【事業再生のカリスマが参入】ブームが去って赤字転落も「俺のシリーズ」がコロナに負けない理由

行列のできる人気店「俺のシリーズ」、コロナ禍の今

行列のできる人気店として「俺の○○シリーズ」は一世を風靡していました。

「俺の○○シリーズ」とは俺の株式会社が運営する一連のレストランのことです。2011年9月、新橋に「俺のイタリアン」をオープンして以来、「俺のフレンチ」「俺の焼肉」などを続々とオープンさせ、高級レストランの味を3分の1の価格で提供することから話題を呼んでいました。

しかしそこに転機が訪れたのは、2020年春から始まったコロナ禍に応じて発出された1回目の緊急事態宣言です。以降、相次ぐ緊急事態宣言やまん延防止等重点措置で飲食店の営業が制限されたことにより、東京・赤坂で営業していた「俺のフレンチ・イタリアン」は2021年3月14日をもって閉店を余儀なくされたのです。

一時期は予約もなかなか取れないほどの人気店だったのですが、コロナ禍にはなすすべもありませんでした。

立ち食いフレンチで一躍ブームが到来した「俺のシリーズ」

「俺の○○シリーズ」レストランは、高級フレンチの味を圧倒的なコストパフォーマンスで味わえる「俺のフレンチ」から一躍ブームとなっています。

高級食材を格安で提供、メディアでも話題に

「俺の○○シリーズ」レストランでは高級食材を格安で提供することから、TV、雑誌、Webなどのメディアで数多く取り上げられるようになり、コンビニの食品とのコラボレーションでも話題になったほどです。

「俺のフレンチ・イタリアン」で話題となったのは原価率300%にもなる「活きあわびと生うにのゼリー寄せキャビア添え」を提供したことです。一般的に飲食店で提供する料理の原価率は30〜40%程度ですので、原価率300%とは一見すると不合理としか思えません。そのメニューを売れば売るほど赤字になるからです。

しかしこの不合理の効果は絶大です。このメニュー自体が話題となり、広告宣伝費をかけなくてもメディアが自ら取り上げてくれるようになるのです。

加えて「立ち食いスタイル」にすることで回転率を上げ、一定のエリアに集中して出店する「ドミナント戦略」を取ることにより、売り上げを高めていきました。

カリスマ経営者として注目を集めた創業社長が逝去

レストランとして型破りな運営スタイルを貫き、話題を集めてきたのは、「俺の株式会社」創業者である坂本孝氏の手腕によるものです。しかし残念ながら2022年1月26日に亡くなっています。享年81歳でした。

坂本氏は「本を売るならBOOKOFF」でお馴染みのブックオフコーポレーション株式会社の創業者でもあります。1990年5月に神奈川・相模原市にBOOKOFF直営1号店オープンして以来、16年間で1000店舗を展開するまでとなり、2004年3月には東証2部上場、2005年3月には東証1部へと指定変更する企業に育て上げました。

不正会計問題などの責任を取る形でブックオフの経営からは外れブックオフ株の大半を売却。手にした資金を使って、2009年には「俺の株式会社」の前身であるVALUE CREATEを設立。2011年から低価格で高級食材を使用したメニューを提供する「俺の○○シリーズ」レストランをヒットさせ、以降、カリスマ経営者として注目を集めていたのです。

「俺の株式会社」の概要と沿革

「俺の○○シリーズ」レストランを展開している「俺の」という株式会社について、その概要や沿革から見ていきましょう。

俺の株式会社の会社概要

社名 俺の株式会社
設立 2012年11月1日
資本金 5,000万円
創業者 坂本 孝
代表取締役会長 松岡真宏
代表取締役社長 木場亮太
本社所在地 〒104-0061 東京都中央区銀座8-3-10 トミタビル7階
電話 03-5537-2630(代表)
従業員数 1,273名(うち社員数433名) ※2019年2月末現在
事業内容 飲食店経営

経営理念等

経営理念 飲食事業を通じての地域社会への貢献
全従業員の物心両面の幸福の追求
六つの精進 1.誰にも負けない努力をする
2.謙虚にして驕らず
3.毎日の反省(利己の反省及び利己の払拭)
4.生きていることに感謝する(幸せを感じる心は“足を知る”心から生まれる)
5.善行、利他行を積む
6.感性的な悩みをしない

事業紹介

俺のGrand Table 銀座歌舞伎座前 by俺のフレンチ 国内1店舗
俺のGrandMarket 銀座歌舞伎座前 国内1店舗
俺のイタリアン 国内10店舗 海外1店舗
俺のフレンチ 国内10店舗
俺のBakery 国内5店舗
俺のスパニッシュ 国内1店舗
俺の割烹 国内1店舗
俺のやきとり 国内3店舗
俺の焼肉 国内3店舗
おでん 俺のだし 国内1店舗
そば 俺のだし 国内1店舗

創業者プロフィール

1940年5月生まれ、山梨県甲府市出身。 カーウォッシャー、オーディオや中古ピアノ、化粧品の販売などいくつかの自営業を経て、1990年にブックオフを創業。16年間で1000店舗まで拡大した。2011年9月、東京・新橋に「俺のイタリアン」をオープン。

人気店「俺のシリーズ」はなぜ赤字に転落したのか?

「俺の○○シリーズ」のビジネスモデルは飲食店としては画期的なものでした。2015年10月期決算では売上高が92億円にも達して、東証マザーズへのIPO(新規株式公開)も視野に入れているほどでした。

しかし、代表・坂本氏の右腕となっていた副社長が辞任し、内部管理体制の不備が見つかったことからIPOは延期となってしまいました。同時に、その頃から「俺の○○シリーズ」レストランブームも下火となりつつあり、不採算店も出現するようになったのです。

立ち食いスタイルで回転率を上げることで高原価率のメニューを提供するというビジネスモデルがうまく回らなくなり、2018年10月期決算では1億円の最終赤字に転落することになりました。

さらにコロナ禍が追い打ちをかけ、2020年10月期決算では12億円の最終赤字を記録するまでになりました。一大ブームを巻き起こした「俺の○○シリーズ」の資金繰りが綱渡りの苦境に陥ることになったのです。

カリスマ再生コンサルによる革新的な再生事業

「俺の株式会社」の資金繰りが悪化したことで、事業再生コンサルティング会社のフロンティア・マネジメントが50%出資した投資ファンド運営企業「FCDパートナーズ」が第1号ファンドとして「俺の」の株式を51%取得しました。

「俺の株式会社」はファンド傘下で再度IPOを目指すことになったわけです。

マーケティング成功で過去最高売上を更新

「俺の株式会社」の2019年10月期決算では、インバウンド向けマーケティングが成功し、過去最高売上高である97億円を記録しています。

しかし翌年からのコロナ禍により、2020年10月期決算では12億円の最終赤字となりました。そこで2020年11月、同社再建のためにフロンティア・マネジメントとFCDパートナーズの代表取締役を兼任する松岡真宏氏が会長に就くこととなりました。

松岡氏はかつて産業再生機構に在籍し、カネボウやダイエーの事業再生に携わるなど、「カリスマ再生コンサル」と呼ばれる人物です。その松岡氏が「俺の株式会社」の陣頭指揮を執ることになったのです。

フロンティア・マネジメントの詳細は以下の記事をご覧ください。

リスケで資金繰りを維持

2021年5月には、それまで同社の代表取締役社長を務めていた寺崎悦男氏が退任。後任として、フロンティア・マネジメントの木場亮太氏が「俺の株式会社」の代表取締役社長を務めることになりました。

その時点で東証マザーズへのIPOという目論見は消えて取引銀行に対して借入金返済のリスケ(リスケジュール)を求め、資金繰りは維持することとなりました。

リスケの詳細は以下の関連記事をご覧ください。

EC・デリバリー事業でコロナに打ち勝つ

コロナ禍による苦境を乗り切るために、「俺の株式会社」では新業態へ積極的に乗り出しています。その最大のものがEC・デリバリー事業です。

コロナ禍になる前には、2020年に開催が予定されていた東京オリンピックに向けて新規出店を拡大する計画を建てていましたが、コロナ禍が広がっていく中で新規出店はいったん控え、2020年5月からEC・デリバリー事業をスタートさせました。

2021年時点でEC事業は月平均3,000万円の売上までに成長しています。最初はパンのECからスタートして、2020年12月には「俺のフレンチ」「俺のイタリアン」の冷凍食品も取り扱うようにしたことで好評を得ることができました。

デリバリー事業に至っては、全店で月平均5,000万円の売り上げを獲得しています。デリバリーの場合、Uber Eatsや出前館などの既存のプラットフォームを利用すると手数料で30~40%取られることになります。

その手数料の問題だけでなく、「お客様に届けるまで最高品質でいたい」という想いから「俺の○○シリーズ」スタッフが責任をもって配達まで行なう自社配達式でデリバリーを行っています。

EC事業、デリバリー事業を合わせてもまだまだ売り上げは大きくはありませんが、コロナ禍に打ち勝つための施策として注目されています。

モバイルオーダーで店内のオペレーションを改善

「俺の株式会社」では既存の「俺の○○シリーズ」店舗でも他店との差別化のためにモバイルオーダーをスタートしています。

同社ではデリバリーやテイクアウトなど、販売チャネルが増えたことにより、店内飲食の対応が手一杯になるようになりました。そこで運用方法の改善を考えモバイルオーダーを導入したのです。

モバイルオーダーは注文時における人的ミスをなくし顧客満足度を上げていくのと、コロナ対策として非接触で対応できることから他店との差別化を図ることができています。

「俺の焼肉銀座9丁目」から導入をスタートしたモバイルオーダーは、現在ではほぼ全ての店舗で活用されています。

事業再生を目指すなら専門家に相談を

「俺の株式会社」は資金繰りが悪化し始めた早期に事業再生のプロが参入したことで、コロナ禍による経営破綻を招かず、資金繰りを維持できることになりました。しかしもし、早期から再生コンサルが入っていなかったら会社自体の存続は難しかったかもしれません。

コロナ禍による資金繰りの悪化の中、事業再生を目指していくのであれば、早いうちに専門家へ相談することをおすすめします。

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