資金繰り悪化でも再建を諦めないために──事業再生円滑化関連保証の仕組みと活用ポイント | 事業再生のリアル

資金繰り悪化でも再建を諦めないために──事業再生円滑化関連保証の仕組みと活用ポイント

2025年12月25日

資金繰りの悪化や売上減少に直面しながらも、事業の再建を目指す中小企業にとって、再生の初動で資金を確保できるかどうかは大きな分岐点になります。そこで活用されているのが「事業再生円滑化関連保証(プレDIP保証)」です。

本制度は、再生計画の策定段階から必要資金を調達できるよう信用保証協会が支援する仕組みで、倒産を回避しながら再建を進めたい企業に有効です。

本記事では、制度の目的、対象要件、メリット、注意点までわかりやすく解説します。

事業再生円滑化関連保証とは

事業再生円滑化関連保証は、資金繰りが悪化した中小企業が再建に向けて必要な資金を確保できるよう支援する制度です。

いわゆる「事業再生のための融資」の一種であり、再生計画の初期段階から信用保証協会が保証を行うことで、金融機関からの融資を受けやすくします。「事業加速円滑化国債」と混同されがちですが、本制度は中小企業の事業継続を目的とした保証制度です。

以下では制度の目的や「プレDIP保証」と呼ばれる理由を解説します。

制度の目的

事業再生円滑化関連保証は、いわゆる事業再生保証制度の一つとして位置づけられ、資金繰りが悪化した中小企業が倒産に至る前に再生計画を実行できるよう支援することを目的としています。

再建の初期段階から信用保証協会が保証を行うことで、「事業再生のための融資」を受けやすくし、資金調達の不安を軽減します。

主な目的は、以下となります。

  • 再生計画の実行に必要な資金を確保
  • 法的整理前の段階で資金繰りを安定化
  • 金融機関との協調支援を促進し、再建を後押し

法的整理については、「法的整理とは|法的整理の種類や流れについて解説」のコラムをご参照ください。

「プレDIP保証」と呼ばれる理由

事業再生円滑化関連保証が「プレDIP保証」と呼ばれるのは、法的整理後に利用されるDIP=Debtor in Possession(法的整理中の事業継続)型融資の前段階で活用できる制度だからです。

DIP融資は、倒産手続き中でも企業が事業を継続しながら資金調達できる仕組みですが、プレDIP保証はその前の私的整理段階で資金繰りを支える役割を担います。早期の資金確保により、再生計画の実行をスムーズに進められる点が特徴です。

私的整理については、「「私的整理」債権者の多数決へ緩和!企業の事業再生を促す」のコラムをご参照ください。

対象となる企業と利用要件

事業再生円滑化関連保証は、すべての中小企業が利用できるわけではなく、再建の見通しがあり、金融機関と連携して事業再生に取り組む企業を対象とした制度です。

いわゆる事業再生保証制度の中でも、私的整理段階での資金調達を支援する点が特徴で、再生計画の実行可能性や金融支援体制が重要な判断基準となります。

ここでは、どのような企業が対象となるのか、また利用に必要な前提条件について詳しく解説します。

対象企業

事業再生円滑化関連保証の対象となるのは、単に資金繰りが厳しい企業ではなく、再建の合理的な見通しがあり、外部支援を受けながら事業再生に取り組む中小企業です。

特に、私的整理の枠組みを活用し、再生計画を進める企業が中心となります。

以下のいずれかに該当することが要件です。

  • 特定認証紛争解決手続(特定ADR)で再生を図る企業
  • 中小企業基盤整備機構の指導・助言を受ける企業
  • 認定支援機関の助言を受けて再生を進める企業

必要な前提条件

事業再生円滑化関連保証を利用するには、単に資金繰りが厳しいだけでは不十分で、再建の合理的な見通しがあることと、金融機関との協調体制が整っていることが前提となります。

これは、事業再生保証制度全体に共通する考え方で、再生計画の実現性が制度利用の可否を左右します。特に、財務状況の透明性や支援機関との連携が重要です。

必要な前提条件は、以下となります。

  • 再生計画に実現可能性がある
  • 金融機関の支援・協調体制が確保されている
  • 財務状況を正確に開示できる体制がある

保証内容と利用メリット

事業再生円滑化関連保証では、信用保証協会が一定の範囲で融資を保証することで、再生計画の実行に必要な資金を確保しやすくなります。

保証限度額や保証料率などの条件は公式に定められており、事業再生の初動を支える仕組みとして活用されています。また、金融機関との協調支援が得られやすくなる点も大きな特徴です。

ここでは、制度の具体的な保証内容と、利用する企業にとってのメリットを整理します。

公式情報による保証内容

事業再生円滑化関連保証の保証内容は、信用保証協会が公式に定めており、再生計画の実行に必要な資金を確保しやすくする仕組みとなっています。保証限度額は2億8,000万円、保証期間は3年以内、保証料率は年1.76%とされています。

また、資金使途は運転資金から設備資金、仕入費用、販売管理費など幅広く認められており、事業再生の初動を支える制度として活用されています。

全国には各都道府県および一部政令市ごとに信用保証協会が設置されており、事業再生円滑化関連保証を含む各種保証制度の相談窓口となっています。

以下に公式サイトURLの一覧をまとめました。

地域 信用保証協会名(公式サイト)
北海道 北海道信用保証協会
青森県 青森県信用保証協会
岩手県 岩手県信用保証協会
宮城県 宮城県信用保証協会
秋田県 秋田県信用保証協会
山形県 山形県信用保証協会
福島県 福島県信用保証協会
茨城県 茨城県信用保証協会
栃木県 栃木県信用保証協会
群馬県 群馬県信用保証協会
埼玉県 埼玉県信用保証協会
千葉県 千葉県信用保証協会
東京都 東京信用保証協会
神奈川県 神奈川県信用保証協会
山梨県 山梨県信用保証協会
新潟県 新潟県信用保証協会
長野県 長野県信用保証協会
富山県 富山県信用保証協会
石川県 石川県信用保証協会
福井県 福井県信用保証協会
岐阜県 岐阜県信用保証協会
静岡県 静岡県信用保証協会
愛知県 愛知県信用保証協会
三重県 三重県信用保証協会
滋賀県 滋賀県信用保証協会
京都府 京都信用保証協会
大阪府 大阪信用保証協会
兵庫県 兵庫県信用保証協会
奈良県 奈良県信用保証協会
和歌山県 和歌山県信用保証協会
鳥取県 鳥取県信用保証協会
島根県 島根県信用保証協会
岡山県 岡山県信用保証協会
広島県 広島県信用保証協会
山口県 山口県信用保証協会
徳島県 徳島県信用保証協会
香川県 香川県信用保証協会
愛媛県 愛媛県信用保証協会
高知県 高知県信用保証協会
福岡県 福岡県信用保証協会
佐賀県 佐賀県信用保証協会
長崎県 長崎県信用保証協会
熊本県 熊本県信用保証協会
大分県 大分県信用保証協会
宮崎県 宮崎県信用保証協会
鹿児島県 鹿児島県信用保証協会
沖縄県 沖縄県信用保証協会
政令市 横浜市信用保証協会
川崎市信用保証協会
名古屋市信用保証協会
岐阜市信用保証協会

お問い合わせ窓口や詳細条件の確認は、最寄りの信用保証協会のホームページをご確認ください。

利用する企業にとってのメリット

事業再生円滑化関連保証を利用する最大のメリットは、再生計画の初期段階から必要な資金を確保しやすくなる点です。信用保証協会が保証を行うことで金融機関の融資判断が前向きになり、事業再生のスピードを落とさずに資金繰りを安定させることができます。

また、資金使途が幅広く認められているため、運転資金から仕入費用、販売管理費まで柔軟に対応できる点も企業にとって大きな利点です。

企業にとっての主なメリットは、以下となります。

  • 再生計画の実行に必要な資金を確保しやすい
  • 金融機関との協調支援が得られやすい
  • 資金使途が広く、再生の初動を支えやすい

利用時の注意点と成功のポイント

事業再生円滑化関連保証を効果的に活用するためには、制度のメリットだけでなく、利用に伴うリスクや注意点を正しく理解しておくことが重要です。

特に、再生計画の実現性や金融機関との協調体制が不十分な場合、制度を利用できない可能性があります。

また、制度を最大限に活かすには、早期の相談や専門家との連携が欠かせません。

ここでは、利用時に押さえておくべきリスクと注意点、そして成功につなげるためのポイントを整理します。

リスクと注意点

事業再生円滑化関連保証は有効な支援策ですが、利用にはいくつかのリスクや注意点があります。

特に、再生計画の実現性が不十分な場合は保証が受けられず、金融機関との協調体制が整っていないと手続きが進まない可能性があります。

また、財務内容の開示が求められるため、経営状況を正確に説明できる体制も必要です。

主なリスク・注意点は、以下となります。

  • 再生計画の実現性が低いと利用不可
  • 金融機関との協調体制が必須
  • 財務情報の開示が求められる
  • 返済負担が改善しない場合、再建が難しくなる可能性

活用を成功に導くポイント

事業再生円滑化関連保証を効果的に活用するには、早期の相談と、再生計画の根拠を明確にすることが欠かせません。特に、金融機関や認定支援機関との連携を強化し、財務状況を正確に把握したうえで計画を作成することが成功の鍵となります。

また、私的整理のスキームを適切に選択し、再生の道筋を早期に示すことが重要です。

まとめ:事業再生を加速する「早期支援」の重要性

事業再生円滑化関連保証は、資金繰りが悪化した企業が倒産に至る前に再生の道筋をつくるための重要な支援制度です。再生計画の初期段階から資金を確保できる点は大きな強みであり、金融機関との協調支援を得ながら事業の立て直しを進めることができます。

しかし、制度を最大限に活用するには、早期の相談や財務状況の正確な把握、適切な再生スキームの選択が欠かせません。経営の危機を感じた段階で迅速に動くことが、事業再生の成功率を大きく高める鍵となります。

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