【公認会計士が語る事業再生】事業再生が成功する条件

2023年10月30日

公認会計士の山本淳氏へのインタビュー後編です。
今回も前編に引き続き、事業再生の領域で経験豊富な山本氏(みそうパートナーズ株式会社:代表取締役)にお話を伺いました。
実際の事例のお話なども絡めて、前編より深い内容についても伺っているので、是非ご覧ください。

前編の記事はこちらから

これまで関わってきた事業再生案件のお話

-印象的だった2つの事例-

山本氏がこれまでに携わってきた中で印象的だった事例はありますか?

印象的ということですと、1つ浮かぶ事例がありまして、先代の社長が大きな負債を抱えてしまっていた、創業200年以上の老舗企業の事例です。
その企業では先代がバブル期に過剰な事業投資や経費の使い込みをしていた影響もあり、過剰債務となっていました。
また実際に決算内容を見ていくと、20億円規模の債務超過になっていることが判明しました。
この事態が判明後、準メインの銀行が外資系サービサーに債権売却をしたことで金融機関の融資体制が崩れ、法的整理に追い込まれるようなところまで行ってしまいました。

社長と一緒に金融機関を訪問してなんとか時間的猶予を貰えないかと交渉し、当時の経営陣と再生に向けたあらゆる方法を模索しました。
当時は金融円滑化法以前の時代であり、最近のように金融機関も理解を示してくれる状況ではなく、債務超過の解消と収益力の立て直しを速やかに行わなければならず頭を悩ませました。
収益力の立て直しに関しては、不採算店舗の撤退やコスト削減等で一定の目途をつけることができたのですが、債務超過の解消を早期に実施することが非常に困難でした。
唯一見つかったのが先代社長と、そのご兄弟の計7名が株式を保有していた資産管理会社の合併というシナリオです。
その資産管理会社が保有している不動産は一等地にあり、簿価は1億円程度だったと記憶していますが、時価としては25億円程度の価値のある不動産でした。
当時の社長とこのシナリオを用意し先代社長のご兄弟に合併のご提案をさせていただきました。
当然のことながら、先代社長のご兄弟からすると当該不動産を売却すると各自高額の収入を得られるので、反対意見も多く混乱しました。
我々の提案通りにすると先代社長のご兄弟が高額の収入を得る機会が失われるので、当然のことだと思います。

当時の社長からするとご親戚に無理なお願いをしているという負い目もあったので、若干諦めムードになっていましたが、「100人以上いる会社の従業員にはそれぞれ家族がいて、平均3人家族とすると300人、また御社の取引先の中には御社がいることで成り立っている会社もあり、その人達のことも考えたら500人以上の人生がかかっているんです」と社長を鼓舞し、一緒に粘り強くご説明とお願いを繰り返しました。

そのうちある会合の場で長女の方が、「そもそもこの土地はご先祖様が商いをしながら残してくれた資産であり、私たちが勝手に処分してお金を手にするというものではない。
自分たちの兄が失敗したことで、先祖代々続けてきた商いをやめていいのか。
現社長が大きな負債を抱えながらも会社を引き継いでいく覚悟をしているのに、それを目一杯応援してあげるのが筋ではないのか。
」とご兄弟の皆様を説得してくださった結果、我々が用意した合併の承認を得られることとなりました。

その結果、20億円という大きな債務超過が計画1年目で解消することになり、その後収益力の改善も追い付いたので、再度正常な銀行取引ができるようになり経営が安定しました。
そこから約20年経過して、当然事業の浮き沈みはありますが、その企業は事業を続けて多くのお客様に喜びを与え続けています。
もちろん私も顧問として引き続き色々な相談に乗っています。

なかなか同じような事例にあたることはないとは思うのですが、通常のコンサルタントであればここまで足を踏み入れて伴走することはないと思います。

ただ、事業再生コンサルタントを名乗るのであれば、クライアント企業の再生のためにあらゆる方策を考え、経営陣へ説得をし、その実現のために一緒に汗をかいて伴走する覚悟が必要だと考えます。

この他にも記憶に残っている事例はありますか?

やはり悪質な粉飾事例は印象に残っていますね。
中小企業はどうしても銀行から資金を借りないといけないので、少しの赤字であれば黒字に決算操作してしまうということはよくある事です。
ただ、資金残高や借入残高の粉飾までしてしまうと詐欺と言われかねない悪質なものとなります。

ある新規クライアントの案件に関与したときのことです。
その会社には、税務申告用と銀行提出用の内容が全く異なる決算書が用意されていました。
よく調べてみると、売上の粉飾のみでなく、借入金残高も大きく異なっていました。
実際は150億円ほどの借入金があるにも関わらず、銀行提出用の書類では100億円程となっていました。
しかもそれが各銀行にバレないように銀行別借入金明細も各銀行毎に作られている周到ぶりでした。
銀行からするとフローである損益計算書も嘘をつかれているし、借入残高も嘘をつかれているので、それをもって審査し追加融資をしてしまっているわけです。
当然のことながらこの事実を伝えた後、金融機関からの激しい追及がきて荒れに荒れました。

ただそのクライアントは、直近に出した新製品が大ヒットしており、少なくとも先2年程度は相応の売上があがることが見えていましたし、不要不急のコスト削減をすることで利益も相当額出ることが見えていましたので、金融機関からの追及が落ちついたタイミングで再生プランの策定に着手しました。
銀行の圧力が激しかったので現経営陣の続投は無理と判断し、現経営陣を説得してすぐにスポンサースキームに移行しました。
幸いこの切り替えが早かった事、足元の業績が順調な事もあり、なんとか債権放棄無しで引き受けてくれるスポンサーが見つかりました。
その後は利益を安定的に出せる企業に生まれ変わり、今現在も存続して事業を継続しています。

擁護するわけではないのですが、社長も1人の人間ですので何らかの事業上の失敗などにより大きな損失を出してしまった場合に、会社や従業員を守るために、若干の決算操作をするという間違いを犯してしまうことはありうると思います。

先ほどの会社は傷の浅いうちに抜本的な改善をしていれば自力再生も可能だったはずです。
しかしながら粉飾を長年し続けた結果、戻るに戻れない状況となってしまいました。
社長の自制も大事なのですが、会社の中で社長に対して正しい事を進言する右腕のような存在がいれば、もしかすると違う道があったかもしれません。
とはいえ中小企業の社長は同時にオーナーであるケースがほとんどなので、役員が社長に進言できるかというとなかなか難しい場合が多いです。

point
  • 事業再生は多種多様なケースがあるので実績豊富なコンサルに相談するべき

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