中小企業の再生支援!私的整理ガイドラインの条件緩和の検討が進行中

2021年11月19日

中小企業の再生支援!私的整理ガイドラインの条件緩和

コロナ禍で苦境に陥った中小企業の再生を図るべく「私的整理に関するガイドライン」の活用条件緩和が期待されています。貸し付け条件の変更についても、ほぼ100%が可能となっています。

しかし実体としては多くの企業が経営破綻後に事業を再生できず破産していっています。本記事ではコロナ禍における企業再生の現状を解説します。

私的整理とは?

企業の事業を再生する際、破産や会社更生法、民事再生法などに基づいた再生方法は法的整理と呼んでいます。このような法的整理に基づかず、企業と債務者の合意によって企業の事業を再生していくことは私的整理と呼んでいます

私的整理は企業と債務者が合意するものですので、裁判所が介入することはありません。裁判所のような公的機関が介入に入ることなく、債務者が債権者全員に返済方法や返済条件などの変更に応じてもらえるよう交渉していきます。双方の合意が得られたら、新しい返済計画に基づいて債務を履行しつつ、事業の立て直しを図っていきます。

私的整理の方法

事業再生ADR 中小企業再生支援協議会 RCC企業再生スキーム
概要 債権者と債務者の間に中立な第三者である【事業再生実務協会)が入り、 債務問題を解決する。ADRとは「裁判外紛争解決手続き」のこと。 全国の公的機関(商工会議所や産業支援センターなど)のサポートを受けながら事業再生を目指す。 RCC(整理回収機構)が行う私的整理手続きに関して、 企業再生の対象、手続き、再生計画案の要件等をまとめたもの。
対象 企業 中小企業 企業
主導 債権者と債務者 第三者機関 第三者機関
特徴 弁済は3年以内がめど。
公平性が高く、上場企業は上場を維持できる。
弁済は5年以内がめど。
国の設置する機関が間に入ることで、調整が進みやすくなる。
弁済は3年以内がめど。
事業再生ADRと似ているが、 整理回収機構が債権者の立場で回収を行う点が異なる。

私的整理に関する内容は以下の記事でもご紹介しています。

  • コロナ過の中小企業を救うべく「私的整理のガイドライン」規制を緩和できるか?

  • 中小企業向け新「私的整理のガイドライン」を政府が検討

  • 事業再生ADRとは?法的整理・他の私的整理との違いや背景についても解説

  • 事業再生の方法|法的再生と私的再生各々の方法について

私的整理の条件が緩和

長引くコロナ禍により企業の債務残高は2020年12月末に622兆円を記録しました前年同期比で52兆円も増えていることになります。

このように企業債務が増加傾向にあることを受けて、私的整理を利用しやすくなるような対応策を政府が検討しているという報道がなされました。

具体的には、現行では大企業向けとなっている「私的整理に関するガイドライン」の活用条件を緩和し企業が事業再生や廃業に踏み出しやすい環境を整え、景気回復や生産性向上を図るというものです。

政府では大企業や中堅企業を念頭に法制面での抜本的な対応を検討しているほか、中小企業向けには、現行の「私的整理ガイドライン」にある3年以内の債務超過解消の要件を5年以内にするなど、緩和の方向へと動こうとしています。

コロナ禍による緩和でほぼ100%貸付条件の変更が可能に

金融機関に対して、返済条件の変更に極力応じるよう求めた中小企業金融円滑化法という法律があります。リーマンショックの影響緩和のために制定された臨時措置だったため2013年3月に終了していますが、2020年3月にはコロナ禍の影響を考慮して、その枠組みを事実上復活させています

金融庁によると、2020年3月10日から2021年6月末までの期間、銀行による中小企業の貸付条件の変更の申し出は約50万件に上りましたが、その申し出を断られた件数はわずか5,000ほどです。ほぼ100%が貸付条件を変更できた計算となっています。

コロナ倒産では9割が破綻!難しい事業再生の現状

東京商工リサーチによると、2021年9月16日16時の時点で、新型コロナウイルス関連の経営破綻数は全国で累計1978件に上っています。倒産集計の対象外となる負債1000万円未満の小規模倒産まで含めると、累計で2085件となっています。

そのうちの約9割は事業が消滅してしまう破産で占めており会社更生法や民事再生法などを適用した再建型の破綻は1割未満にとどまっています。業績不振が続いていた企業に対して、新型コロナウイルス感染拡大による経済状況の悪化でとどめを刺され、破産へと至る状況が浮かび上がってきます。

このような現状を見るにつけ、現状では経営破綻からの事業再生は難しいという現状が浮かび上がってきますコロナ関連の金融支援策は現在でも継続されており、過剰債務も問題視されています。現状では経営破綻をする企業数は莫大に増加しているわけではありません。しかし今後は、中小企業を中心に事業継続をあきらめ破綻に至る事業者も増えるとみられています。

私的整理で迷ったら専門家に相談してトラブルを回避

「私的整理に関するガイドライン」の活用条件緩和や、ほぼ100%が返済条件を変更など、希望が持てるニュースもありますが、経営破綻から事業再生への手続きは難しいという現状は続いています。

経営破綻後も事業を再建し会社を継続させていくためには事業再生の専門家に一度、ご相談ください。企業と債務者という当事者だけではトラブルも発生やすいですが、プロに問題解決を託すことでトラブルを回避しつつ円滑な再生手続きを期待することができます。

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