事業再生ADRとは?法的整理・他の私的整理との違いや背景についても解説

事業再生ADRができた背景

裁判所による強制力を持った紛争解決である訴訟や法的倒産手続ではなく、当事者間の話し合いだけで紛争を解決していく新たな私的再生の手続方法として、2007年に事業再生ADR(Alternative Dispute Resolution:裁判外紛争解決手続)が制定されました。

従来型の債務整理の問題点

従来型の債務整理方法である法的再生手続では、当事者間の話し合いだけでは金融機関から支援は受けにくいものでした。

また、つなぎ融資をしようとしても、法的再生手続に移行する危険がある企業には金融機関もなかなか融資に応じてくれません
そうなると法的再生手続を利用するしかなくなりますが、法的再生手続を利用してしまうと取引先への支払も止めなければならなくなってしまいます。

しかし、取引先へ迷惑をかけた後はビジネスの再起を図れなくなってしまいます。

過剰債務を抱えた企業の悩みを解決

そこで、過剰債務を抱えた企業の悩みを解決するために事業再生ADRが生まれました。

事業再生ADR手続きに入ると、事業継続に不可欠なつなぎ融資を優先的に取扱う道が開かれるので、金融機関も資金を提供しやすくなります。

また、事業再生ADRでは債務者の財産状態や再建計画案は中立的な専門家がチェックすることとなっています。
そのため、メインバンク以外の金融機関にも交渉を応じてもらえるようになります。

事業をスムーズに続けられる

事業再生ADRのメリットは、法的整理でありながら私的整理と同じように、事業をスムーズに続けながら、金融機関との話し合いで事業再生のための解決策を探っていけることになります。

もし万が一、金融機関側との意見がまとまらない場合には、事業再生ADRの結果を尊重してもらいながら裁判所を利用した法的再生手続に移行していくこともできます。

Q&A

事業再生ADRについて、よく聞かれる質問とその回答をご紹介します。

Q1. 東京に行かないと手続きはできませんか?

事業再生ADRについて、よく聞かれる質問とその回答をご紹介します。

事業再生ADRは全国すべての企業を対象にしているため、事業再生会社は全国各地でオフィスを展開しており、事業再生ADRを依頼する企業への地元へも出向いてくれます。
そのため、関係者との打合せ場所や債権者会議などの場所は、その企業の状況などに応じて、東京に限定することなく、ケースバイケースで場所を決定することになります。

Q2. 手続きに必要な書類を教えてください

事業再生ADR手続きを行う際は、事業再生会社に問い合わせをして説明を受けた後に手続利用申請書を作成します。
手続利用申請書提出時には、同時に以下の書類の提出が必要となります。

  • 会社案内
  • 会社定款
  • 直近3事業年度分の(決算書・勘定明細を含んだ法人税確定申告書
    ※子会社・関連会社がある場合には、子会社・関連会社の直近事業年度の法人税確定申告書も必要
    ※代表者が保証債務を負担している場合には、代表者個人の直近確定申告書も必要
  • 会社の借入金明細
  • 直近事業年度分の固定資産明細
  • 担保一覧表
  • 商業登記簿謄本
  • 代理人が申請する場合には委任状

Q3. 手続きにはいくらくらいかかりますか?

手続には、審査料、業務委託金、業務委託中間金、報酬金」の4つが必要です。
まず審査申請を行う際に、一律50万円(消費税別)の審査料が必要となります。
それ以外の費用は、手続が進んでいくときに段階的に必要になってきます。
その金額は債権者数と債務額に応じて設定されます。

資産査定や事業再生計画案を作成するときに、弁護士や公認会計士、ファイナンシャルプランナー、税理士などを利用した場合には、手続き費用には含まれません。

Q4. 手続きにはどのくらい時間がかかりますか?

事業再生ADRは、事業再生の話し合いの相手方である金融機関に対して、「一時停止の通知」を発送することからスタートします。
その「一時停止の通知」を発送してから事業再生計画が決議されるまでの時間は、3ヵ月程度を目安としてください。

事業再生会社では、手続を受理する前の事前審査で事業再生ADRが成立するかどうかの見込みを判断します。
その際、資産査定や事業再生計画案の概要の策定などの準備を十分に行ってもらうことで、その手続き時間を短くすることも可能です。
ただし、準備が十分でなければ、事前審査に要する時間も延びることになります。

Q5. 手続きするために専門家に依頼が必要ですか?

債務者である企業が事業再生ADRの手続を進めるにあたり、自らが資産査定や事業再生計画の作成を行う必要があります。
したがって資産査定や事業再生計画の作成に自信がないようであれば、資産査定や事業再生計画の策定を債務者(企業)の立場に立ってしてくれる、事業再生会社などの専門家に依頼いただくことが必要となります。

Q6. 手続実施者とはどのような人ですか?

事業再生ADRにおける手続実施者とは、手続を進めていくにあたり、債務者である企業と債権者である金融機関との間の和解の仲介を実施していきます。

事業再生会社では手続実施者の候補リストを作成しており、その候補リストの中から債務者や債権者との利害関係がなく、公正かつ中立に職務を遂行できるプロを手続実施者の予定者として選任し、債権者会議に手続実施者として正式に選任してもらうようはかっていきます。

なお手続実施者は、経済産業省令に基づいて以下のような事業再生の専門家が候補となります。

  • 私的整理ガイドライン専門家アドバイザー経験を持っている弁護士・公認会計士
  • 会社更生の管財人や民事再生の監督委員・管財人を務めた経験を持っている弁護士
  • 中小企業再生支援協議会でプロジェクトマネージャーとして活躍していたアドバイザー
  • 産業再生機構でマネージングディレクターとして活躍していたアドバイザー

Q7. 事業再生ADRで税負担が重くなることはありますか?

事業再生ADRでも、民事再生のような法的整理に準じた税務上の取扱いが認められています。

2008年3月28日付けの国税庁課税部長名義の回答である「取引等に係る税務上の取扱い等に関する照会」では、事業再生ADRを利用して成立した事業再生計画案は、債務者である企業で民事再生に準じるものとして、「資産の評価損を損金算入できる」「期限切れの青色欠損金を優先して損金算入できる」ということが確認されています。 また、債権者である金融機関では、「債権放棄等による損失を損金算入できる」となっています。

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