮を実施します。

再建型の法的整理と私的整理の主な手続一覧

  • 再建型の債務整理の主な手続きを法的整理と私的整理に分け一覧にまとめて記載しました。法的整理と私的整理の違いの詳細については、次の章で解説します。

法的整理と私的整理の主な手続一覧

法的整理 私的整理
再建型 ・民事再生手続
・会社更生手続
・事業再生ADR
・中小企業再生支援協議会
・特定調停手続
・任意整理(再建型)

法的整理と私的整理の違い

法的整理と私的整理の主な違いとして、法的整理は裁判所が介在する法律で定められた手続であるのに対し、私的整理は裁判所を介在させ債権者と債務者の間の協議をもとに行われるところです。

そのために法的整理では、法律に定められた一定の債権者の同意が得られれば、反対している債権者に対しても債権放棄などができるという強制力があります

その一方、私的整理の債権放棄などは、対象となる債権者全ての同意が必要で、債権放棄などに反対する債権者に対する法的な効力はありません

その違いのポイントを以下に比較表としてまとめています。

法的整理と私的整理の違い

法的整理 私的整理
事業再生の進め方 裁判所による監督によって進める 対象となる主要な債権者との協議によって進める
対象となる
債権者
商取引債権者(買掛金などがある取引先)を含む全債権者 主に金融機関(メインバンクなど)の債権者
債務削減の要件 債権者の多数決により成立 対象となるすべての債権者の個別の同意が必要
債務削減の手法 原則として債権放棄 債権放棄、DES(借入金の一部を株式に切り換える手法)、DDS(既存の借入金を劣後ローンとして借り換える手法)など

法的整理と私的整理、それぞれのメリット・デメリット

法的整理と私的整理の内容の違いによって、それぞれメリット・デメリットが存在します。

法的整理のメリット 多数決で債権者の権利の変更が可能ですので、抜本的に債務超過を解消することができます。
法的整理のデメリット 再生手続きの開始が決定されると官報に公告されます。一般的に持たれている「法的手続き=倒産」というイメージから企業の信用が損なわれやすい面があります。また、取引先(商取引債権者)も債権放棄の対象となるため、取引条件の見直しを求められることもあります。
私的整理のメリット 金融機関を主体とする対象債権者を決めることができ、合意のもとに柔軟な対応ができます。また、取引先は債権者に含まれないため、商取引は通常どおりに継続できることが多くなります。
私的整理のデメリット 対象債権者の全ての合意が必要になります。そこで再建計画に反対者がいると、それ以上進められなくなります。そこで債権者全ての合意を取り付けるために、債権放棄が望ましい場合でも返済条件の変更にとどめるように変更するなど、抜本的な債務削減策をとれないこともあります。

法的整理と私的整理の比較

法的手続 私的手続
抜本的な債務削減ができるか
対象の債権者すべての合意がなくても進められるか ×
再建計画に反対する債権者がいても法的拘束力があるか ×
債権者に応じて柔軟な対応ができるか ×
対外的に信用やブランドイメージが保たれるか
商取引をそれまでどおり継続することができるか
手続や進め方は柔軟にできるか ×

法的整理か私的整理かはどう判断する?

現在、最初に選ぶ事業再生手段は私的整理というのがスタンダードになっています。

買掛がある取引先などへの影響を少なくしたい場合には、特に私的整理を選択しますが、法的整理と私的整理のどちらを選ぶか迷ったときには、以下のような指標から考えてみましょう。

①債権カットの対象は金融機関のみでよいかどうか
私的整理は、債務額が小さく債権者数が少ない場合に特に有効です。超過債務額が大きく、金融機関への支払いを止めても資金ショートする場合には、すべての債権者を対象にしなければならないために法的整理を選択したほうがよいでしょう。

②対象となる金融機関と交渉が可能か
メインバンクによる支援が期待できる場合は、私的整理が進めやすくなります。ただし現経営者の不正行為が発覚したり、金融機関との関係が悪化したりしており、金融機関との交渉が難しい場合には法的整理を選ぶことになります。

法的整理フローチャート

民事再生か会社更生かはどう判断する?

事業再生に法的整理を選んだ場合には、民事再生と会社更生という選択肢があります。

ただし、選んだ再生方法によってそれぞれ管轄する法律が違い、適用される条件も異なってきます。そこでどちらを選んだほうがいいのかの指標を以下に記載します。

①債務者が株式会社か
会社更生は、会社更生法の規定により株式会社のみが対象です。それ以外の個人・法人は民事再生を選ぶこととなります。現在では一般的に、大企業でない限り、再生期間が短く、かかる費用も安価な民事再生を選ぶことが多くなっています。

②経営陣による経営を維持するか
会社更生では、現経営陣は退任し選任された管財人によって後の事業を行うことになります。現経営陣のもとで経営を続行したい場合には民事再生を選ぶ必要があります。ただし、現経営陣に不正行為などの経営責任があり債権者の反対がある場合には、民事再生をすすめることは難しくなります。

③担保権の実行の回避ができるか
担保権を保有する債権者は、担保物件から優先して債権回収を行うことができます。そこで、担保物件が工場など事業継続に不可欠なものである場合には、担保権を実行されないように対策する必要があります。その対策として、民事再生手続には「担保権実行手続の中止命令」や「担保権消滅請求」といった制度が存在しています。もし担保権の実行が避けられない場合であれば、「更生手続き開始後は担保権の実行が禁止される」ことが規定されている会社更生を選ぶ必要があります。

事業再生の検討は専門家に相談を

会社が債務超過に陥ったとしても事業再生をするためにはさまざまな手段があります。その中でどの手段を選択するかによって適用される法律も変わるほか、手続も複雑となってきます。そこで事業再生を検討する場合には、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

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