
2025年02月28日
監査法人からコンサル業界へ転職する公認会計士は少なくありません。そこで本記事では、公認会計士がコンサル業界で働く魅力や気をつけたいこと、具体的な業務内容などを紹介します。なかでも「事業再生コンサル」という選択肢の魅力をお伝えします。
事業再生系コンサルティングファームでは、財務や税務の専門スキルを持つ公認会計士の入社を歓迎しています。
目次
公認会計士の転職先としての「コンサルティング業界解説」
公認会計士からの転職先はコンサル業界が人気です。その中でも、以下の3つが選択肢として人気があります。
・FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)
財務デューデリジェンスや内部統制の知識を生かせます。
・戦略系コンサルティングファーム
クライアントが抱える経営課題を解決する知識が生かせます。
・事業再生系コンサルティングファーム
キャッシュフローや財務、バランスシートなどの知識が生かせます。
この3職種の中でも、事業分析や改善能力が重視される事業再生系コンサルティングファームは、公認会計士のスキルが必要とされており、採用ニーズも高まっています。実際にコンサルティング業界へ転職する公認会計士も増えています。
公認会計士がコンサル業界ではたらく魅力とは
公認会計士は、監査業務のスキルを持つ会計業務のプロフェッショナルです。そこで公認会計士のスキルを獲得した後にはさまざまなキャリアを選択することができますが、その転職先の1つであるコンサル業界の魅力を解説します。
専門性を活かしたキャリアの広がり
公認会計士の試験に合格した場合、たいていは監査法人に入社をして監査業務に携わることになります。監査のスキルを積んだ後は、管理会計導入支援や決算早期化、IFRS支援などのアドバイザリー業務を行うほか、取引先に出向して経理スタッフとして業務を行う場合もあります。
コンサルティングファームでは会計・財務の専門知識を持つ人材が常に求められており、事業再生やM&Aなどの領域では監査法人で培った経験が直接役立つようになります。
このように、公認会計士が持つスキルがコンサル業界において武器になることで、さらにキャリアの幅を広げることができます。
給与水準の高さ
コンサル業界最大の魅力は、給与水準の高さだといえます。コンサルティングファームのコンサルタントは、経営における広く高度な専門知識と分析力を要する企業の戦略立案や業務改善といった高付加価値な業務を行いますので、高い報酬につながりやすくなっています。
多様なプロジェクト・課題への挑戦がもたらす充実感
公認会計士になってキャリアを積んでいく場合、監査法人で働くことが多くあります。しかし、監査法人で働く公認会計士は、以下のような悩みを持つことが多くあります。コンサル業界を転職先に選ぶ公認会計士が少なくありません。
・地道で単調な仕事が多すぎて、つまらない
監査法人では複雑な業務ではあるものの、決まりきったルーティンワークも意外とあります。そのため、仕事に対して物足りなさも感じる場合があります。
・せっかく難関試験を突破して公認会計士になったのに、やりがいない
公認会計士は仕事柄、クライアントに指摘を行わなければならないため、クライアントから感謝されることは少なく、 仕事に対するやりがいを感じられないかもしれません。
このような悩みを多くは、コンサル業界で働くことで解決できます。コンサルタントは、若いうちから大きなプロジェクトを任されることが多く、それはやりがいと達成感、自己成長につながります。常に新しい知識が求められる仕事ですので、知的好奇心が旺盛な人であれば新しい挑戦ができる環境があります。また、クライアントから直接感謝されることが嬉しいという声もあり、クライアントと喜びを共有できるやりがいもある仕事です。
注意が必要 公認会計士がコンサル業界で働く上でのリスク
このように、コンサル業界は公認会計士の転職先として多くの魅力やメリットがある一方、注意点もあります。ここからは、公認会計士がコンサル業界で働く上でのリスクを3点記載します。
(1)景気変動の影響を受けやすくなる
会計法に基づき、企業の監査を担当する監査法人は景気に左右されない安定した働き方ができますが、コンサルティング業界はそれとは違い、景気変動の影響を受けやすく不安定さを伴う業界です。特にM&Aや事業再生などに関わるコンサルティングファームは、経済状況によって需要が大きく左右される傾向にあります。
しかし、企業が倒産の可能性を感じたときに最初に相談するのは「事業再生コンサル」です。コンサルの中でも「事業再生コンサル」は不況下でこそ需要が高まり、まさに、今ニーズが高まっているコンサルだといえます。
(2)監査法人での業務とは異なるスキルを求められる
公認会計士がコンサル業界に転職した場合、監査法人への勤務で培ったスキルとは、まったく異なるスキルが必要になります。例えば、監査法人と比較すると、より高いコミュニケーション能力や調整能力が求められることがありますので、転職先として選ぶには性格的な向き/不向きがあります。そのほかコンサルタントには、心身のタフさや戦略立案能力、提案力、論理的に説明する能力なども求められます。また、監査法人だけの経験では対応できない課題も多くあるため、分野や場面によってですが、「1からスキルを身に付け直す」という意識も必要です。
ただ、それだからこそスキルアップにもつながりますし、新たなスキルを身につけることで、さらなるキャリアの展開につながる可能性も高まります。このようにコンサルタントは、公認会計士とは別物の職業と考えた方が良いでしょう。
(3)ワークライフバランスの難しさ
コンサル業界はクライアントサービスですので、社内におけるマネージャーによるレビューや、クライアントへの報告などが続くほか、突発的に繁忙期に入るのも珍しくありません。そのためコンサルタントは激務だと言われています。
そのため、コンサルティングファームで働いていると長時間労働になりやすく、ワークライフバランスを保つことが難しい場合があります。
主なコンサル業界の種類・会計士が担う領域
公認会計士の転職先の選択肢として考えられる、冒頭で紹介した3つのコンサル業界とその特徴を詳しくご紹介します。
(1)戦略系コンサルティングファーム
戦略系コンサルティングファームは、クライアント企業の経営戦略立案や組織改革を担っています。戦略系コンサルティングファームへ転職をすると、公認会計士としての財務分析に関するスキルが大いに役に立ちます。クライアントは大企業である場合も多く、コンサルタントとして働くことで社会に大きな影響を与えられるのも醍醐味といえます。
<主な業務>
- 企業の現状分析(財務データや市場動向の調査など)
- 経営戦略の策定(新規事業立ち上げ、成長戦略、コスト削減プランなど)
- 組織改革の支援(組織構造や人事制度の見直しなど)
(2)事業再生系コンサルティングファーム
事業再生系コンサルティングファームは、経営危機にある企業(主に中小企業)再建の支援業務を担っています。事業再生の場面では、財務分析力や収益改善提案能力が重要ですので、財務分析や経営改善提案など、公認会計士としての専門性を発揮しやすいコンサルです。「経営的なスキル」を磨ける点も魅力といえます。
<主な業務>
- 財務・事業デューデリジェンス(財務状況の調査・分析など)
- 再生計画の立案(収益改善やコスト削減策の提案など)
- 金融機関との交渉支援(リスケジュールや債務整理など)
- 再生後のバリューアップ支援(業績向上施策の実行支援など)
(3)FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)
FASはM&Aや財務関連の専門的なアドバイスの提供を担っています。財務に関する深い知識と経験が武器になるため、監査法人での経験をそのまま活かしやすいコンサルです。
M&Aにおける財務DDや企業価値評価は、公認会計士としてのスキルが不可欠です。特に複雑な財務構造や税務問題に対応するときには、監査法人で獲得したスキルが大きな強みとなります。また、不正調査を意味するフォレンジックにおいては、内部統制やリスク管理に精通している点が評価されます。
20代で転職することが望ましいとされている戦略系コンサルティングファームとは異なり、年齢による転職の壁は低いといえます。
<主な業務>
- M&A支援(買収対象企業の財務デューデリジェンス、企業価値評価など)
- フォレンジック(不正リスク評価、不正防止策立案など)
- 事業再編サポート(組織再編や資本再構築など)
今、事業再生コンサル業界が活況! 人材採用も活発化している
近年、事業再生コンサルタントの需要は拡大を続けています。それにともない専門知識を持つ人材の需要も伸び続けていますが、そのなかでも、公認会計士は有利といえます。
事業再生コンサル業の市場動向
2008年に発生した世界規模の金融危機であるリーマン・ショックや、2011年に発生した東日本大震災による経済損失、2020年に発生したコロナ禍の影響や2022年のウクライナ侵攻に端を発する原材料・エネルギーコストの上昇など、多くの企業がダメージを受けた出来事に伴い、経営状態が悪化している中小企業が増加していることから事業再生コンサル業界の需要は高まっています。
不況下でこそ需要が高まる事業再生コンサルは、日本の人口減少による人手不足と相まって、今後ますます需要が高まっていくことが予想されます。
ニーズが高まる事業再生コンサルタントにおいて、会計士は有利
数字を読むだけでなく、その意味を理解できるスキルを持つ公認会計士は、1次データの数値を示して説明しクライアントにも理解しやすい説明ができますので、事業再生コンサルタントとして有利だといえます。特に、会計監査の場面では、企業の財務状況や業務フロー、内部統制、事業計画、資金調達などを多角的に把握し説明できる公認会計士は有利であり、活躍の場があります。
事業再生コンサル業界で働く会計士の年収相場・水準
事業再生コンサル業界で働く公認会計士は、コンサルティングファームの規模により年収に多少の違いはあるものの、おおむね前職と同水準の年収と考えておいて問題はありません。
ただ、大規模な事業再生案件を手掛けるような大手コンサルティングファームの場合には、高めの給与を提示されるケースもあります。
転職先では、あなたのスキルや前職の年収に応じて給与が決まる
公認会計士が事業再生コンサルに転職したときには、前職の職位と年収に準じて年収が決まるケースがほとんどです。入社後に年収を上げていきたいときには、コンサルタントとして高度な解決力や課題解決力を磨いて、役職を上げていくことを目指しましょう。
事業再生コンサル業界において、会計士が担う役割・業務について
事業再生コンサル業界において、公認会計士は監査・会計の専門家として以下のような仕事を手掛けます。
- クライアント企業の経営課題を特定する
- 事業再生戦略となる目標を共有化する
- 事業再生プランを作成する
- 事業を安定化し黒字体質へ転換させる
- 変動費の削減や生産性の向上により利益率を高める
- ビジネスモデルを見直し売上を増加させる
事業再生コンサル業界に合う人材とは
以下のような資質を持っている人は、事業再生コンサル業界に合う人材です。
- 人や企業を助けたいという情熱と共感力がある人
- 冷静な問題解決スキルを持つ人
- 財務やデータの分析できる人
- 高いコミュニケーション能力を持つ人
- 激務に耐えうる心身のタフさがある人
ベストマッチする人材像
事業再生コンサル業界にベストマッチする人材像はこんな人です。
- 高いプレッシャーとストレスにもまれて働くことになってもストレス耐性が高い人
- 事業再生に関する法律や制度は常に更新されるために、最新の知識や情報を自ら学び続けるマインドを持つ人・学習意欲が高く向上心がある人
- 困難な状況でも冷静に問題解決に取り組める人
- 予期せぬ問題や困難が発生しても、目標に向かって進み、投げ出さずに仕事を遂行できる人
- 分析力と論理的思考力が高い人
- 財務・事業の分析能力が高く、論理的に問題を解決できる人
- コミュニケーション能力が高い人
利害関係者との調整ができる調整能力や経営者に提案するためのプレゼン能力がある人
マッチしない人材像
逆に以下のような人材像は、事業再生コンサル業界にマッチしません。
- ストレス耐性が弱い人
- 変化や学習を好まない人
- 困難な状況下において、すぐに諦めてしまう人
- 利害関係者との調整や提案が苦手な人
まとめ
公認会計士として培ってきた専門性やスキルは、コンサル業界でも十分通用します。しかし、コンサル業界で勝ち抜いていくためには、新たなスキルの習得や働き方への適応も必要です。自身の強みと弱みを客観視し、自分に合ったキャリア選択を行うことが成功への鍵となるでしょう。