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コロナ救済策として導入された劣後ローンとは?
新型コロナウイルス感染拡大への対策として、政府系金融機関からさまざまな金融支援策が打ち出されています。
その1つとして注目されているのが、日本政策金融公庫が実施している「新型コロナ対策資本性劣後ローン」です。
後回しという意味を持つ劣後(れつご)が冠された「劣後ローン」とは、一般的な債権よりも返済の優先順位が低い融資のことを意味しています。
そのなかでも資本性劣後ローンは「資本」的な性格を持った融資となっており、金融機関の審査時には負債(借り入れ)と見なされず、自己資本の一部と解釈されます。
そのため、金融機関からの融資が受けやすくなり、財務を安定させる資本強化を図ることができます。
元金は期日一括返済ですので、元金返済前には利息のみの支払いだけで問題ありません。
返済負担が抑えられるために借り入れ期間中に資金繰りを改善でき、財務基盤の安定を期待することができます。
新型コロナ対策資本性劣後ローンの詳細は以下をご覧ください。
ワタミが新型コロナ対策資本性劣後ローンで30億円を調達!
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、2020年4月から2021年9月にかけ、相次いで「緊急事態宣言」「まん延防止等重点措置」が発出されていました。
これらの適用により、飲食業者には休業や時短営業、酒類提供の自粛といった要請が相次ぎ、営業に対する大きな制限がかけられるようになっていたのです。
居酒屋チェーンを主力事業として展開している大手外食企業「ワタミ株式会社」も例外でなく、売り上げの低迷が続いていました。
2020年4月~6月期の売上高は前年同期比44%減、最終損益は45億円の赤字(2019年同期は6,500万円の赤字)となっていました。
年間業績についても、2020年3月期には売上高909億2,800万円、経常利益3億4,900万円だったものが、2021年3月期には売上高608億5,200万円、経常利益-81億7,100万円と大幅な減収減益を記録しています。
ワタミの業績推移
そこでワタミ株式会社では2020年9月末に横浜銀行から新型コロナ対策資本性劣後ローンで30億円を調達しました。
この新型コロナ対策資本性劣後ローンには資本性があるとみなされますので、借入期間である15年間は全額が資本として認められることとなっています。
ワタミの劣後ローンの流れ
今春にはさらに120億円資本増強
ワタミ株式会社では、新型コロナ対策資本性劣後ローンで30億円を調達した後も、日本政策投資銀行(DBJ)が飲食・宿泊業向けに制定した資本支援策を活用しています。
ワタミ株式会社では、この支援策を初めて活用した企業として優先株の第三者割当増資を実施。
2021年6月には同行から120億円調達を実現しました。
銀行の支援は無担保・無利子などの資金繰り融資が中心となっていました。
しかし新型コロナウイルス感染拡大の影響が長引き、2021年4月25日には発出される予定となっていた3回目の緊急事態宣言で飲食・宿泊業のさらなる苦境が予想されたため、資本支援へと軸足を移したものです。
ワタミ株式会社では2020年9月末には既に劣後ローンで30億円を調達していたことから、資本に影響させることなく、新たな支援を受けることができたといえるでしょう。
アフターコロナを見込み調達資金で業態転換、事業再生へ
ワタミ株式会社では、アフターコロナを見込んで業態転換を図っています。
2022年3月期までには「三代目鳥メロ」や「ミライザカ」といったワタミの主力であった居酒屋320店舗のうち80店舗を焼肉店「焼肉の和民」に衣替えするほか、唐揚げ店「から揚げの天才」の出店を増やしていくことも実施しています。
業績悪化が続いているコロナ禍の中でも、居酒屋から焼肉店や唐揚げ店への業態転換で事業再生が図れたのは、新型コロナ対策資本性劣後ローンにより資金調達ができていたからにほかなりません。
新型コロナ対策資本性劣後ローンは専門家へ相談を
日本政策金融公庫が実施している国民生活事業と中小企業事業に向けた新型コロナ対策資本性劣後ローンにより、コロナ禍で業績に影響を受けた多くの企業が支援を受けています。
このような状況を踏まえ、業績不振からの事業再生を模索する経営者にはぜひ事業再生の専門家へと相談していただき、適切な支援を受けるべきだと考えています。