【公認会計士が語る事業再生】企業を「再成長」させることこそが事業再生の本質だ

2023年09月26日

コロナ禍、人手不足、物価高騰などのざまざまな要因による不況の影響は、多くの企業に対して大きな影響を与え続けています。さらに、コロナ禍を乗り切るための「ゼロゼロ融資」も返済フェーズに突入し、2023年上半期の企業倒産数は4,006件となり、上半期としては6年ぶりに前年より増加しました。(2023年7月現在)
企業の経営に携わる専門家の多くは、今後、倒産に陥る企業が増加すると予想しています。会社の経営状態が悪化したとき、あるいは悪化する前に倒産という最悪のシナリオを回避して経営の立て直しを図るための方法が「事業再生」です。

今回はこれまで24年以上もの期間で700件以上の事業再生案件を手がけてきた、公認会計士の山本淳氏(みそうパートナーズ株式会社:代表取締役)にお話を伺いました。山本氏の事業再生に対する熱い想いや、事業再生について専門家に相談するベストなタイミング、事業再生に成功する会社の傾向など、事業再生についての経験談も交えながら多岐に渡ってお話しいただきました。

現場叩き上げの公認会計士『山本 淳』のバックボーン

-本当に面白い。本気で悔しい。やりがいのある事業再生-

はじめに読者の皆さんに対して山本氏のことをご紹介する意味も兼ねて、山本氏ご自身の事について伺いたいと思います。
まずは山本氏が公認会計士を目指した経緯などを教えていただけますか?

実は私の家庭はあまり裕福ではなくて、高校を卒業した後は進学せず働く道を選択しました。知り合いの会社を色々手伝いながら働いていたのですが、そこの会社にはあまり数字に強い人がいなくて、私が数字に強くならないと業務が回らないなということで簿記の勉強をしていました。

そんな生活をしている中、たまたま公認会計士の方とお会いする機会がありました。丁度自分で勉強して日商簿記1級に合格し会計面の知識もありましたし、その方の進言もあって、公認会計士を目指そうというのがきっかけですね。働きながら勉強して、その約1年後、26歳の時に一発で公認会計士の試験に受かり、監査法人で働き始めました。

そこから事業再生の道に進んだことには何かきっかけがあるのでしょうか?

30歳くらいの時、業績の悪い会社のところを手伝ってくれと言われて行ったのが、初めての事業再生現場でした。

そこの会社の社長と飲みに行った時につい飲みすぎてしまった日があって、社長の家に一晩泊めてもらった日があったんです。そこで会社についての改善点とか将来のビジョンとかを一晩中語り合って、結果的に社長とはものすごく仲良くなりました。もちろん仲良くなっただけではなくて、語り合う中で会社のことが理解できたので社長と一緒になって会社の事業計画を組み立てて、それをもって銀行を説得したり、色々ありましたが、1年半くらいでその会社は再生して経営が安定しました。その時に、これ天職なんじゃないかっていうくらい面白みを感じたんですよね。

当時私が携わっていた会計監査の仕事は、どうしても数字の上の話で終止している事が多かったのですが、再生の現場は数字の基となる事業の理解、なぜダメになったかという根本原因の把握、それを改善するための施策の立案、その施策を実現するための組織改革・意識改革等々、数字だけの世界では解決できず、関与するコンサルタントの熱量や力量でも大きく変わる。であるならば私にしかできない仕事をしたいと思い、事業再生の世界に飛び込みました。

天職と仰るくらいですから、事業再生はそれだけ素晴らしい仕事であると感じます。
その後現在に至るまで事業再生に関わり続けるための原動力はどういったものがあるのでしょうか?

その後、私が事業再生の仕事を自身の一生の仕事としてやっていこうと決意したきっかけとなる案件がありました。未上場ながらかなり大規模なクライアントを担当したときのことです。当時は金融円滑化前で事業再生スキームが今のように確立していない状況ということもありましたが、根本的には経験も能力も乏しかった私の責任も大きく、最終的には民事再生→スポンサー譲渡→経営陣退陣という顛末となりました。 当時の私の持っている限りの力は注いだつもりではあったのですが、力及ばずということも認識していましたので、高齢であった当時の社長に謝罪に伺いました。ですがその社長は「そもそも経営悪化したのは自分の責任であり、むしろ山本さんが会社のために一生懸命仕事をして自分のことも励ましてくれ続けたことに感謝している。」と仰ってくれました。そして2人で涙を流しながら悔しさを語り合いました。

その時に私は二度とこのような悔しい思いをする会社や経営者を作りたくない、能力を上げて経験を積んで経営難に陥った多くの会社の手助けをしていこうと誓いました。

事業再生の素晴らしい部分も苦しい部分もご経験されてきた山本氏の考える、事業再生の醍醐味とは何でしょうか?

自分のやった仕事が感謝されるというのは醍醐味ですね。どんな仕事でも感謝されることはあると思いますが、さらに深いレベルの感謝なんです。
事業再生は、ただ単にその企業や社長を守っただけではダメです。特定の方からの「ありがとう」ではダメなんです。自分のやったことが従業員の雇用を守り、社長の生活を守り、外注先等取引先の会社を守り、銀行を守る。

三方良しみたいに関わる人全てがハッピーになる形で落ち着けることが事業再生のあるべき姿だと思いますし、その理想に近づける形で再生を図れた時に、この仕事は最高だなと思います。

また、理想の形で事業を再生していくためにはお客様自身が大きく変わらないといけません。そのために私達は常にお客様と良い関係を築く必要がありますが、それは仲良くなれということではなく、よく弊社の者には「お客様にとって唯一無二の存在になれ」と伝えています。お客様がどんなに苦しい状況であっても、絶対に諦めずに伴走して、本当に苦しい局面を共に乗り超え、お客様を助けることで本当の意味での信用信頼を得なさいということです。

仕事ぶりとか能力を信頼してもらうような、仕事上のパートナーとしての信頼関係はよくあるのですが、あなた自身を信頼してますよという、もう一つレベルが高いところでの信頼関係が必要だと私は思います。

企業とコンサルで1つのチームになって再生を目指すわけですから信頼関係というは重要な要素ですよね。山本氏は公認会計士というご経歴から事業再生の道に進まれたとのことですが、公認会計士として事業再生に関わる強みはどちらにあるとお考えですか?

事業再生コンサルタントは、数字に対する深い理解がないとまず出来ません。B/SやP/Lだけでなくキャッシュフロー、またそれぞれの科目の増減などをみて瞬時に会社の状況を理解できる数字の強さを会計士は持っています。会計士は初期に監査の現場で鍛えられていますので(笑)。

数字に強いので事業再生の仕事を10年も経験していれば、3期分程度の決算書を見ただけで「ここは粉飾の可能性が高い」等の違和感をすぐに感じますし、数字から見て改善すべきポイントの仮説を立てることができます。

なるほど、数字に強いということが事業再生の内容に直結するわけですね。
少し話は変わりますが、山本氏がこれまでに携わった事業再生の件数や、現在抱えている案件数はどれくらいなのでしょうか?

それはもうすごい数ですよ(笑)。流石に自分が中心に立って毎日関与する案件は少なくなりましたが、自分が社長と話したり、銀行と調整したりする案件を含めたら総数700件くらいはやってますね。

現状私が責任者として抱えている案件は30件程あるので、毎週大阪と東京を行ったり来たりして、社長や銀行の方とか、様々な関係者とお話をしている時間が多いです。
今日もこのインタビューの前に、今担当している案件の社長と打合せがあり、当初は1時間くらい話しましょうという程度だったのですが、2時間半も話し込んでいました(笑)。

point
  • 事業再生は『数字のプロ』である公認会計士に相談するべき

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