2021年01月12日
目次
事業再生士とは
事業再生の分野にも資格制度があり、さまざまな団体が運営しています。今回の記事では特に代表的な「事業再生士」、「事業再生士補」、「事業再生アドバイザリー」という3つの資格の特徴や適正、取得方法についてご紹介します。
いずれも受験する上で事業再生を支援するために必要な知識やスキルを学ぶことができ、資格を取得すれば実務に役立てることができます。コンサルタントなど事業再生に関係する仕事に就きたい方必見です。
事業再生士は日本ターンアラウンド・マネジメント協会(TMA)が主催する民間資格で「CTP」とも呼ばれます。事業再生の分野では特に認知度が高い資格です。試験の難易度は高く、実務経験やCTP資格保有者からの推薦も求められますが、その分取得すれば事業再生のスペシャリストとして認知され、大きなアドバンテージとなります。
TMAの公式サイトではCTPについて以下のように説明されている。
- CTP資格者は、事業再生に関して、国際的に通用する高度な知識と経験を有することを証明する。
- CTP資格は事業再生に関する必要かつ十分な知識と経験を有し、再生計画の策定および実行ができ、事業再生実務を行う上での高い職業倫理を有するものに与えられる。
- CTP資格者はTurnaround Management Association(TMA)との協定により、CTP資格者として、米国CTP資格者に準じた業務基準、倫理規定および資格更新規定が適用される。
事業再生士の業務内容
事業再生士の仕事は経営が悪化しているクライアントを支援すること。財務状況等を正しく把握し、課題を発見します。
そのうえで債権者などと交渉して資金繰りの改善などを行いながら事業再生を目指します。場合によっては会社に入り込んで陣頭指揮を取りながら経営者と協働して事業再生を目指すこともあります。
自身では気付けない会社の問題点を見つけ、二人三脚で立て直しを図っていく、経営者のパートナー的な役割と言えます。
こうした方が事業再生士を目指しています
実務経験が求められるため、すでに金融機関やコンサル会社、ファンドなどで事業再生に携わったことがある人が取得するケースが多いようです。また、公認会計士や弁護士、税理士、中小企業診断士などの業務で事業再生に携わり、より専門的な知識とスキルを習得するために取得を目指すという方もいらっしゃいます。
昔から憧れてという人は少なく、社会人経験の中で事業再生に何らかの関わりがあって受験するケースが大多数です。
事業再生士になるためには
事業再生士になるためにはまず資格試験に合格する必要があります。年齢制限や学歴は関係ないため、誰でも受験することが可能です。「経営」「会計・財務」「法律」の3科目で、論文式の筆記試験があり、すべてパスする必要があります。
一般的な資格制度であれば試験に合格した時点で資格が与えられますが、事業再生士の場合はさらに資格審査に合格すること、3年以上の実務経験を積むこと、他の事業再生士3人からの推薦を得てはじめて資格が交付されます。
事業再生士補とは
企業再生士と同様、日本ターンアラウンド・マネジメント協会(TMA)が主催する民間資格で、ATPとも呼ばれます。資格を取得することで、専門知識を活用して事業再生を支援する企業再生士を補佐することができます。
この企業再生士補の上位に企業再生士の資格があり、企業再生士を目指すのであれば、まずはこの資格を取得して知識と経験を身に着けていく必要があります。
TMAの公式サイトではATPについて以下のように説明されている
- ATP資格者は事業再生を行うための基本的な調査、分析および企画・提案のための諸知識を有しており、事業再生士を補助できる能力を有することを証明する。
- ATP資格は事業再生に必要な法律、経営、会計・財務、税務、金融等の一般的な知識を持ち、また事業再生実務を行う上での高い職業的倫理観を有しているものに与えられる。
出典:一般社団法人日本ターンアラウンド・マネジメント協会(TMA)
事業再生士補の業務内容
企業再生士補に求められる役割は企業再生に携わる企業再生士を補佐することです。とはいえ単なるアシスタントではなく、自身も高い経営や財務・会計、法律の知識を保有し、それを活用しながら企業再生士およびクライアントと連携して企業再生という目的を支援していく責任があります。
また、将来は上位資格である企業再生士にステップアップして、企業の再生支援に手腕を発揮できる人材となることが期待されています。
こうした方が事業再生士補を目指しています
企業再生士と同様、金融機関やコンサル会社で企業再生に携わっている人、あるいは弁護士や税理士、公認会計士、中小企業診断士など企業の経営者に近い立場の人が取得する傾向があります。 企業再生士の資格を目指す方が最初のステップとして企業再生士補を取得するケースが圧倒的多数です。
参考サイト:https://www.tac-school.co.jp/kouza_atp/atp_sk_idx.html
事業再生士補になるためには
企業再生士との大きな違いは研修が義務付けられている点です。TMAの認定教育機関で60時間以上の研修を受講して履修証明書の発行を受けることで、はじめて受験資格を得ることができます。
その後資格試験に合格する必要があります。
試験科目は企業再生士と同様、「経営」「会計・財務」「法律」の3科目。択一式の筆記試験に合格すれば企業再生士補の資格が与えられます。
CTP
CTP資格試験
実務経験
資格取得
ATP
CTP資格試験
CTP資格試験
資格取得
事業再生アドバイザリーとは
事業再生アドバイザリー(TAA)は金融協定協会が主催する民間資格です。企業が抱える課題を抽出して分析し、その解決策をアドバイスするプロフェッショナルであり、企業再生士・企業再生士補と同様、企業再生に関する高い知識とスキルを証明する民間資格として知られています。
事業再生アドバイザリーの業務内容
事業再生アドバイザリーに求められる役割は経営者の悩み、特にお金の問題を解消して事業再生を支援することです。
経営者とともに企業の財務状況を分析して返済計画や再生計画を策定し、債権者と調整する。こうしたプロセスを経て事業再生を成功に導きます。
こうした方が事業再生アドバイザリーを目指しています
事業再生アドバイザリーは金融協定協会が運営している資格制度であり、資金調達や融資に関する知識が活かせることもあり、銀行などの金融機関に勤める融資担当者などが取得されるケースが多いです。
事業再生アドバイザリーという職業を目指すというよりは、資格取得の過程で得た知識を活用して銀行員の立場で経営者を支援したいという方が多いようです。
事業再生アドバイザリーになるためには
事業再生アドバイザリーの資格を取得するためには認定試験に合格する必要があります。「事業再生の基礎」「倒産法制」「事業再生可能性判断」「事業再生手法」「再建計画策定」という5科目で、5答択一式の試験となります。
企業再生士や企業再生士補には試験前の研修や実務経験などの受験要件がありましたが、事業再生アドバイザリーの試験は特に要件がなく、誰でも挑戦することが可能です。
事業再生における自身の目的に合わせた資格取得を
たとえばコンサルタントや弁護士、税理士の立場でクライアントの事業再生をサポートしたいのであれば企業再生士・企業再生士補の取得がおすすめです。銀行員として取引先を支援したいのであれば事業再生アドバイザリーの資格が役に立つかもしれません。事業再生に関する資格はさまざまありますが、ご自身の立場や目的に応じてチャレンジしてみましょう。
事業再生でお困りの方は高い専門知識とスキルでサポートしてくれますので、こうした資格を保有している専門家に相談してみてください。
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