2025年12月24日
中小企業新事業進出補助金は、中小企業庁が2025年度から開始した、新市場への挑戦を後押しする支援制度です。
「いつから始まったのか」「どんな補助金なのか」といった疑問に加え、事業再構築補助金との違いを知りたい方も増えています。
本記事では、制度の目的や公募要領のポイント、補助率・上限額、対象となる新事業の条件まで、初めての方にもわかりやすく解説します。
目次
中小企業新事業進出補助金とは
中小企業新事業進出補助金は、中小企業や個人事業主が既存事業とは異なる新分野へ挑戦する際に必要となる設備投資を支援する制度です。
新市場への進出や新製品の開発など、企業の成長戦略を後押しすることを目的としており、補助率や上限額も比較的高く設定されています。
ここからは、制度の背景となる目的、公募要領の重要ポイント、そして補助対象となる新事業の条件について詳しく解説します。
制度の目的
中小企業新事業進出補助金は、経済産業省・中小企業庁が「既存事業とは異なる新たな事業分野への挑戦を支援する」ことを目的に創設した制度です。新市場進出や高付加価値事業への転換を促し、生産性向上と賃上げにつなげることが狙いとされています。
制度の目的は、中小企業庁の公式解説(ミラサポplus)でも「新しい事業への大胆なチャレンジを支援する補助金」と明記されています。
公募要領のポイント
中小企業新事業進出補助金の公募要領では、補助率・上限額、対象となる新事業の定義、賃上げ要件などが明確に示されています。特に、新市場への進出であることや付加価値額の増加見込みなど、事業計画の妥当性が重視されます。
申請前に要点を押さえておくことで、書類作成の精度が大きく向上します。
主なポイントは、以下の通りです。
- 補助率:1/2
- 上限額:従業員数に応じ最大9,000万円 ※従業員数や枠によって異なります
- 新事業の定義・市場性の確認
- 賃上げ要件(達成で上限額引上げ)
- 付加価値額・売上構成比の要件
補助対象となる新事業の条件
補助対象となる新事業は、既存事業の延長ではなく「新市場への進出」や「新製品・新サービスの提供」であることが求められます。公募要領では、市場性や収益性に加え、最終年度に新事業の売上が一定割合を占めることなど、明確な基準が示されています。自社の取り組みが該当するかを事前に確認することが重要です。
主な条件のポイントは、以下となります。
自社にとって「初めて」の製品・サービスである
既存顧客とは異なる市場へ提供する
新事業売上が最終年度に10%以上
付加価値額が年平均4%以上増加見込み
補助金額・補助率・特例措置
中小企業新事業進出補助金の補助率は一律1/2で、補助上限額は従業員数に応じて段階的に設定されています。さらに、賃上げ要件を満たすことで上限額が引き上がる「賃上げ特例」も用意されており、新事業への積極的な投資を後押しします。
| 補助率 | 1/2(新事業に必要な設備投資などの補助対象経費の50%) |
|---|---|
| 上限額 | 最大9,000万円(特例適用時) |
なお、補助対象外の費用(汎用品、土地、車両、既存設備の修繕など)が含まれる場合、その部分は補助率の計算に入りません。
以下では、従業員規模ごとの上限額と、特例措置の具体的な内容について詳しく解説します。
従業員数別の補助上限額
中小企業新事業進出補助金の補助上限額は、常勤従業員数によって4区分に分かれます。小規模企業でも最大2,500万円と高い水準が設定されており、新事業への大規模投資を後押しする仕組みです。
| 従業員数 | 上限額(通常枠) |
|---|---|
| 20人以下 | 2,500万円 |
| 21〜50人 | 4,000万円 |
| 51〜100人 | 5,500万円 |
| 101人以上 | 7,000万円 |
なお、本補助金には基本となる「通常枠」に加え、賃上げを実施する企業向けに上限額が引き上がる「賃上げ特例枠」が設けられています。
賃上げ特例とは
賃上げ特例とは、最低賃金引上げや給与総額の増加などの賃上げ要件を満たすことで、補助上限額が通常枠より引き上がる優遇措置です。新事業と人材投資を同時に進める企業を支援します。
自社の賃上げ計画や投資規模に応じて、通常枠と賃上げ特例枠、どちらの枠が適しているかを事前に検討することが重要です。
通常枠と賃上げ特例枠の比較を以下の一覧表に整理しました。
| 比較項目 | 通常枠 | 賃上げ特例枠 |
|---|---|---|
| 補助率 | 1/2 | 1/2 |
| 上限額(従業員数別) | 2,500万〜7,000万円 | 3,000万〜9,000万円 |
| 賃上げ要件 | 不要 | 必要(事業場内最低賃金を地域別最低賃金より+50円以上の水準とすること等) |
| 想定される利用企業 | まずは新事業に挑戦したい企業 | 人材投資も同時に進めたい企業 |
どちらを選ぶべきかの判断ポイントは、以下となります。
賃上げ計画をすでに進めている → 特例枠が有利 上限額が大きく、投資規模を広げやすい
まずは新事業に集中したい → 通常枠が適切 要件がシンプルで申請負担が軽い
従業員数が多い企業 → 特例枠の恩恵が大きい 上限額の差が大きくなるため
賃上げ要件の達成が難しい → 通常枠で確実に申請
申請要件と必要な準備
中小企業新事業進出補助金を申請するには、新事業の市場性や収益性、付加価値額の増加見込みなど、複数の要件を満たす必要があります。また、事業計画書や財務資料などの提出書類も多く、早めの準備が欠かせません。
この後、主な申請要件と必要書類について詳しく解説します。
主な申請要件
中小企業新事業進出補助金の申請には、新事業の市場性・収益性に加え、付加価値額の増加見込みや新事業売上の構成比など、複数の要件を満たす必要があります。特に、新市場への進出であることや、事業計画の実現可能性が重要視されます。
以下の要件を事前に確認しておくことで、申請の通過率が高まります。
新市場への進出であること
新事業売上が最終年度に10%以上
付加価値額が年平均4%以上増加見込み
収益性・市場性が客観的に説明できる
補助対象経費が明確である
必要書類
中小企業新事業進出補助金の申請には、事業計画の根拠を示すための書類を複数そろえる必要があります。特に、財務状況や設備投資の妥当性を示す資料は審査で重視されるため、早めの準備が重要です。
以下は、公募要領で求められる主な提出書類の一覧です。
- 事業計画書(市場性・収益性の説明を含む)
- 決算書または確定申告書(直近2〜3期)
- 見積書(補助対象経費の根拠)
- 会社概要書・法人番号
- 賃上げ特例を申請する場合の賃金関連資料
活用事例:どんな企業が使える?
中小企業新事業進出補助金は、業種や企業規模を問わず、新分野への挑戦を目指す幅広い事業者が活用できます。
製造業の新市場参入、個人事業主の業態転換、IT企業の事業拡大など、多様なケースで利用されており、既存事業とは異なる新たな収益源をつくりたい企業に適した制度です。
以下では、実際の活用イメージとして、製造・建築・ITの3つの事例を紹介します。
中小企業が自動車部品製造から半導体装置部品へ新規参入
自動車部品メーカーが、既存の金属加工技術を活かして半導体装置向け精密部品の製造に挑戦した事例です。
新市場での需要拡大を背景に、設備更新や品質管理体制の強化を補助金で実施。高精度加工への転換により、売上構成比の変化と新たな収益源の確立につながりました。
個人事業主の建築業者が木材家具製造に進出
地域の建築業者が、木材加工の経験を活かしてオーダーメイド家具の製造に乗り出した事例です。
新たな加工機械の導入やデザイン開発を補助金で支援し、建築現場とは異なる新市場へ参入。小ロット・高付加価値の家具製造により、事業の安定化と収益の多角化を実現しました。
IT系ベンチャー企業がアプリ開発からECサイト運営へ事業拡大
アプリ開発を主力としていたITベンチャーが、自社の技術力を活かしてECサイト運営事業へ拡大した事例です。
補助金を活用してサーバー構築、UI改善、物流連携システムの開発を実施。アプリ利用者をECに誘導することで、新たな収益モデルを構築し、事業の成長スピードを高めました。
まとめ:新市場への挑戦を後押しする成長投資のチャンス
中小企業新事業進出補助金は、既存事業の枠を超えて新市場へ挑戦する企業を力強く後押しする制度です。
従業員規模に応じた高い補助上限額や、賃上げ特例による優遇措置により、設備投資や新サービス開発などの成長投資を実現しやすくなります。
また、申請要件や必要書類が明確に整理されているため、準備を進めれば幅広い企業が活用可能です。
新たな収益源の確立や事業の多角化を目指す企業にとって、未来への一歩を踏み出す絶好の機会といえるでしょう。
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