【弁護士が語る事業再生】事業再生の本質とは?

事業再生 インタビュー 山崎弁護士

2023年06月07日

事業再生に携わって記憶に残っている事例

-極限状態にある利害関係者に納得してもらうために土下座をした過去-

これまで山崎先生が携わった案件のなかで、記憶に残っている案件などはありますか?

私が弁護士になって最初に携わった再生案件は記憶に深く残っています。それはゼネコンが民事再生をしたという案件だったんですが、下請け業者がマンションのドアとか窓とかの取り付けをして、ゼネコンがまだ代金を払ってなかったのにゼネコンが民事再生やったことでその下請けが貸し倒れにあったということがありまして。それで下請け業者が怒ってそのマンションに乗り込んで、ドアとか、窓とかを外して持っていったんですよ。ただそのマンションにはもう既に人が住んでいたので大問題になりました。
当時、私は駆け出しの弁護士だったんですが、その現場に、私も民事再生したゼネコンの会社の担当者と一緒に行くことになりまして。下請け業者は現行犯で警察に逮捕されてその場にはいなかったんですが、住居が壊されて怒った住民の人たちに「どうしてくれるんだ。」と取り囲まれてですね。要するに「お前たちが民事再生したせいで、マンションのドアとか窓がなくなったんだ。」ということですね。もちろん、直ちに施工し直しますみたいな話ではあるんですが。運が悪いことに結構寒い時期だったのもあって、もうみんなカンカンに怒っていて。ドアとか窓を取り付けるなんてすぐにはできないですから、代わりとしてホテルに少しの間泊まってもらうという提案をして、そういう配慮はもちろんしたんですけど、住民の方々がもう本当に怒り出してですね。怒りが収まらなくて30人ぐらいに取り囲まれて「土下座をしろ。」と言われて。依頼者であるゼネコンの担当者もいっぱいいっぱいの中で一生懸命やってるわけですから、ゼネコン側も怒ってるんですよ。 そこで私は「収まりつかないんで、もう土下座しましょうよ。」と言って、依頼者のゼネコンの担当者達と一緒にその住民の方々に土下座して謝って、その場を収めて、結果的にそれでこの事件は解決ができました。

想像するだけでゾッとするような修羅場です…。土下座することで、その場が丸く収まったということですね。土下座することに抵抗はありませんでしたか?

はい。今でも『山崎土下座事件』といって、事務所中でも語り継いでいる事件なんです。
やはり人のためのことだからこそ、土下座するみたいなこともできる仕事なんですよ。
再生局面は全員が極限状態にあって、依頼者も非常に苦しい状況に置かれているし、債権者だったり、利害関係者の方も同様に苦しいんです。
依頼者も、「弁護士さんにわざわざ来てもらってるのに土下座させるって、ちょっとないよね」と、感じたと思います。だけどそうじゃなくて、「これはもう土下座しましょう。」ということを私が言ったんです。要するに、私は代理人として代わりに謝ってるだけなんですよ。怒ってる人が土下座しろって言って収まるなら土下座をしようと思ったんです。
様々な問題を解決をしなきゃいけない仕事で大事なのは、依頼人や関わる全ての人のためだということです。そこに自分個人のプライドとか、自分の個人的な感情は関係ないです。この人たちとか、この会社のためだからできると、本当に人のための仕事なんです。
この事件では、そうやって解決をして、結果的に悪い方向に行かずに会社を再生していくことができたりとか、そういう利害関係者に納得してもらったことを通して、事業再生という仕事は非常にやりがいがあるなと感じました。

事業再生の本質は会社の経営を立て直すという部分にある

-経営者と共にパートナーとして乗り越える-

非常に強い原体験を経て、現在まで事業再生への情熱をもって取り組んでおられることが分かりました。
山崎先生が事業再生において難しさや大変さと感じることは、どんな部分ですか?

基本的に非常に重たい責任を伴う仕事ではあります。決まった答えがあるわけではないので、非常に苦労したり悩んだりします。1社1社やるべきことが違うので、それを大変といえば大変だと思います。
ただ、そのぶん専門家としてやりがいがあるし、リスクを背負って経営をされていて、人生だとか財産だとかを賭けて仕事をしている経営者の方と比べると、自分は仕事をお手伝いする役割なので。 やはりどうしても経営者の方というのは本質的に大変だなと思うことのほうが多いです。

事業再生は経営が行き詰ってギリギリな状態までいったときに行うものといった印象が ありますが、資金繰りの改善をするといったことなども事業再生に含まれるのでしょうか? 実際「事業再生」とはどういうことなのでしょうか?

事業再生とは、窮境にある企業の建て直しのことをいいますが、いくつかのフェーズがあって、浅い段階から深い段階まであります。だからかなり多義的な意味合いで使われている言葉だとは思います。 浅い段階は、いわゆる経営改善といわれるような段階。コンサルタントが入ってP/L(損益計算書)だったり資金繰りの改善をするというようなものも広くいえば事業再生に含まれますし、そういった案件の方が数としてはもちろん圧倒的に多いです。
それがだんだん深い段階になってくると、もっとB/S(貸借対照表)を抜本的に改革しないといけないということになる。具体的には債務のカットに踏み込むようなテコ入れが必要になってくると、弁護士が入る必要がでてきたり、さらに資金繰りが本当にもたないとなれば、民事再生等の法的整理をしていかなければいけません。これは裁判所の手続きですので、必ず弁護士が代理人をやらないといけません。そういう意味では一言で事業再生といっても、場合によってかなり幅があります。

ただ結局は、どれだけ債務のカットをしてもその企業が収益構造の改善をして、利益を獲得しないと会社としてやっていけませんので、事業再生の本質は「P/Lの改善をして、経営を立て直す」ということであると思います。

ありがとうございます。『事業再生』について本質的な理解が深まりました。
ただ実際、経営者が事業再生をしようと弁護士に依頼する段階では、既に経営が上手くいっておらず、悪循環に陥ってしまっている会社も多いかと思います。そんなタイミングから初めて事業再生に着手していく際の難しさはありますか?

事業再生に踏み込むタイミングを経営者が客観的に理解して、割り切るのは非常に難しいです。だから、タイミングとして手遅れとまではいきませんが、まさに大きな外科的手術が必要というところまで、決断できないことが多いです。
当然、それを少しでも早めて、少しでも手術の程度を軽くする努力も必要ですが、依頼者に寄り添い話を聞いて、依頼者がしっかりと理解して納得するまで、一緒に伴走するということが必要なのでバランスが重要です。
手を打つ際に遅れすぎてしまってもいけないし、早すぎるタイミングで厳しいことを言ってしまうと経営者の方から信頼してもらえない。 専門家として客観的に正しいことや依頼人にとって痛いことを言わないといけないし、そこのバランスの取り方は非常に難しいですね。ですので、まずは信頼してもらい、心を開いてもらうということを意識しています。
専門家と経営者の間で信頼関係がないと、そのあとの抜本的な指定整理や民事再生といった辛く厳しい外科的手術には耐えられません。そういう意味で結果的には、このような関係者との様々な調整をしていて、手を打つのがギリギリのタイミングになってしまうことは多いです。

一般的に事業再生は取り掛かるのが早ければ早いほど良い結果につながるかと思いますが、山崎先生が関わった際に、もう手遅れだなと思うような案件もありましたか?

あります。幸い私が手掛けてこれまで破産になったケースはほとんどありませんが、手遅れになってしまってどうしようもない状態の会社というのは、もちろんありました。ただ、 どんな状態の会社でもスポンサーをつけて、一部分でも承継する。事業として残せるものは残して、できるだけ雇用を残してというように、いわゆるソフトランディングしていくというような形で、可能な限り最善の手を探すということでやっております。

point
  • 本質的な事業再生とは債務カットしていくことではなく、経営自体の立て直しである
  • 依頼者と専門家の間に信頼関係があってこそ超えられる問題も多く存在する

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