【必見!】自己破産した経営者が資産を残す方法

2023年02月20日

【必見!】自己破産した経営者が資産を残す方法

会社が倒産したら経営者の個人資産はどうなるのでしょうか。「経営者の個人資産を守るためにはどうすればいいのか?」「できるだけ多くの資産を残すためには?」など、自己破産した経営者が資産を残すノウハウを本記事で解説します。

会社が破産しても経営者の資産は最低限守られる

かつて中小企業が金融機関から融資を受ける場合、経営者も連帯保証人となる個人保証を付けなければいけない場面が多くありました。それは、その会社が負債を追ったときには経営者の資産も差し押さえられ、個人破産してしまうことを意味していました。

それに伴い経営者が個人破産になることを恐れて、事業承継や事業再生、事業清算などが必要な場面や思い切った事業展開が必要な場面でも融資に踏み切れずに結局は廃業に追い込まれることがありました。

しかし中小企業が相次いで廃業となることは日本の社会全体にとっても大きな損失となります。そこで2013年12月に、日本商工会議所と全国銀行協会が一体となり、中小企業への融資の条件として経営者保証を求める際の適切な行動指針「経営者保証ガイドライン(経営者保証に関するガイドライン)」が定められたのです。

経営者保証ガイドラインを利用して融資を受け、債務整理となった場合、経営者の個人財産のうち、以下にある一定の財産を残せるようになりました。

経営者が残せる資産

自由財産 99万円以下の現金
破産手続開始後に取得した資産
生計費 1ヶ月あたり33万円 ✕ 月数*
*雇用保険の給付期間を目安に算出。90日から最大330日分(年齢によって異なる)に相当する預貯金など
華美でない自宅の不動産

自宅の不動産が「華美か華美でないか」の定義はあいまいなので、確実に自宅不動産が残せるかどうかはわかりません。また、自宅不動産に住宅ローンが残っている場合、その家には抵当権が設定されていますので、債権者から競売にかけられることになります。

会社が破産したら経営者も破産?

必ずしも「会社の破産=経営者個人の破産」というわけではありません。しかし一般的に、中小企業の経営者は連帯保証人となる個人保証を会社の借入債務やリース債務に対しても行っています。さらに、経営者個人がカードローンなどで借入れた資金を会社の運転資金として入れていることもあります。

通常、法人と経営者は別人格ですので、会社が債務を負ったからといって経営者には返済義務はありません。ただ、会社の債務に連帯保証として個人保証を付けていたり、個人で借り入れた資金を会社に入金していたりするとなると別です。

こういった場合には会社が破産申し立てをするのと同時に、経営者個人でも自己破産の申し立てをすることになります。

法人破産と個人破産

法人破産も経営者の個人破産も、破産の内容に関してはほぼ同じだと考えるかもしれません。しかしその破産内容は大きく異なります。

法人破産は破産手続きとともに債務は100%免責(債務放棄を許可してもらうこと)となるのに対し、個人破産は免責許可の手続きが必要なので債務が100%免責になるとは限らないことです。

法人破産をすると法人自体が消滅します。そうすると法人の負債も同時に消滅するため、法人破産すれば100%免責されるのです。ただし個人破産では、法人破産のように個人は消滅しません。そのため負債は継続されるので、免責されるかどうかの審査が発生します。

その審査では、借金を抱えた理由が浪費やギャンブルといった無計画なお金の使い方ではないかどうかが調べられます。ただ、やむにやまれずに自己破産となったり、将来的に同じような借金を重ねない再生プランを提出できたりすれば免責審査は通ります。

財産や税金の取り扱いも法人と個人とでは異なります。法人が破産をすると、その法人の財産は100%消滅します。しかし個人の場合には破産したとしてもその後の生活がありますので、生活を続けられる最低限度の一定財産の保有は認められています。

税金についても、法人が破産をするとその法人の税金は100%消滅します。法人が消滅することで、その法人にかかっている税金も消滅するからです。

ただ、個人破産の場合には、個人への税金は免責を認められても支払い義務が残る「非免責債権」です。税金は破産をしても払い続けなければなりません。具体的には以下の項目が非免責債権となります。

  • 税金
  • 国民健康保険料
  • 社会保険料
  • 国民年金保険料(厚生年金保険料)
  • 下水道料金
法人破産 個人破産
免責 破産手続きとともに100%免責 100%免責にはならない。免責許可手続きが必要
財産 100%消滅 一定の財産保有が認められる
税金 100%消滅 税金は残る

差押禁止財産は残せる

前項では法人が破産した場合には財産の100%は消滅しますが、個人が破産した場合には一定財産の保有は認められると記載しました。

この一定財産とは債権者に裁判を起こされても差し押さえができない「差押禁止財産」と呼ばれ、個人破産となっても残すことができる財産です。

差押禁止財産は、「差押禁止債権」と「差押禁止動産」の2つに分けられます。差押禁止債権には、公的年金や給与の3/4の給与(手取り給与が44万円を超える時は33万円を超える部分全てが差し押さえられる)、ボーナス、退職金、iDeCo(個人型確定拠出年金)などが含まれます。差押禁止動産には、生活に欠かせない衣服、家具、寝具、台所用品や一定量の食料品、仕事をする上で必要な器具などが含まれます。

差押禁止債権 公的年金や一定額の給与、ボーナス、退職金など
差押禁止動産 生活に欠かせない衣服、家具、寝具、台所用品や一定量の食料品、仕事をする上で必要な器具など

年金は自己破産しても受給できる

個人破産をしても、年金は受給できます。年金が支払われると同時に差し押さえられてしまうことはありません。

年金の種類

公的年金 私的年金
企業年金 個人年金
国民年金 退職年金
確定給付企業年金
確定拠出年金
厚生年金基金
中小企業退職金共済制度
民間の個人年金保険による年金
確定年金
終身年金 など
厚生年金
差押不可 差押不可 差押の対象

公的年金、企業年金は差し押えられない

国民年金や厚生年金のような公的年金は差押禁止債権となっており、受給することができます公的年金に上乗せして給付される企業年金についても、差押禁止債権となっています。

また、年金を受給中に個人破産したとしても引き続き受給していくことはできます。しかし年金は非免責債権ですので、年金の支払い期間に個人破産をしたとしても支払いを続ける必要はあります。

個人年金は対象

公的年金、企業年金は差押禁止債権ですが、民間の保険会社が運営している個人年金保険による年金や確定年金、終身年金など、個人年金は差し押さえの対象となります。

そのために個人年金の解約返戻金の見込額が20万円を超えると換価処分の対象となり、差押債権となります。ただし、他の積立型の保険などの解約返戻金と合わせた解約返戻金が20万円以下の場合、解約をしなくても良い可能性があります。

注意!もらった年金を貯金すると換価処分に

公的年金や企業年金の受給は差し押さえられませんが、いったん受け取った後の年金は現金や預金として扱われるようになります。その金額が以下を超えていれば、換価処分の対象となってしまいます。

  • 99万円以上の現金
  • 20万円以上の預金

iDeCo

iDeCo(イデコ)と呼ばれている個人型確定拠出年金も差押禁止財産と規定されており、個人破産をしても差し押さえがされないものです。iDeCoは保険会社や証券会社などが加入者を集めているので個人年金と同様の扱いだとだと考えるかもしれません。しかしiDeCoは厚生労働省が所管の国民年金基金連合会が運営している公的な年金となっています。

iDeCoのメリット

iDeCoのメリットは差押禁止債権ということだけではありません。掛金は全額、所得控除されるほか、利息や運用益は非課税となっているなど、税制上のメリットもたくさんあります。破産を前提としなくても経営者の加入はおすすめです。

iDeCoのデメリット

iDeCoは加入者が死亡したり一定の障害状態になったりしたとき以外は60歳より前に資産を引き出すことができません。iDeCoの資産を使いたいからといって、中途解約はできないのです。

脱退一時金の規定はありますが、個人別管理資産が25万円以上で、拠出期間が通算で36か月を超えていると審査により却下される場合があります。

そのため、加入途中で引き出す可能性がある場合には気を付けましょう。

必見!破産した経営者が自宅を残せる「おしどり贈与」

経営者の個人破産時に自宅をほぼ確実に残せる方法として「おしどり贈与」があります。

「贈与税の配偶者控除の特例」という制度の通称であるおしどり贈与とは20年以上結婚をしていた夫婦間で、居住用不動産(または居住用不動産の購入資金)を贈与した場合に適用されるものです。

本来は相続税対策で利用される場合が多い制度ですが、どうしても自宅を残したいというときに活用できる裏ワザです。通常は「暦年贈与」という形で贈与をしたときには、年間110万円の基礎控除を上回った金額について贈与税が課されることになります。しかし、おしどり贈与が適用されることで、基礎控除とは別に2,000万円の控除が受けられるので、最大2,110万円まで非課税で居住用不動産を贈与できるのです。

自身が会社の連帯保証人になっていても、その家族である妻は財産の差押対象外です。そこで、個人破産の前にパートナーに対して居住用不動産を贈与しておくことで自宅を残せるのです。

また、税法上でも大変有利になっている制度となっています。

贈与は故意否認の対象になる場合がある

おしどり贈与が適用されるには、必要な3つの要件があります。

夫婦の婚姻関係が20年を過ぎている

ここでいう婚姻関係に内縁関係にある妻は含まれません。戸籍上へと正式に配偶者として記載されていることが必要です。

婚姻関係の20年は、例えば結婚10年目で離婚。10年後に同じ相手と再婚して10年以上が過ぎたというように、合算して20年を過ぎたとしても要件を満たします

贈与財産が居住用不動産(生活の拠点としての不動産)、またはその取得資金

贈与された財産は居住のための不動産でなければこの制度を利用できません。あるいは、居住用不動産の取得資金のための贈与でもこの制度を使うことができます。ただ、その資金の使用目的は居住用不動産の取得に限定され、その他の用途には使えないので注意することが必要です。

贈与した年の翌年3月15日までに居住用不動産に住んでいること

本制度は居住用財産(あるいは取得資金)に限定されていますから、贈与を受けたらその住居へ実際に住む必要があります。税金対策などだけのために、住む予定がない不動産を贈与する方法は認められません。贈与した翌年3月15日まではその不動産に居住、あるいは取得資金を贈与された相手がその資金で購入した不動産に実際に住み始めることができ、その後も住み続ける見込みがあるかどうかを考えて贈与しましょう。

おしどり贈与の条件

夫婦の婚姻関係が20年を過ぎた 居住用不動産 贈与した翌年3月15日までその家に住んでおり、その後も住み続ける見込みがある

贈与は故意否認の対象になる場合がある

生前贈与のように無償で財産を処分する無償行為は、破産管財人による否認権が行使されます。

この否認権は、破産者が支払いの停止などがあった後、あるいはその前の6か月以内にした無償行為などが対象となります。そのため、破産者が支払い停止になる6か月以内におしどり贈与で居住用不動産を贈与したとしても、差し押さえ対象となってしまうことがあります。

逆に支払い停止の6か月より前のおしどり贈与であれば対象外です。もし、自己破産前提でおしどり贈与を行うのであれば、その時期にも注意しましょう。

詐欺破産罪になる場合がある

個人破産が認められ免責が許可されると、一定の財産を残せるとはいえ、大半の財産は失われることとなります。そこでこの財産を少しでも残したいと考えて、金品を他人に渡すなどして財産隠しをする人は後が経ちません

しかしそれは詐欺破産罪という重大な破産犯罪です。破産時の財産隠しは絶対やらないようにしましょう。詐欺破産罪以外にも、特定の債権者に対する担保の供与等の罪(破産法266条)や破産管財人等の特別背任罪(破産法267条)、説明や検査を拒絶した罪(同法268条)など、破産隠しに関連するさまざまな罪が規定されています。

破産犯罪が成立しすると、警察に逮捕され刑事裁判になる可能性があります。もはや事業再生や事業承継という話ではなくなりますので、個人破産時には破産犯罪に手を染めてないかどうか最新の注意を払うことが必要です。

少しでも資産を残すために早めに専門家へ相談を

経営者保証ガイドラインの制定により、会社が破産したときでも経営者が無一文になるリスクは減りました。個人破産になってしまったときでも、できるだけ資産を失わないようにする方法はあります。

中小企業が業績不振になったときには、早期に破産手続きへと移行して、事業承継や事業再生への道を模索するようにしましょう。

会社の破産を選択したとしても、今は様々な可能性がありますので、事業再生のコンサルタントへ早めに相談してみてはいかがでしょうか。

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