2022年12月28日
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2023年がピーク!ゼロゼロ融資の返済をどう乗り切るか?(前編)
貸出残高43兆円に達するゼロゼロ融資の返済期日のピークである、2023年を迎えようとしています。コロナ禍の救世主と見られていたゼロゼロ融資は、いまや業績が回復していない企業の足かせになろうとしています。ゼロゼロ融資を受けた経営者はどのようにこの苦境を乗り切っていけばいいのでしょうか?前編後編に分けて解説します。
ゼロゼロ融資は2023年に返済ピークを迎える
新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた企業の経営を支えていた「ゼロゼロ融資」の新規実行は2022年で終了。2023年には返済開始のピークを迎えようとしています。
ゼロゼロ融資とは?
ゼロゼロ融資とは、コロナ禍により売上高が減少した企業を支援するために2020年3月からスタートされた政府の融資策のことです。返済期間は最長5年まで元金の返済を猶予するほか、最初の3年間は各都道府県が利子を肩代わりし補給することで企業側の利払いを実質免除する形となっていました。また将来、返済に滞りが発生すれば、公的機関の信用保証協会が肩代わりするとしています。
しかし必要のない資金までゼロゼロ融資で借りさせていた事例もあり、過剰融資の懸念もあります。
2022年9月末までに民間と政府系金融機関で計約43兆円の融資が実行されたことで、2021年の倒産件数は歴史的低水準となっていました。しかし2022年度上半期の倒産件数は一転して増加をしています。
このゼロゼロ融資を受けた企業の大半は1年以内に返済をスタートしていますが、コロナ禍の影響が著しい業界は返済猶予を3年程度に設定した企業が多くありました。そのため、2023年に返済開始がスタートとする企業も多くなっています。
企業倒産は激減し『ゾンビ企業』を排出
企業の経営実態において、国際基準では金利を支払う稼ぐ力で判定されますが。日本基準では返済可能性を重視して判定されます。そのため、日本には国際基準では再生可能性が乏しい「ゾンビ企業」が約16.5万社も存在しているとされています。
コロナ禍により行われてきたゼロゼロ融資は、国際基準でいう日本の「ゾンビ企業」の約8割が借りていると言われています。そのために企業倒産の激減が続いていましたが、2023年の返済ピークを迎え、倒産件数の激増が懸念されています。
(出典:2022年 8月報 | 株式会社 帝国データバンク[TDB])
倒産増加を危惧
ゼロゼロ融資により、多くの企業が倒産を未然に防いだことで、倒産件数の急増を防ぐことができました。ただ多くのゼロゼロ融資を行った結果、返済できない規模の負債を抱える「ゾンビ企業」を多く生み出したほか、コロナ禍の第8派が到達していると言われている2022年末はコロナ完全収束とはいえず、今後の倒産件数増加が危惧されています。
現に2022年11月の倒産件数は前年同月(468件)を大幅に上回る570件となっており、コロナ禍以降では最長となる 7ヵ月連続での倒産件数増加となっています。
コロナ、円安、燃料高、先行きの見えない日本企業
日本企業の経営の現状は、コロナ禍が依然収束しないのに加えて、円安、燃料高という三重苦が襲っています。そのために影響を受けているのは、飲食、旅行、交通といったコロナ禍により大きな打撃を被った業界だけではありません。大手企業であってもその影響は免れず、優良企業と言われていた大手企業でも状況は厳しくなっています。
売上高過去最高でも利益大幅減のトヨタ
トヨタ自動車では2022年4月から9月までのグループ全体の中間決算を発表していますが、最終的な利益は前年の同時期と比較して23.2%減少し1兆1710億円となりました。トヨタ自動車は円安が進めば進むほど、増益になると言われてきましたが減益となっています。
現に売上高は過去最高を記録して円安効果による増益額は約1兆円にも上っており、本来であればトヨタ自動車の営業利益は2倍近く上がるはずでした。しかし資材やエネルギー価格などが高騰をすることでコストが7650億円も増加。原価改善や営業面の努力も及びませんでした。「円安効果」がマイナス方向に働いてしまったのです。
結果として、中間決算としては2年ぶりの減益を記録したわけです。
”注射針特需”のニプロも負債増加
ワクチン接種の特需があった注射器を製造しているニプロのように、「コロナ禍の影響はないのでは」と考える企業でも、想定外の状況で業績が悪化しています。
ニプロのキャッシュフローの推移を見ていくと、フリーキャッシュフローの赤字が続き、事業で稼いだ以上の資金を投資に費やしています。ニプロは銀行など金融機関から積極的に資金を借り入れながら、投資を何年にもわたって続けています。
市場成長率を超える無謀な経営計画を立案しており、2030年に売上高1兆円を達成するという目標を掲げ、この目標を達成するために売上高成長率年平均7.0%以上というKPI(重要業績評価指標)を設定しています。この無謀な計画により、フリーキャッシュフローが赤字となっているのです。
原材料高騰だけでなく物流コスト高が追い打ち
高騰を続けているのは原材料費だけではありません。エネルギー価格が高騰した結果、物流コストも値上がりを続けています。
コロナ禍による影響が残っていることに加え、値上がりが続く要素しかなく、企業経営を圧迫し続けています。
コロナ禍によって返済できない規模の負債を抱える「ゾンビ企業」が約16.5万社も存在しているほか、トヨタ自動車やニプロといった大手企業でさえも思うように経営不振から脱却することができていません。現在のこの苦しい状況を乗り切るためにどうすればいいのでしょうか。後編では「ゾンビ企業」にならないための具体策などを交えながら解説していきます。
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