2021年01月06日
目次
リストラクチャリングとは
30年ほど前から「リストラクチャリング」という言葉を耳にするようになってきました。バブル経済がはじけた当時、多くの企業が過剰人員や設備を抱えていました。
まず行われたのが、リストラクチャリングの名のもとで徹底した人員整理、すなわち「首切り」です。
そのため、中高年のサラリーマンの人たちは、リストラクチャリングという言葉に戦々恐々としていたものです。
その後、リストラクチャリングは、「リストラ」と名を変え、長い間、人件費カットのため行われていきました。最近は少子高齢化による人手不足から、以前よりも少なくなっていましたが、今回の新型コロナウイルス感染症による急激な景気の悪化から、リストラによる人員整理がまた増えてきたように思われます。
本来、リストラクチャリングとは、事業の再構築とか事業構造の再構築といった意味です。大企業や中小企業の経営者が、 経営不振から赤字経営に陥ったり、倒産の危機に直面したときに、既存の事業を見直したり新規事業展開するなどして、 企業を再生させ、新たな成長軌道に乗せるための変革です。広い意味では、リストラという人員整理もリストラクチャリングといえますが、あくまでもリストラクチャリングの一つにすぎません。
そこで、本来のリストラクチャリングの意味や内容を、リストラとの違いや密接な関係にある企業再生・事業再生、さらにM&Aも含め詳しく解説していきます。
前述のようにリストラクチャリングとは、経営不振に陥った企業が、その原因を究明し、余剰人員や設備があれば資産整理し、また新たに資金を投入することで、新規の事業分野に進出するなど企業や事業を再生させ、新たな成長軌道に乗せるための一連の変革プロセスです。
経営不振の原因が、特定の事業であるならば、その事業を処分します。その際に有効なものが「事業譲渡」や「会社分割」といったM&Aです。また、高コスト体質が原因なら、原材料の見直し、人件費カットなどを行うわけです。こうして 事業の選択と集中化、コストカットによる企業のスリム化により、企業再生・事業再生をはかります。
ここまでがリストラクチャリングの最初のプロセスであるならば、新たな成長軌道に持っていくことが、リストラクチャリングの次のプロセスではないかと思います。
企業やメインの事業が再生されたら、対外的な評価も変わってきます。取引先の金融機関もリスケジュール(リスケ)から、新たな融資に応じてくれるかもしれません。また、今まで取引を控えていた仕入先の企業も取引を増やしてくれるかもしれません。さらに、再生して新たな事業を始めるなら、ファンドからの出資も可能になるかもしれません。
こうして新たな事業展開を行い、企業価値を高めていくのです。これが本来のリストラクチャリングです。
ところが、バブル崩壊後のわが国では、本来リストラクチャリングの一つであるはずの人員整理を最初に、しかも大規模に実行してしまったのです。確かに、コストの中でも最大の固定費が人件費ですから、ここをカットするのも無理のないことではあります。ただ、リストラクチャリングを、その後にリストラと名を変えてまで行ってきたのには、やはり明確に人員整理や解雇という「首切り」に直結する名称にするよりも、ネガティブなイメージを緩和できると思ったのかもしれません。
いずれにしても、人員整理や解雇がリストラクチャリングからリストラという言葉に変わることで、本来ポジティブなリストラクチャリングが、ネガティブなイメージを持つことになってしまったのは残念です。
では、リストラクチャリングがどのようなものなのか、その具体的な手段にについて見ていきましょう。
リストラクチャリングの具体的な手段
本来の意味のリストラクチャリングは、大きく3つに手段に分けられます。
財務リストラクチャリング(ファイナンシャルリストラクチャリング)
リストラクチャリングは、収益性のあるコアビジネスとそれ以外のビジネスに分けたり、人材や機械設備など経営資源を見直すことも大切ですが、何といっても財務、つまりキャッシュフローの見直しをすることが重要です。そういう意味でいえば、 財務リストラクチャリングはリストラクチャリングの肝といえるでしょう。
他の分野のリストラクチャリングは、自社の事情に明るい経営者や各々の担当スタッフでもできますが、財務リストラクチャリングについては、高度な財務・会計についての知識・ノウハウが要求されるため、必然的に外部専門家である公認会計士・税理士・中小企業診断士、財務コンサルタントなどに依頼することになります。
財務リストラクチャリングを一言でいうならば、貸借対照表(B/S)上の数字を改善し、少しでも多くキャッシュフロー化することです。貸借対照表は、借方に資産(アセット)、貸方に負債(デット)、純資産(エクイティ)がありますが、それぞれの数値を見直すことです。
資産(アセット)リストラクチャリング
資産(アセット)でのリストラクチャリングとしては、長期保有している有価証券などを売却して流動性の高い現金に振り替える、遊休不動産や工場・設備を、M&Aにより事業譲渡し売却代金を取得することで、キャッシュフロー化します。
負債(デット)リストラクチャリング
負債(デット)リストラクチャリングでは、「債権放棄」、「リスケ」、「DES(デット・エクイティ・スワップ)」、「DDS(デット・デット・スワップ)」などを利用して債務を削減し、現金の支出を減らすことでキャッシュフローを改善します。
DESとは、会社の債権者がその債権を当該会社の株式に振り替えることです。これにより会社は有利子負債がなくなるため、支出が少なくなるとともに、自己資本が増加します。また、DDSとは、既存の債権を「劣後ローン」など別の内容の債権に変更することで、支払いが先延ばしになり、間接的にキャッシュフローを改善するものです。
増資(エクイティ)リストラクチャリング
純資産の部の資本を増強することでキャッシュフローを改善します。具体的には、DESにより負債を資本金に振り替えたり、外部スポンサーからの増資などがあります。
事業リストラクチャリング
事業リストラクチャリングとは、複数の事業を行っている企業が、全社レベルで各々の事業を見直すことです。PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)などの手法で、自社の事業を収益性のあるコア事業とそれ以外に分け、収益性のない事業は廃止したり、M&Aにより事業譲渡する事業の選択と集中化を図るものです。
業務リストラクチャリング
業務リストラクチャリングとは、事業内容を改善し、売上や利益を増加させることです。具体的には、損益計算書(P/L)の中の売上・原価・販管費・営業利益の数字の改善です。効果的なマーケティングにより売上を増やし、仕入先との交渉や仕入ルートの変更などにより仕入コストを削減し、売上・総利益を上げます。次に販管費の見直しです。ここで人件費の見直しが出てくるわけです。正社員が多く固定費がかかる場合に、リストラが行われるのです。
このように、リストラは業務リストラクチャリングの一項目にすぎないのです。それなのにまずリストラありきでおこなってしまうと、企業や事業の再生後、本格的な成長モードに移る際に大きな障害となってしまいます。
財務リストラクチャリング (ファイナンシャルリストラクチャリング) |
資産、負債、純資産のおそれぞれの数値を見直す。 資産(アセット)リストラクチャリング、負債(デット)リストラクチャリング、増資(エクイティ)リストラクチャリングのことが含まれている。 |
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事業リストラクチャリング | PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)の手法で事業の廃止や譲渡など考えること。 |
業務リストラクチャリング | 事業内容を改善し、売上や利益を増加させること。 「リストラ」はリトラクチャリングの一項目にすぎない。 |
事業再生をするためにはリストラクチャリングが外せない
そもそもリストラクチャリングとは、全社レベルでの事業構造の再構築という意味ですから、事業再生と密接不可分な関係です。
単独の事業を行っている企業ならば、その事業の業務リストラクチャリングにより、売上・コスト・利益の見直しをすることになります。また、複数の事業を営んでいる場合には、事業リストラクチャリングにより、収益の見込める事業をコアビジネスとし、収益性のない事業は廃止、分社化による切り離し、あるいは M&Aにより譲渡し、その譲渡代金をコアビジネスに投入するといった資産整理や事業の選択と集中による再生になくてはならない手段です。
リストラクチャリングから見るM&Aのメリットと効果
ある程度の規模の企業では、通常複数の事業を展開しています。ただ、すべての事業がうまくいくといったことは稀で、成長性や収益性の見込める事業もあれば、他の事業の足を引っ張るだけの事業もあります。
リストラクチャリングは、全社レベルでの事業構造の再構築をするものですから、将来性のない事業は処分しなくてはなりません。仮に廃業するにしても廃業コストがかかってしまいます。しかし、自社にとってお荷物の事業でも、他の企業にとってはノドから手が出るほど欲しいものもあるのです。このような場合、M&Aによる「事業譲渡」や「会社分割」で譲渡することにより、かなりの額の売却代金を手にすることができます。その結果、キャッシュフローが大幅に改善するばかりでなく、成長性や収益性の見込める事業に投資することも可能です。
このようにM&Aは、リストラクチャリングにおける事業再生プロセスにおいても、新規事業展開といった発展プロセスにおいても有効な手段です。
リストラクチャリングを行うには判断が難しい
リストラクチャリングには、財務・事業・業務に関するものがありますが、特に財務リストラクチャリングなどでは、高度な専門知識やノウハウが必要なため、経営者が単独で判断するのは難しいでしょう。
このような時に頼もしい支援先となるのが、「みそうパートナーズ」、「山田コンサルティンググループ」、「フロンティアマネジメント」などの専門コンサル会社です。中でもみそうパートナーズは、公認会計士をはじめ、財務に強いコンサルタントが多数所属しているので、安心して支援が受けられます。
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