2024年07月24日
脱炭素化やデジタル化の影響などで、企業倒産が増えている昨今。今後予想される各種金利の上昇で資金繰りが悪化する企業は、さらに増える懸念があります。経営難に陥ると、経営者はさまざまな手段を検討することになります。借入金返済が難しくなったとき、ハイリスクな借入先に手を出し、状況を悪化させるケースもよくみられます。
負債を減らし、再生への道を探るための情報は、常にアップデートしておくと安心です。今回は経済産業省で検討されている「経営が難しくなった企業の債務を、債権者の多数決で減免する新しい私的整理制度」について、周辺情報とあわせてご紹介します。
目次
企業倒産のリスクと恐怖
企業が借金を返済できず資金繰りが厳しくなると、経営者はファクタリングや闇金融など、リスクの高い借入先に手を出すことがあります。そうなると返済の負担が増え、破産に至ることも珍しくありません。破産後も借金が返済できず、経営者自身は精神的に追い詰められます。
こうした状況下では自死など、残念ながら最悪のケースにいたる場合もあります。このような事態を避けるために、早めの対策が求められます。経営者だけでなく、経営者を支える皆さんもぜひ心に留めて、こうした事態を未然に防ぐようにしましょう。
倒産を回避する「私的整理」の検討を
企業の倒産を防ぐには、早めに私的整理を考えることが重要です。私的整理は資金繰りが立ち行かなくなった企業が、民事再生や破産など「倒産」に至らないよう債務整理して、経営を立て直すための制度です。
私的整理をするにあたって企業は、事業を立て直すための計画を提示し、すべての債権者に同意してもらう必要があります。そのうえで借金の減額やリスケジュールを実施して資金繰りを返済可能なものにし、企業を正常な状態に戻す努力をします。
経営者がリスクを感じたらまずは専門家に相談し、私的整理を検討することで、倒産を避ける手立てを探しましょう。私的整理については、こちらの記事にもくわしく記載しています。
私的整理のハードルを高くする「すべての債権者の同意」
前述のとおり、私的整理を行うには全ての債権者の同意が必要です。ハードルは非常に高いといえるでしょう。手続きも煩雑で、実行が難しいケースが多くみられました。そのため、再生の可能性があっても時間がかかってしまうことが課題でした。
債権者の多数決導入へ
こうした状況を改善すべく、2024年7月現在、経済産業省では債権者の多数決による新しい私的整理の制度を検討しています。多数決で事業を再構築する計画を早め、裁判所の認可を得て、計画を進める仕組みを想定しています。
事業再生は、弁護士や公認会計士などの専門家による第三者機関が手続きを監視します。裁判所の認可に異議申し立てすることも可能になります。人手不足による中小企業の経営環境の厳しさが増すなか、生産性向上のための迅速な事業再生を推し進めるのが狙いです。
経営者保証で破綻しても最低限の資産は守られる
法制度の整備により経営者保証が整えられた現在では、会社が倒産しても、経営者が個人の財産をすべて失うリスクが軽減されています。経営者が私有する最低限の財産や不動産は、法的に残されます。倒産したからといって、身ぐるみはがされることはなくなりました。
こうした保証も、経営者にとっては安心材料といえるでしょう。経営者保証の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
専門家に相談し、会社を立て直そう
たとえ会社が倒産しても、経営者保証などにより経営者自身が受けるダメージは軽減しています。やる気さえあれば、再起のチャンスも残されているといえるでしょう。資金繰りに困ったときは決して、闇金融やファクタリングに手を出してはいけません。専門家に相談し、会社を立て直しましょう。
仮に経営が行き詰ったとしても、従業員の雇用は最低限、守る必要があります。プロのアドバイスを受けることで、適切な再建策を模索できるようになります。
売上が半減したときは、早めに私的整理を考えよう
売上が半減したときは、私的整理を検討する目安です。私的整理は前向きな選択であり、借入金の返済負担を軽減し、事業再生への活路を見いだせます。
専門家に相談すれば、会社の財務状況を見て、今後、借入金の返済が可能か判断し、適切なアドバイスを受けられます。銀行にリスケや債務減免の申し出をするのも、専門家のアドバイスのもと行へばスムーズです。
すべての企業が、再生への道を選択できるように
企業の経営者にとって、借入金の返済は大きな負担になります。 経済産業省が検討している「私的整理」の債権者多数決への緩和が実現すれば、企業再生の道が広がり、借入金の減額を目指す経営者にとって大きな希望となるでしょう。
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