『事業再構築補助金』は、コロナにあえぐ中小企業を救えるか?

事業再構築補助金とは

コロナ禍が長引き、収束までの道筋が未だ見えない中、経済産業省の外局である中小企業庁から、2021年7月30日に事業再構築補助金(中小企業等事業再構築促進事業)の三次公募の要領が発表されました。

事業再構築補助金とは、これからのポストコロナ/ウイズコロナ時代に向けた変化に対応すべく中小企業などの事業者が行う事業再構築を支援するために行われている事業です。

本記事では、コロナ禍による影響で経営状況が厳しくなっている中小企業や中堅企業、個人事業主、企業組合などを対象とした補助金事業の詳細を紹介していきます。

企業規模により6つの申請枠を設定

事業再構築補助金は、以下の表にあるように企業規模によって6つの申請枠が設定されています。「売上が減っている」「事業再構築に取り組む」「認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する」という3つの申請要件は全枠どれでも最低限必要となっていますが、最低賃金や雇用従業員数を引き上げたり売上高が大幅に減少したりといった事由で申請できる別枠も設けられています。

申請枠 対象となる企業 申請要件
通常枠 下記以外。下記申請枠で不採択された場合は、通常枠で再審査 1 売上が減っている
2 事業再構築に取り組む
3 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
卒業枠 ①組織再編、②新規設備投資、③グローバル展開のいずれかにより、資本金又は従業員を増やし、中小企業者等から中堅・大企業等へ成長する中小企業向けの特別枠。
グローバルV字回復枠 売上高が15%以上減少しており、グローバル展開を果たす事業を通じて、付加価値額年率5.0%以上増加を達成することを通じてV字回復を果たす事業者向けの特別枠。
大規模賃金引上枠 従業員101人以上の中小企業・中堅企業 通常枠の要件を満たし、かつ事業内最低賃金を年額45円以上引上げ、従業員数を年率平均1.5%以上(初年度は1.0%以上)増員させる
緊急事態宣言特別枠 令和3年の緊急事態宣言により深刻な影響を受けた中小企業等。 通常枠の要件を満たし、かつ一定期間の売上高が対前年または前々年の同月比で30%以上減少
最低賃金枠 最低賃金の引上げの影響を受け、特に業況の厳しい中小企業等
*緊急事態宣言特別よりも採択率優遇
通常枠の要件を満たし、かつ一定期間の最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員数の10%以上 売上高30%以上減少

主要申請要件(通常枠・卒業枠・グローバルV字回復枠共通)

通常枠、卒業枠、グローバルV字回復枠に共通で、大規模賃金引上枠、緊急事態宣言特別枠、最低賃金枠にも最低限必要となる、主要申請枠に必要となる要件概要は以下のとおりです。

売上が減っている

2020年4月以降の連続する6ヵ月間のうち、任意の3ヵ月の合計売上高が、2019年のいずれかの3ヵ月、あるいは2020年1月~3月の3ヵ月の合計売上高と比較して10%以上減少。それと同時に、2020年10月以降の連続する6ヵ月のうち、任意の3ヵ月の合計売上高が、コロナ禍になる前の3か月の合計売上高と比較して5%以上減少

事業再構築に取り組む

事業再構築指針に沿った新分野展開や業態転換、事業・業種転換などへの取り組み。

認定経営革新等支援期間と事業計画を策定する

事業再構築にかかる事業計画を認定経営革新等支援機関と連携して策定。なお、申請補助金額が3,000万円を超えるときには、銀行や信用金庫、ファンドなどの金融機関も加わり事業計画を策定する必要があります。

事業計画については、補助事業終了後の3年~5年で企業の付加価値額が年率平均3.0%(グローバルV字回復枠は5.0%)以上増加を達成するか、従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(グローバルV字回復枠は5.0%)以上増加の達成を見込めることが必要です。

大規模賃金引上枠の申請要件

多数の従業員を雇用しながら継続的な賃金の引上げを行いつつ、従業員を増加させ生産性向上の取り組みをしている中小企業などを対象としている申請枠です。

なお、大規模賃金引上枠で不採択となった事業者でも通常枠で再審査がされます。

緊急事態宣言特別枠の申請要件

2021年に発令された緊急事態宣言によって深刻な影響を受けた中小企業などに対して、補助率を引き上げる申請枠です。なお、緊急事態宣言特別枠で不採択となった事業者でも、加点された上で通常枠として再審査がされます。

最低賃金枠の申請要件

最低賃金引上げのための原資の確保が困難な中小企業などを対象に、補助率が引き上げられた申請枠です。この最低賃金枠は加点措置を行うことで、緊急事態宣言特別枠と比べて採択率で優遇措置がとられるようになっています。

なお、最低賃金枠に申請し不採択となった事業者でも、通常枠で再審査がされます。

各申請枠別の補助金額

申請枠 対象 補助額 補助率
通常枠 従業員20人以下 100万円~4,000万円 中小企業:2/3(6,000万円超は1/2)
従業員21~50人 100万円~6,000万円 中堅企業:1/2(4,000万円超は1/3)
従業員51人以上 100万円~8,000万円
卒業枠 中小企業 6,000万円超~1億円 2/3
グローバルV字回復枠 中堅企業 8,000万円~1億円 1/2
大規模賃金引上枠 従業員数101人以上の中小企業・中堅企業 8,000万円~1億円 中小企業:2/2(6,000万円超は1/2)
中堅企業:1/2(4,000万円超は1/3)
緊急事態宣言特別枠 従業員5人以下 100万円~500万円 中小企業:3/4
中堅企業:2/3

中小企業・中堅企業とは?

事業再構築補助金の公募要領で言う中小企業の範囲とは、中小企業基本法で定義されているものと同様です。

具体的に言いますと、製造業(その他)は資本金3億円以下または従業員数300人以下の企業、卸売業は資本金1億円以下または従業員数100人以下の企業、小売業は資本金5,000万円以下または従業員数50人以下の企業、サービス業は資本金5,000万円以下または従業員数100人以下の企業が、それぞれ中小企業と定義されています。

なお、中小企業の範囲に入らない会社のうち、資本金10億円未満の会社を中堅企業の範囲と定義しています。

補助対象経費

補助の対象となる経費は、本補助事業のためのものとしてはっきりと分けることができる必要があります。また、事業拡大につながるよう、事業資産に対してそれなりの規模の投資をすることも補助対象経費の条件となっています。

たとえば、建物費(建物の建築・改修・撤去や賃貸物件などの原状回復)や機械装置・システム構築費(設備、専用ソフトの購入やリースなど)、クラウドサービスの利用費、技術導入費、知的財産権の関連経費などが補助対象経費として認められています。

なお、一過性の支出と認められる費用が補助対象経費の大半を占める場合には、本事業の支援対象にはなりません

事業計画の策定

事業再構築補助金の申請が採択されるか否かは策定した事業計画を基に審査されますので、合理的で説得力のある事業計画を策定することが必須になります。

そのため、経済産業大臣が認定した認定経営革新等支援機関と相談しつつ事業計画を策定することが求められます。認定経営革新等支援機関には、全国で3万以上の金融機関や支援団体、税理士、中小企業診断士などが認定を受けており、事業実施段階でのアドバイスも期待できます。

認定経営革新等支援機関は、中小企業庁のWebサイトで検索ができます。

補助金支払いまでのプロセス、フォローアップ

事業再構築補助金は、事業者による支出を確認した後に支払われることとなっています。概算払制度も設けられていますが、補助金交付要綱等に基づいて、使い道をしっかりと確認されます。

また、策定した事業計画は補助事業期間終了後もフォローアップされます。補助事業が終わってからの5年間は、経営状況などの年次報告が必須となっており、補助金で購入した設備などは、補助金交付要綱等に沿って厳格に管理されます。

スケジュール

一次公募 二次公募 三次公募 四次公募 五次公募
公募開始 R3.3.26(金) R3.5.20(木)
18:00
R3.7.30(金)
18:00
(未定) (未定)
申請受付 R3.4.15(木) R3.5.26(水)
9:00
R3.8月上旬 (未定) (未定)
応募締切 R3.4.30(金)
18:00(5/7まで延長)
R3.7.2(金)
18:00
R3.9.21(火)
18:00
(未定) (未定)
採択発表 6月上旬~中旬 (未定) (未定) (未定) (未定)

※申請方法の詳細や今後の予定については、事業再構築補助金 サイトを参照ください。

事業再構築の5つのパターン

事業再構築補助金は、事業再構築に意欲のある中小企業などを支援するために行っている事業です。その事業再構築方法としては以下のような5つのパターンがあり、この5つの内のいずれかに該当する事業計画を認定経営革新等支援機関と相談して策定することが必要です。

新分野展開

自社の主な業種あるいは主な事業を変更せずに、新たな製品・サービスなどを生み出して、新たな市場へと進出する事業再構築方法です。

事業転換

自社の主な業種は変更しませんが、主な事業を転換する事業再構築方法です。

業種転換

新たな製品・サービスなどを生み出すことによって、自社の主な業種を変更する事業再構築方法です。

業態転換

自社の製品・サービスなどの製造方法を大きく変更する事業再構築方法です。

事業再編

会社法上の組織再編などを行って、新たな事業形態で、新分野展開や事業転換、業種転換、業態転換のいずれかを行っていく事業再構築方法です。

「八芳園」も通常枠・業態転換型に応募

ブライダル運営企業として、レストランの運営や企業イベントのプロデュース、プライベートブランド販売など様々な事業を展開してきた株式会社八芳園ですが、ブライダル関連市場規模の縮小という危機に直面していました。

それに対して八芳園では、これまで蓄積してきたノウハウを活かし、法人向けのイベントプロデュース事業や地方自治体PR支援事業、公的イベントの運営、レストラン事業などといった事業の多角化に取り組んできていました。

しかし、2020年2月以降から続くコロナ禍により、取り扱い婚礼組数は2019年9月期と比較して48%(792組)の減少、売上高で50%(約43億円)の減少を被ることとなりました。

また、緊急事態宣言による外出や会食の自粛により、八芳園の主力事業である結婚式や法人宴会の客数も激減することとなりました。

そこで事業再構築の必要性を感じた八芳園では、中小企業庁が公募している事業再構築補助金への申請を行うことを決めました。

応募申請した枠は通常枠です。八芳園では緊急事態宣言特別枠への申請要件を満たしていたものの、事業再構築に総額約2億円もの投資をしていく計画でしたので、通常枠の「業態転換型」での申請としています。

八芳園の事業再構築計画とは?

八芳園では主な業種や主な事業は変更せずに事業再構築を行うため、パターンとしては「業態転換」を選択しています。

業再構築は、それまでのイベントプロデュースと食に対するノウハウという強みを活かしたものとなっています。1つは、配膳や清掃などを行うロボットや通信設備などを導入し、オフラインにおいても非接触型のリアルイベントを開催していくものです。

もう1つは、オンラインイベントのシステムを独自開発し外販するというものです。本システムと非接触型リアルイベントを組み合わせることで、オンライン/オフラインのハイブリッド型イベントの開催も可能となります。

さらに、八芳園が独自開発した料理をミールキットにして、オンラインで受注し製造・配送するといった試みも行っています。

八芳園において配膳ロボットの導入が進むことにより、人との接触頻度を減らしコロナ禍に対応できるようになりますし、配膳にかかる人件費の削減にもなります。余剰人員については、ミールキット事業に必要な梱包や配送といった業務への配置転換を進めていきます。

また、清掃ロボットを導入することで業務効率化も実現します。

事業再構築補助金の申請は専門家に相談を

八芳園の事業再構築補助金への申請を見てもわかるように、申請時には、現状の問題点の把握から、具体的な事業再構築内容、そして今後の見通しなどをかなり詳細に提案する必要があります。

このような複雑な申請内容を把握し採択へと持っていくことは、中堅・中小企業の経営者には難しいものがあります。事業再構築補助金の確実な採択を目指すなら、経験豊富な事業再生の専門家に相談をするのがおすすめです。

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