倒産企業の事業存続率は33.6%!事業再生の活発化へ弾み

2024年08月21日

2024年7月30日に帝国データバンクが発表した「事業存続倒産の実態調査の結果」によると、2023年度の倒産件数(法的整理)は8881件でした。
これは、2022年度比で30.6%の大幅増の数字を記録したものです。

(出典:帝国データバンクプレスリリース

帝国データバンクでは、倒産企業(法的整理)のうち、倒産前後や手続き内での事業譲渡や自主再建等によって、法的整理後も当該企業の「事業」が存続したものを「事業存続型倒産」と定義
今回は、2014年度から2023年度の10年間で発生した負債5億円以上の事業存続型倒産の内訳を分析した結果をお送りします。

倒産企業の3社に1社は事業が存続している

2024年になって事業再生が困難な企業の整理が進んだのは、リーマンショック以降の金融円滑化法やコロナ融資など、政府による資金繰り支援策によって抑制されてきた企業倒産が、ここに来て増加に転じたことが大きいでしょう。

その一方、2014年度から2023年度の10年間で発生した負債5億円以上の倒産件数は4611件にのぼりますが、そのうち「事業存続型倒産」の割合(事業存続率)は 過去10年間で1549件にのぼり33.6%の割合を占めています。

この数字を少ないとみるか多いとみるかですが、倒産企業の3社に1社は事業が存続している状況においては多くの企業が法的整理になっても事業を存続できているといえます。

また態様別で見ていくと、「会社更生法」の事業存続率は96.0%(25件中24件)ともっとも高く、過去10年間で事業が存続できなかったのはわずか1件だけ。
「民事再生法」も事業存続率は83.2%と高水準であり、過去10年間の事業存続率は上昇基調にのっています。
「破産」にいたった企業でも、366件が事業を存続できています。

近年、金融機関や再生ファンドが積極的に関わるプレパッケージ型の民事再生を積極的に活用していることが、その背景にあるといえるでしょう。

「サービス業」「従業員300人以上」で存続率突出

事業存続率を事業別で見ていくと、「サービス業」が44.4%ともっとも高い比率です。
続いて、「小売業」が38.2%、「製造業」が37.3%と続きます

逆に、平均を下回っている業種は「卸売業」です。
事業存続をしている件数こそ多いものの、事業存続率は28.8%と業種全体平均33.6%を大きく下回っています。

とりわけ最も事業存続率が低かったのは「建設業」の17.3%。
「建設業」は事業そのもので差別化が図りにくい
といった理由があります。
そのほか、突出した設備などを保有していない「建設業」だけでなく「不動産業」「卸売業」についても倒産時に事業が存続されにくい傾向が見てとれます。

続いて業種の細分類で事業存続率を見てみると、過去10年間の累計で件数が最も多かったのは「旅館」で、「ゴルフ場」「貸事務所業」が続きます。

「旅館」は過大な債務を抱えやすい業種である半面、宿泊施設やブランドには一定の価値が認められ、事業存続しやすいということがあるのでしょう。

そのほか、業種の細分類で事業存続率だけを見ると、最も高いのは「ゴルフ場」の76.1%で、「老人福祉事業」の71.8%「養鶏業」の71.4%、「一般病院」の67.7%と続きます。

このような上位に位置する業種は、他で代替が効かない資産価値の高い施設・設備やブランドを有しているものです。
そのため法的整理によって金融債務負担が軽減されれば相応の事業価値が認められるようになり、事業を存続しやすいといえます。

さらに従業員規模別では、従業員が多い企業ほど事業存続率が高くなり、「300人以上」では77.4%に上ります。
一方で、従業員数「10人未満」の企業の存続率は27.2%と低く、小規模事業者の事業存続が今後の課題となっています。

事業存続型の会社清算・再生の動きが活発化

今回の事業存続率調査は帝国データバンクでも初めて実施されたものです。
その結果の中で、負債5億円以上で倒産した企業でも、そのうち3社に1社が事業譲渡などで企業の事業が存続していることが浮かび上がってきました。
そして企業の事業が存続した結果、雇用の一部も守られた可能性もあります。

ネガティブなイメージが強い「倒産」と一口に言っても、地域経済への影響を極力抑える手法が採られているケースもあります。

また、近年は私的整理の制度も拡充されており、業況が悪化している企業の事業や雇用を切り出す、事業存続型の会社清算・再生の動きも活発化しています。
その結果、地域の雇用の受け皿や、代替のきかない産業消失の回避など、地域経済にもたらす効果は大きくなっています。

2008年に発生したリーマンショック以降、政策的に抑制されてきた倒産件数はコロナ禍を経て急増しています。
その反面、事業存続型の会社清算・再生の手法が活用されることで、企業の新陳代謝を促し日本経済の再生・成長が進むことも期待されていくでしょう。

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