2024年10月28日
会社の経営が困難になった企業や事業に対して、再生と成長をサポートする事業再生コンサルタントと呼ばれる専門家がいます。そこでこの記事では「事業再生コンサルタント」への転職に関心がある人たちに向けて、この職種の年収をはじめ、仕事内容や仕事のやりがい、その職種への適性など、事業再生コンサルのリアルをご紹介します。
目次
事業再生コンサルタントとは?
クライアントの経営課題などを明らかにして、課題解決のための戦略を立案・提言。企業利益の最大化や業績改善を支援し、ときには実行支援まで行う職業としてコンサルタントと呼ばれる専門家がいます。
その職種の中には「事業再生コンサルタント」があります。この事業再生コンサルタントになると、業績が低迷していたり、財務状況が悪化していたりする会社に介入して、事業を立て直し業績が回復するようサポートしていきます。
事業再生コンサルタントは、やりがいが大きく社会貢献性も高い仕事です。また、事業再生コンサルタントの仕事を続けていくことで、高いスキルが身に付き高年収を目指すことができます。
事業再生コンサルタントの年収相場・ポジション
事業再生コンサルタントの平均年収は、20代から30代の年齢で700万円〜1200万円。30歳前後で年収1000万円以上を得ている人も多く、高い給与を得られる仕事です。その理由は、専門知識が要求される職業であることが挙げられます。それが、他業界の職業と比較すると高水準の給与を得られる理由だといえます。
スタート時にはあまり高くない年収の場合もありますが、専門性や経験、実績などを積むことで、高い評価を持つ事業再生コンサルタントになれば、30代半ばで2000万円近くの年収になることもあります。ただしコンサルタントの「専門性、経験、実績」「業務範囲(次項でご紹介します)」「ポジション」などにより、その年収額は大きく変わってきます。
キャリアの職位の順にポジションや年収をご紹介します。
STEP1 アナリスト:年収450万円~600万円
コンサルティングに必要なベース・スキルであるリサーチ業務・資料作成などの経験を積んでいきます。
STEP2 コンサルタント/シニアコンサルタント:年収600万円~800万円
アナリストを3年〜5年程度経験し評価されるようになるとコンサルタントへと昇格します。中途採用であれば、コンサルタントから始まることもあります。
STEP3 マネージャー/シニアマネージャー:年収800万円~1400万円
次は、プロジェクトを監督し責任を持つ立場であるマネージャーへと昇格します。
STEP4 ディレクター:年収1200万円~1600万円
複数案件の最終責任者となり、チームマネジメントや教育・評価といった面でもリーダーシップを発揮するディレクターへと昇格します。
STEP5 パートナー: 年収1400万円以上
最後は、コンサルタントとして最上位の役職であり、コンサルティングファームの役員でもあるパートナーに昇格します。プロジェクトでは、複数案件の最終責任者を務めます。
この5つの分類や役職名は、コンサルティングファームにより異なることもあります。
事業再生コンサルタントの具体的な業務内容
事業再生コンサルタントの業務は、大きく分けて以下のような4つのフェーズがあります。
フェーズ1: デューデリジェンス(現状分析)
デューデリジェンス(Due Diligence、略してDD)とは、事業再生の対象となる企業の現状を詳細に分析し、再生可能性を評価するために行う調査のことです。
DDは、対象企業の財務状態、事業内容、法的リスクなどを多角的に調査し、再生計画策定のための基礎情報を収集する重要なプロセスです。
このDDは、主に以下の3つに分けられます
これらのDDを通じて得られた情報は、事業再生計画の策定、企業価値評価、リスク管理、そして再生戦略の立案に活用されます。適切なDDを実施することで、事業再生の成功率を高め、効果的な再生プロセスを構築することが可能となります。
フェーズ2:新たな事業計画を策定(事業再生計画書・数値計画書)
分析結果で明らかになった現状と課題を踏まえながら、どのように課題を解決し、どのようなスケジュールで財務状況を改善していくか、数値計画書を策定した上で新たな事業再生計画を作ります。
事業にコミットしながら経営者に寄り添うことと、債権者との交渉を同時並行していくのには高い専門性とスキルが必要です。それゆえ、事業再生コンサルタントの醍醐味ともいえます。
フェーズ3:モニタリング
フェーズ2で立てた事業再生計画を実行。実行状況を確認するために、週次や月次、四半期ごとでミーティングを実施し、その結果のモニタリングを行います。事業再生コンサルタントは、経営会議にも参加して管理業務も行います。
フェーズ4:実行支援
事業再生計画の策定やモニタリングだけでなく、企業のリソースが足りない場合には再生コンサルタント自ら事業へ介入し、実行支援を行います。具体的には、事再生対象企業に対して新たなビジネスモデルの導入やコスト削減、内部の組織改革を行うなど、さまざまなサポートを事業再生コンサルタントが手がけます。
どのフェーズまで担うのかはケースバイケース
デューデリジェンスや事業計画の策定は、事業再生コンサルタントにおける基本業務です。またモニタリングや実行支援については、再生を手がける事業者のリソースやコンサルタントの得意・不得意、案件の内容などによって大きく異なっており、年収にも影響があります。
コンサルタントがクライアント企業に常駐し経営に直接関与するモニタリングや実行支援は「ハンズオン型」と呼ばれており、得意な事業再生コンサルティングファームとしては「ロングブラックパートナーズ」と「みそうパートナーズ」などが有名です。
転職先を探すときは、どのフェーズまで担うことになるのか、自分はどのフェーズまで担っていきたいのかを見極めていくことをおすすめします。
事業再生コンサルタントという仕事の魅力・やりがい
ここでは、激務であるのと同時に大きなやりがいを得られるという評価を得ている「事業再生コンサルタント」の働き方をご紹介します。
社会貢献性が非常に高い
事業再生コンサルタントの仕事内容に含まれる「経営危機の事業立て直し」は社会貢献といえます。
事業の悪化による企業業績の低迷や悪化は会社の存続だけでなく、その企業で働く従業員の人生にも関わる大きな問題です。事業再生コンサルタントは、事業立て直しをすることで企業を守るだけではなく、その企業の雇用を守ることで、従業員やその家族の人生までも救うことができます。
また、事業再生コンサルティングのクライアントには日本の雇用の大部分を支える中小企業も多くいます。その中小企業を救うことは地域経済の活性化にもつながっていきます。
クライアントの課題に直接的に関与し、伴走支援できる
世の中は数多くの仕事が存在しますが、自分が関与する仕事によって喜んでくれる姿を直接目の当たりにできる仕事は意外と少ないものです。
その点、事業再生コンサルタントの仕事はクライアントを直接サポートでき、自身の提案や主張が企業の存続につながることは大きな喜びにつながります。また、手がけた事業再生が成功した暁には、大きな達成感をクライアント企業と共有できます。
高いスキルが身につく
事業再生コンサルタントは、事業分野と財務分野の両方を学べるキャリアだといえます。企業の経営を学ぶことができる仕事でもあり、自分の成長を実感しながら市場価値を上げることができます。
企業が抱える課題や現状をヒアリングする際には、クライアント自身も気づかない潜在的な課題を読み取る必要がありコミュニケーション能力を養うことができます。また事業再生コンサルタントは、数値などから価値あるデータを見つけ戦略に活かす必要があるので、高い数値分析スキルも身につけられます。
年収が比較的高い
事業再生コンサルタントは、スキルと経験値を上げることで高年収を目指せる仕事です。一般的な事業再生コンサルティングファームでも、コンサルタントレベルでも年収600万円〜800万円程度になります。マネージャーやシニアマネージャーレベルになれば1,000万円以上の年収を得ることができます。
コンサルティングファームの業務は利益率が高いため、他の職種と比較して平均年収が高くなっています。その分、業務量は多く激務に追われることは肝に銘じておきましょう。
刺激的な環境で働くことができる
事業再生コンサルタントという職業は倒産の危機に瀕している企業の再生に携われるため、コンサルティング自身が金融機関と話し合いを行い、スケジュールや利害の調整を行うほか、債権者との交渉に携わるなど、クライアント企業の命運に関わる刺激的な環境で働くことができます。
また企業の財務や事業の内容に関わりながら、状況によっては資金調達の支援にも関わる仕事であるため、在職中に総合的かつ高度なビジネススキルを磨き上げることができます。
財務分析スキル
事業再生したい企業の効果的な再生計画を策定するためには、バランスシートや損益計算書、キャッシュフローなどの財務状況を正確に把握できる財務分析スキルが不可欠です。
交渉力
企業再生を進めていくには、自身が立案した再生戦略に対してクライアントが納得するプレゼンテーションをしていく必要があります。また、金融機関などの債権者や利害関係者とスムーズに交渉を進めていくには卓越した交渉力も求められます。
コミュニケーション能力
経営者、社員、金融機関、弁護士など、事業再生に関わるステークホルダーは多岐にわたっています。事業再生は、このような幅広いステークホルダーとうまくコミュニケーションしていくことで円滑な情報共有や関係構築が生まれるようになります。
リーダーシップ
事業再生コンサルタントには、事業再生のプロセスをリードし従業員や利害関係者を自身がとりまとめるという強いリーダーシップが必要です。
倫理的思考力
事業再生コンサルタントは、複雑な物事を整理し、筋道を立てて考えるロジカルシンキング(論理的思考力)が必要であり、倫理的判断力が求められます。また、経営者や従業員、取引先など、多くの人々に影響が及ぶ職種であるため、高い倫理観と公正な判断力も必要です。
事業再生コンサルタントは激務ってほんと?
事業再生コンサルタントが激務というのは真実です。以下に、主なその理由を列記します。
プレッシャーが非常に大きい
事業再生では、コンサルタントがクライアント企業の命運を握ることになります。再生の成否がかかっていますから、精神的なプレッシャーもコンサルタント自身にのしかかってきます。
業務の難易度が非常に高い
コミュニケーション能力、情報収集能力、分析力、交渉力など、求められる業務の難易度が高く、複合的な高いスキルが必要とされます。
勤務時間が長い
事業再生コンサルタントの平均残業時間は61時間といわれているほか、時には休日出勤もあるので、定量的に見ても激務と言えます。
しかし、これら以上のやりがいやスキルアップの機会を得られる仕事でありますので、成長を望むビジネスパーソンにとっては挑戦するにふさわしい職種といえるでしょう。
代表的な事業再生コンサルティング会社
事業再生は自社だけでは実現できないことが多く、事業再生コンサルティング会社の力を借りることが重要です。ただし、事業再生コンサル会社選びが事業再生の成否を決めるといっても過言ではありません。そこでここでは、事業再生に強いコンサルティング会社の代表例をご紹介します。
山田コンサルティンググループ
各業界・業種に特化したコンサルタントが多数在籍し、専門性が高いコンサルティングを提供しています。
みそうパートナーズ
企業再生や事業再生を得意とし、経営者に寄り添った柔軟かつ根拠にもとづいた提案が強みです。
AGSコンサルティング
専門性を持った最適なチームを編成し、個人経営から大手企業まで幅広く支援します。
ロングブラックパートナーズ
地域の中小企業をメインに、現場常駐にもとづいたファクトベースの分析をベースに事業再生を支援します。
フロンティア・マネジメント
金融機関に太いパイプを持ち、さまざまな背景がある専門家たちが、幅広いソリューションを提供します。
まとめ
事業再生コンサルタントは、激務ではあるものの、大きな“やりがい”や総合的なビジネススキルのアップを期待できる仕事です。挑戦する価値がありますので、気になる人はぜひ、事業再生コンサルタントに応募してみてください。