【コロナ融資特集】返せなくなったときの法的手続きを解説〈特定調停・破産・再生〉(後編)

2022年02月26日

【コロナ融資特集】返せなくなったときの法的手続きを解説〈特定調停・破産・再生〉(後編)

再生手続【コロナ融資特集】返せなくなったときの法的手続きを解説〈特定調停・破産・再生〉(前編)では、新型コロナウイルス関連倒産が増加しており、そのうち中小企業の倒産が6割近くに上っていること。企業が倒産するときに取る法的整理には「特定調停手続」「破産手続」「再生手続」という3つの方法があることなどをご紹介しました。

本記事では再生手続きや私的整理について詳しく解説していきます。

再生手続とは

再生手続とは

再建型倒産手続き再生手続きとは、経営者を変えずに会社の再生を目指していく方法です。借金などの債務の返済が増えて経営難に陥った会社が、裁判所に申し立てを行い、借金などの債務の借金返済条件を見直して経営再建していく「再建型倒産手続き」であり、民事再生とも呼ばれます。

再建型倒産手続きのことは、Debtor in Possession(占有を継続する債務者)を略してDIP型倒産手続きと呼ぶこともあります。

この再生手続きを取ることで、企業の経営権や財産の管理権や処分権はそのままです。そのため営業の継続が可能であるだけでなく、財産も自らで管理でき、資産などの売却なども自由に行うことができます

ただ、財産の処分は完全に自由なわけではありません。債権者に対して公平で誠実であることが前提です。そこで、特定の債権者に対して無償で譲ることや不当に安く売却することはできません。

再生手続きを監督する監督委員が裁判所から選任されることもあり、その監督委員の同意が必要になる行為もあります。

対象となる企業は

再生手続きの対象となるのは法人全般です。株式会社、合同会社、合名会社、合資会社、社団法人、財団法人、NPO法人など、法人であれば制限はありません。

再生手続の流れ

申し立て債務者はまず、裁判所に再生手続きの申し立てを行います。その際、民事再生や保全処分の申立書、添付書など必要な書類を提出して予納金(手続きのための費用)を納めます。

申し立てが受理されると裁判所から保全処分が下されます。同時に事業再生を監督する監督委員(関係がない弁護士が務めることが多い)が選出され、監督委員の監督下で再生を進めていきます。

続いて債権者を集め、民事再生申し立てに至った経緯や財務状況、再建計画などについて説明する集会(債権者集会)を開きます。

この債権者集会で債権者から反対がなければ民事再生手続きが開始されます。裁判所から債権者へ再生手続開始通知書や債権届出の用紙が送付され、債権者は裁判所に債権届出手続きを行います。

通常、民事再生手続きの申し立てから1~2週間程度で債権手続きが開始されます。

開始が決定されるとどうなるか?

再生計画案再生手続きが開始された場合には、貸借対照表や会社が保有している財産の評価額を記した財産目録、民事再生に至るまでの経緯や会社の経営状況を記した報告書と再生計画案を作成して裁判所に提出します。

再生計画案には、「債権者に債務をどのように免除・猶予してもらうのか」「債務を今後どのように返済していくか」といった内容を記します。

その後には再度、債権者集会が開催されます。ここで2分の1以上の債権者が合意すれば再生計画案が可決され、裁判所から認可が下ります。そして、再生計画案にもとづいて再生を実行していきます。

債権者集会(再生計画の決議)とは

再生計画を実行していくためには裁判所の認可だけでなく、債権者の同意が必要になります。債権者を集めて民事再生申し立てに至った経緯や財務状況、再建計画などについて説明する集会を開く必要がありますが、そのことを債権者集会と呼んでいます。

債権者集会では再生計画の決議により債権者の同意を得ますが、その同意は以下の2つの条件を満たしている必要が生じます。

  • 議決権総額の2分の1以上の同意
  • 出席した議決権者の過半数の同意

再生債権とは?

再生手続きの対象となる債権は「再生手続開始前の原因に基づき生じた財産上の請求権」であり、再生債権と呼ばれます。

再生手続きを開始する前に借り入れたローンや、手続き開始前に分割で購入した商品の代金などは再生債権というわけです。

裁判所が決めた債権届出期間までに、自らの債権の内容を裁判所に届け出ることにより、その債務者の再生手続きに参加できるようになります。

再生計画の認可を受けると

債権者集会で決議された再生計画は裁判所が認可決定をしていきます。この認可決定がなされたことにより裁判所によるお墨付きを得たことになりますので、再生計画が効力を得るようになります。

コロナによる経営不振で返済不能になったときは私的整理も検討を

企業が経営不振により借金の返済が不能となったときには、法的再生だけでなく私的再生の検討も行いましょう。

私的再生では裁判所が介入せずに、債務者が債権者全員に返済方法や返済条件などの変更に応じてもらえるよう交渉します。合意が得られたら新しい返済計画に基づいて債務を履行しつつ、事業の立て直しを図っていきます。

再生方法としてメリットも多い私的再生については以下の記事で詳しく紹介しています。

リスケ、DDS(デット・デッド・スワップ)、債務放棄とは

破産私的再生方法の一つとして、リスケ、DDS(デット・デッド・スワップ)、債務放棄があります。

リスケとは「リスケジューリング」の略であり、返済プラン調整を意味します。借金の返済期間を長くして、1回あたりの支払い額を低くしたり、資金繰りが苦しい最初の数年間だけ返済学を減額したりして事業を再生していきます。

「Debt Debt Swap」の略であるDDSとは債務(Debt)を別の債務(Debt)に転換交換(Swap)することを意味し、返済の優先順位が低い債権に借り換えして返済を猶予してもらうことを言います。債権の優先順位を低くしてもらえれば、それ以外の債務から優先して処理できます。そして財政再建ができてからDDSを行った債務の返済を行っていくという事業の再生方法です。

債務の一部を免除してもらうことは債権放棄と呼びます。債権放棄をすることで借金の元本そのものが減るというメリットがありますが、債権を保有している銀行は損をするだけですので、銀行側は難色を示すことが多くあります。

しかし、過剰債務に陥ったゴルフ場が債務放棄により事業再生成功した事例もあります。以下の記事を参考にしてみてください。

コロナ対策の劣後ローンを利用する

劣後ローンDDSは一般的な債権よりも返済の優先順位が低い融資のことであり、劣後ローンとも言われます。

この劣後ローンを新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた法人または個人企業を対象に行っています。これは「新型コロナ対策資本性劣後ローン」と呼ばれており、日本政策金融公庫や商工中金などが、中小企業者・小規模事業者向けに行っています。

通常、日本政策金融公庫が行っている融資制度では、担保を求められるほか厳しい審査も行われます。しかし新型コロナ対策資本性劣後ローンは、コロナ禍から倒産を救うセーフティネットとしての立場から無担保融資が適用されています。

大手外食企業であるワタミ株式会社でも、新型コロナ対策資本性劣後ローンを利用して30億円を調達し、経営の苦境を乗り切っています。

ワタミが調達した劣後ローンの詳細は以下の記事をご覧ください。

事業再生ADRを利用する

当事者間の話し合い法的手続きを取って再生の道を選んでしまうと企業の信頼性が落ちてしまい、逆に倒産リスクが高まってしまう懸念もあります。

法的再生手続に移行する危険がある企業には金融機関も融資に応じてくれません。また、法的再生手続を利用してしまうと、取引先への支払を止めなければならなくなります。このように取引先へ迷惑をかけてしまうと、ビジネスの再起も図れなくなります。

そこで法的再生手続きは避けたい場合には事業再生ADR(Alternative Dispute Resolution:裁判外紛争解決手続)を利用する手もあります。事業再生ADRとは、当事者間の話し合いだけで紛争を解決していく新たな私的再生の手続方法のことです。

事業再生ADRは厳密には法的整理になるのですが、私的整理と同じように事業を続けながら金融機関との話し合いで事業再生のための解決策を探っていくことができます。

事業再生ADRの詳細については、以下の記事を参考にしてみてください。

事業再生ADRを利用して、事業の再生に成功した事例は以下をご覧ください。

政府も様々な手厚い支援策で対応しているが…事業再生は専門家に相談を

経済産業省では「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」と題した「資金繰り」「設備投資・販路開拓」「経営環境の整備」に関するパンフレットを作成しています。新型コロナウイルス感染拡大に影響を受けている企業は参考にしてみてください。

このように政府では様々なコロナ支援策を行っているものの、非常に複雑で、自分の会社にはどの方法が適しているのか、すぐには理解することは難しいことがあります。

今、再生手続を検討されているのでしたら、会社が倒産せざるを得なくなる前に適切な方法をアドバイスしてくれる事業再生の専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

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