コロナ過の中小企業を救うべく「私的整理のガイドライン」規制を緩和できるか?

2021年09月27日

「私的整理のガイドライン」特別立法で規制緩和へ

新型コロナウイルス禍が長引く中、資金繰り確保に向けて金融機関から借り入れが増加している中小企業が多くなっています。債務が増えてしまうと金融機関からの追加融資が受けられなくなり、倒産に至る企業も増えると見られています。

そこで政府に浮上しているのが、中小企業を対象とした「私的整理のガイドライン」の特別立法です。

中小企業向け「私的整理のガイドライン」は、これまでの大企業向け「私的整理のガイドライン」とは何が違うのでしょうか。

2021年9月2日、政府が開催している成長戦略会議において、秋に向けた成長戦略の検討課題案として、「中小企業の私的整理等のガイドラインの策定等」が挙がりました。

2001年4月に「私的整理に関するガイドライン」が策定されましたが、このガイドラインは債権者全員の同意が原則です。そのことから私的整理が成立するための利害調整のハードルが高く、中小企業には導入しにくいものとなっていました。そこで、中小企業向け「私的整理のガイドライン」を特別立法で策定することが検討されたのです。

具体的に言いますと、コロナ禍で過剰債務に陥った企業を救うために、また、コロナ禍が終息した後の経済回復を早めていくために、「私的整理」が行われやすいよう規制緩和を検討しているというのです。

「私的整理のガイドライン」のこれまでの経緯については、こちらをご覧ください。

ハードルが高い全債権者同意を見直し

現行の「私的整理のガイドライン」では、私的整理を進めていく中で決めていく債権カットの割合や債権放棄については、債権者(金融機関)全員の同意を得なければいけません。

そこで、複数の金融機関から融資を受けているという場合には、その債権者(金融機関)の1社だけでも再建計画や債権カットの割合に反対すると私的整理の手続きに入ることができないのです。

そこで検討されているのが、債権者(金融機関)全員でなくても過半数が同意すれば私的整理に入れるようにする案です。

しかしそれでは、少額の債権を持つ債権者(金融機関)が不利益を被る可能性がありますし、同意した過半数側に利益が偏ることも考えられます。このように中小企業向け「私的整理のガイドライン」には懸念も大きく、成立までは難航が予想されています。

中小企業に多い経営者保証も見直し検討

経済産業省では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、実質無利子・無担保融資などで中小企業の資金繰り支援措置を強化しました。

そのため2021年秋現在で、国内における企業の倒産件数は低い水準で抑えられています。しかし将来的には倒産件数が急増することも予想されます。

その際、中小企業の足かせとなってくるのが、経営者保証です。中小企業に金融機関が融資する際には、経営者保証を前提としていることが多くあります。そのため、債権放棄をして会社が破産状態になると、経営者も個人破産に追い込まれることになります。

そのとき、現行の「私的整理のガイドライン」では、債権放棄を受けた企業の経営者は退任することが原則となっています。

しかし中小企業の場合、経営者個人が培ってきた人脈や経験、ノウハウなどに依存して会社が成立していることが多くあります。そこで経営者が退任してしまえば、人脈や経験、ノウハウなどが途切れてしまうことになり、会社の存続問題にもつながってきます。

このことを金融庁では問題視しており、金融機関に対して経営者保証を前提としない融資を促しています。また、中小企業向け「私的整理のガイドライン」では、債権放棄をしても経営者が退任しなくてもいいようにするよう、実情に即した形での見直しが考えられています。

まとめ

中小企業向け「私的整理のガイドライン」の策定についても、経営者保証を前提としない融資の促進についても、金融機関からの反発が予想されています。中小企業側にはメリットがあることですが、性急に制定し過ぎるとモラルハザードが起こる可能性もあります。

金融機関側と中小企業側のバランスを巡り、政府には難しいかじ取りが求められています。

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