監査法人での経験が活きる「事業再生コンサルタント」とは

2025年05月15日

監査法人から他業種に転職するなら、コンサルタントがおすすめです。これまで培った専門的な知識やスキル、ノウハウ、厳格な会計監査経験を存分に活かすことができます。

本記事では、監査法人からコンサルティング業界へ転職するメリットや、転職先候補となるコンサルファームの種類、事業再生コンサルで活かせるスキル、転職を成功させるポイントを詳しく解説します。ぜひ今回の記事をきっかけに、今後のキャリアを考えてみましょう。

目次

監査法人からコンサルへ──なぜ今「コンサル」なのか

公認会計士資格を取得し、会計監査に従事してこられたキャリアは非常に貴重です。その専門性は帳簿の検証にとどまらず、企業の経営課題を解決に導く力にも転用することができます。

コンサルタントに依頼する企業は財務分析力やリスク管理の提案力を期待しているため、コンサルティング業界では監査法人経験者が即戦力として注目されています。もちろん、スキルが高ければ高待遇も期待できるでしょう。資格と実務経験を次のキャリアで活かすなら、コンサル業界は絶好のフィールドといえます。

監査法人出身者がコンサル業界で注目される背景

監査法人での業務は、膨大な財務データを扱い、内部統制の評価やリスク洗い出しを通じて企業が抱える課題を可視化します。こうした経験により、論理的思考力やデータ分析力、改善提案力が養われます。

コンサルティング業界では、これらのスキルを活かして経営戦略立案や業務プロセス改革、事業再生支援を行うため、監査法人出身者が高く評価されており、多くのコンサルティングファームにとって、監査法人経験者は喉から手が出るほどほしい人材なのです。

監査とコンサルの違いと共通点

監査とは、財務諸表の適正性や内部統制を第三者の立場で評価・検証し、リスクを指摘する業務です。一方、コンサルは、課題解決や戦略立案などを通じて、積極的に企業の成長を支援します。

両者には共通のスキルが求められます。それは、データ分析に基づく論理的思考と、クライアントとの対話を通じて信頼を築くコミュニケーション力です。監査で磨いた基礎力を、コンサルで「提案・実行」フェーズにまで広げられ、よりスケールが大きくやりがいがある仕事ができるようになるでしょう。

コンサル会社には、主にどんなものがあるのか

コンサルティングファームは大きく「事業再生系」「戦略系」「FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー)」の三つに分かれます。監査法人からコンサルタントを目指す場合、それぞれの専門領域や求められるスキルを把握し、自分の強みがマッチするファームを選ぶことが肝心です。以下で各タイプの特徴をわかりやすく解説します。

事業再生系コンサルティングファーム

事業再生系ファームでは、経営危機に直面した企業の財務再建や債権者交渉、再建計画策定を行います。監査法人で培った財務諸表分析力と内部統制評価をベースに、資金繰り改善策や業務プロセスの再構築を提案することで、クライアントに大きく貢献できるでしょう

特に公認会計士や米国公認会計士(USCPA)資格保持者は、即戦力として高く評価されます。深い会計知見で企業を再生へ、そして成長へと導くやりがいが感じられるのが魅力です。

戦略系コンサルティングファーム

戦略系ファームは、企業の長期成長戦略や新規事業開発、海外進出などをサポートします。市場・競合分析、ビジネスモデル設計、組織改革まで幅広い領域に携わるため、論理的思考やマーケット理解が求められます。

監査法人出身者は、数値に基づく精緻な分析力を武器に、経営トップ層とともに経営戦略を策定することで、企業価値向上に貢献できるでしょう

FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)

FASに特化したコンサルティングファームでは、M&Aアドバイザリーや企業価値評価、デューデリジェンスをサポートします。監査で得た財務調査や会計基準適用の知識は、そのまま業務に直結するはずです。

取引対象企業の財務リスクを洗い出し、適切な買収スキームを提案するため、公認会計士資格は知識やスキルを示し信頼を得るツールとして、特に重宝されます。企業買収・再編の最前線で活躍できる点が魅力です。

監査法人で培ったスキルが生かしやすいのは事業再生コンサル

ここからは、特に事業再生コンサルへの転職について深掘りしていきましょう。監査法人での経験は、財務分析だけにとどまらず、内部統制評価からリスク提言まで多岐にわたります。これらのスキルは、きっと再生途中の企業を立て直す現場で即戦力として活かせるはずです。

会計・財務分析スキル

事業再生コンサルでは、資金繰りが悪化した企業の財務データ分析が非常に重要な業務です。これをもとにさまざまな施策の立案や実行をしていかなければなりません。

監査法人で習得した貸借対照表や損益計算書の読み解き方、キャッシュフローの予測スキルを駆使すれば、再建計画に必要な数値モデルを構築できるでしょう。公認会計士やUSCPA資格を保有されているのであれば、ライバルと比べても高い専門性でプロジェクトをリードできるはずです。

財務諸表を深く読み解けるのは大きな強み

監査業務では、細かい勘定科目の動きや会計処理の裏側を毎日のように確認します。この経験があれば、事業再生で重要な財務構造の問題点や収益性低下要因を即座に発見可能です。たとえば、売掛金の回転率悪化や不良在庫の増加など、再建策の策定に欠かせない洞察を提供できるのは、監査法人出身者ならではの強みです

内部統制やリスク管理の知見

監査法人では、企業の内部統制システムが機能しているかを評価し、業務プロセス上のリスクを抽出してきました。事業再生コンサルでは、経営改善の一環として、再生先企業のガバナンス強化や業務フロー見直しを提案・設計する場面が多くあります。内部統制やリスク管理の知見は、再生計画の信頼性を高めるうえで不可欠です

改善提案力として活かせる

監査で指摘した統制不足や不正リスクを改善提案に落とし込む能力は、再生プロジェクトでも大きな戦力となります。たとえば、業務フローの自動化や担当者権限の明確化など、具体的な施策立案を監査経験にもとづいて行えるため、再生先企業の効率化・透明性向上を迅速にサポートできます

クライアントとの折衝・報告スキル

監査法人で上場企業対応に携わられていた方なら、経営層や監査委員会への報告・交渉を数多く経験してきたはずです。事業再生の現場でも、経営トップや債権者との合意形成や進捗報告が日常的に発生します。大企業相手のやり取りで培った資料作成力やプレゼンテーションスキルは、再生プロジェクトの推進に欠かせない要素です

上場企業対応経験が武器になる

監査法人勤務で多数の上場企業を担当していれば、企業規模や組織体制の理解、コンプライアンス対応など、高度な経験を積んでいることでしょう。事業再生コンサルでも、大企業から中堅・中小企業まで幅広いクライアントがおり、上場企業向けの品質水準を現場に持ち込める監査法人経験者であれば、即戦力として大きな信頼を獲得できます

監査法人から事業再生コンサルタントへ転職するメリット

公認会計士資格と監査法人で培った高度な会計スキルは、コンサル市場でも希少価値が高く、転職時のオファー条件や書類選考突破率が飛躍的に向上します。特に事業再生コンサルは、財務改善や再建計画策定に直接かかわるため、監査法人経験者にとっては経験をダイレクトに活かせるフィールドです。ここからは、監査法人から事業再生コンサルに転職するメリットをさらに深掘りして見ていきましょう。

経営に近い立場で働ける実感を得やすい

事業再生コンサルでは、クライアント企業の経営トップと伴走しながら再建策を実行します。監査法人の「チェック」という仕事から一歩踏み出し、「経営支援」に主体的に関わることで、企業の経営に携わっているという実感と大きなやりがいを得られます。長年の経験を活かし、経営者を力強くバックアップできるフィールドなのです。

キャリアの幅が広がりやすい

事業再生コンサルタントとして経験を積むことで、会計・経営・組織改革の総合的なスキルが身につきます。将来的には「会計に強い事業再生コンサルタント」として独立する道や、企業のCFO候補としてスカウトされる可能性もあります

監査法人経験と事業再生スキルの掛け合わせは、キャリアの選択肢を大きく拡げるのです。詳しいキャリアパスについては、以下の記事をご覧ください。

事業再生コンサルタントのキャリアパスを探る。成長のためのアプローチ

監査法人から事業再生コンサルタントを目指す!転職成功のポイントは

監査法人出身者が事業再生コンサルへ転職する際、まずは自己分析と志望動機の明確化が欠かせません。監査業務で培ったスキルを、具体的に再生プロジェクトのどのフェーズで活かすのかを言語化し、面接で説得力あるストーリーを語れるよう準備しましょう。ここからは、志望動機や面接対策の具体的方法を解説します。

志望動機の作り方:スキルの「活用先」を明確に

事業再生コンサル会社に応募する際は、監査法人での経験がいかにプロジェクトに貢献できるかを中心に志望動機を構成します。「財務分析力を活かし、経営危機企業の資金繰り改善に貢献したい」「リスク管理経験を再生計画に反映し、再発防止を図りたい」といった具体例を示すことで、採用担当者に強い印象を与えられます。そのためにも、事業再生コンサルの仕事の内容をしっかりと把握しておきましょう。

事業再生コンサルタントの役割と魅力を徹底解説

面接で伝えるべき経験・強みとは

面接では、実体験と事業再生コンサルでの活用イメージをセットで語ると効果的です。たとえば、「財務分析で収益構造を可視化し、コスト削減案を提案」「内部統制評価で不正リスクを低減し、業務効率化を実現」など、具体的な数値や成果を交えて説明しましょう。また、クライアントとの折衝経験や上場企業対応も強力なアピール材料となり得ます。

選考で差がつく「実務経験の言語化」

監査法人での業務を、「どんな目的で」「どのように実行し」「どんな成果につながったかというストーリーで語れるように準備します。たとえば「連結決算プロジェクトで◯億円規模の損益分析を担当し、翌年度の利益改善に寄与」というように、具体的業務と定量的な成果を明示できれば、説得力が格段にアップします

転職後のリアル:働き方はどう変わる?

監査法人と事業再生コンサルのワークスタイルは異なります。監査はルーティンが中心ですが、コンサルではプロジェクト単位でクライアント先に常駐することが増え、柔軟な対応力やチームマネジメント力が求められます

ときには残業や出張もありますが、経営層と直接やり取りしながら成果を実感できるのが醍醐味です。ここからは事業再生コンサルタントの働き方や待遇変化について、リアルな現実を見ていきましょう。

事業再生コンサルタントは「激務」って本当?

事業再生プロジェクトは短期間で成果を求められるため、タイトなスケジュールが組まれ残業が発生しやすいのは事実です。しかし、その分、クライアントの経営再建に直接貢献する使命感と、達成時のやりがいは大きく、メンバー同士の連帯感も強いのが特徴です。

プロジェクト管理やワークシェアを工夫するファームも増えており、働きやすさ向上の動きも進んでいます

年収・待遇の変化と転職後のキャリア展望

事業再生コンサルは、監査法人時代より年収が大幅にアップするケースが多いです。成果連動型のボーナスやストックオプションなど、報酬制度が充実しているファームもあります。

転職後はプロジェクトリーダーやマネージャーに昇格するにつれ年収が上昇しやすく、将来的なキャリア展望も明るいと言えるでしょう。詳細は「【転職】事業再生コンサルの年収・仕事内容は?」をご参照ください。

まとめ:事業再生コンサルタントとして輝こう!

監査法人で培った財務分析力、内部統制知見、折衝力は、事業再生コンサルタントとして即戦力になるスキルです。今の待遇に不満がある、もっとやりがいがある仕事がしたい、スキルアップやキャリアアップを目指したいという方は、一考の価値があります。

転職を検討される際は、各ファームの求人情報や問い合わせページをチェックし、気になる企業は積極的にエントリーしてみましょう。会計士としての経験や専門性が、企業再建を支える原動力となる日がきっと来るはずです。

以下の記事では数ある事業再生コンサル会社のなかでも、特におすすめの会社を5社紹介しています。ぜひこちらもお読みいただき、転職活動を進めてみましょう。

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