2024年10月21日
この記事では、事業再生コンサルタントの業務内容や必要なスキル、キャリアパスやステップアップについて詳しく紹介します。
事業再生コンサルタントへの転職を検討している方や、関心がある方はぜひ、お読みください。
目次
はじめに:事業再生コンサルタントとは
事業再生コンサルタントはその名のとおり、事業の再生を担う仕事です。
従事するなかで、企業と財務の専門知識が身に付くキャリアパスとして注目を集めています。社会貢献度も非常に高く、人気の職業です。
事業再生コンサルタントの基本的な役割
事業再生コンサルタントは、経営が厳しい企業を再生するスペシャリストです。
コスト削減や収益改善のための戦略立案、投資者との交渉、資金調達の支援、組織改革など、企業が持続可能な経営に戻るためのサポートを行います。事業を整理する、継続の道筋を明確にするといった役割も担います。
各種コンサルタントや金融関連の仕事に就いていた人が、ネクストキャリアとして選ぶことが多い仕事です。
事業再生が社会に与える影響
事業再生コンサルタントは企業の再建を目指すことで、社会に大きな影響を与える職業です。
経営困難に直面した企業が再生して雇用の維持が図られることで、多くの従業員の仕事とその家族の生活を守り、地域社会の安定にも貢献するでしょう。
企業が再び成長すれば税収が増加し、経済の活性化にもつながります。
危機を乗り越えた企業が持続可能な経営を続けることで、新たなビジネスチャンスやイノベーションが興り、産業全体の競争力向上が期待できます。
事業再生は企業の救済を通して、社会全体の発展を目指す重要な役割を担っているといえるでしょう。
事業再生コンサルタントの日常
事業再生コンサルタントの業務は、日常的なものだけでも多岐に渡ります。
担当する企業によって、さまざまなスキルや経験が求められます。豊富な経験を積むことで、次のキャリアパスも広がっていくでしょう。
事業再生コンサルタントの日常業務は、5つのステップに大別できます。
これらのステップに付随して、案件ごとにさまざまな状況に対処しなければなりません。臨機応変な対応や、チームワーク力などが問われるでしょう。基本的な5つの業務について、ご説明します。
各種調査・分析
コンサルタントへ事業再生を依頼する企業は、何らかの困難に直面しています。こうした企業の置かれている状況を調査・分析することが仕事のファーストステップです。
主には、負債金額や現状の資産価値、お金の流れなどを精査します。
再生計画
調査・分析を通して企業の全体的な状況を把握し、その企業が事業を再生するための計画をたて、どのように計画を実行するかプランを練ります。
コスト削減や経営改善、人材の配置転換・最適化などが課題になることが多いでしょう。
銀行など、金融機関との交渉
再生計画がある程度具体化した段階で、金融機関との交渉に入ります。
計画がプラン通りに進むよう、金銭面の交渉を行うのも大事な業務のひとつです。
借金の返済期日を延長したり、返済金額の変更交渉を行ったりすることで、クライアントの財務体制改善を目指します。
実行支援
再生への道筋をたててお金の問題に道筋をつけたら、事業再生計画を軌道に乗せ、見守るフェーズに入ります。
必要な時は調整をしつつ、クライアントとともに1日も早い事業再生に取り組みます。
危機的状況にあった企業が再び、持続可能な状況に戻るには長い年月がかかるケースが多いでしょう。
交渉や計画実行時にはタフなコミュニケーションも必要
事業再生コンサルタントは経営が厳しくなり、苦しんでいる企業の経営者に声がけをし、一緒に再生の道を歩む仕事です。株主や銀行などとの交渉も必要になります。
関係者皆から合意を取り、同じ方向を向いて事業再生に取り組んでもらう気持ちを育まなければなりません。
強い決断力や統率力で臨む現場が常ですし、ときには修羅場もあるでしょう。
あらゆる状況に対応する強い精神力も、事業再生コンサルタントに必須のスキルといえます。
事業再生コンサルタントのキャリアパスについて
事業再生コンサルタントとしてのキャリアパスには明確な資格要件がないため、個々の専門知識や経験がモノをいいます。
金融や経済分野での実務経験をもとに、他のコンサルタント職や金融機関から事業再生コンサルタントへ転向するケースが一般的です。
現役の事業再生コンサルタントには、どんなキャリアを経た人が多いのか
現役の事業再生コンサルタントには、幅広いキャリアパスを持つ人材が目立ちます。
例えば、戦略コンサルティングや業務コンサルティングの経験者、さらには金融機関での融資業務や経営支援の経験を持つ人などです。
特に、財務分析や事業分析の能力が求められるため公認会計士や税理士、中小企業診断士といった資格を保有している事業再生コンサルタントも少なくありません。
また、事業再生の分野では戦略的思考力やコミュニケーション能力なども重要です。経営課題の解決や業務改善に携わってきた方は、そうした経験が活かされるでしょう。
未経験でも事業再生コンサルタントになれる?
未経験でも、事業再生コンサルタントになることは可能です。
確かに、事業再生コンサルタントは高度な財務分析や経営戦略の知識を求められますが、必ずしも、そうした分野の経験が必要というわけではありません。
資格取得や研修を通じて専門知識を身につけることで、新しいキャリアパスを開拓できるでしょう。
事業再生コンサルタントの仕事をするうえで、あると役立つスキル
事業再生コンサルタントとしてのキャリアパスを歩むためには、知識や経験に加えて資格などもあることが望ましいです。
このセクションで挙げる財務分析・事業分析・戦略的思考・コミュニケーション能力の4つは、そうしたスキルの土台になりうるでしょう。
これらの能力は、事業再生コンサルタントの仕事をするうえで、どのように活かせるのでしょうか。
財務分析能力
事業再生コンサルタントにとって、財務分析能力は欠かせません。
企業の経営状況を正確に把握するためには、財務諸表の読み解きや収益性、資金繰りなどの指標を分析することが必要です。
財務分析の能力をふまえ、債務整理やコスト削減など、具体的な再生策を提案する場面もあるでしょう。
さらに、クライアントが直面するリスクを見極め、最適な財務構造を構築するために、財務分析の能力は大きな強みです。事業再生の根幹を支える力ともいえるでしょう。
事業分析能力
事業の強みや弱みを分析し、どの部分に手を入れ、どの部分を維持するかを見極める事業分析能力も重要なスキルのひとつです。
単に財務面だけでなく市場環境や競合の動向、社内の組織運営状況などを広範に調査し、クライアントのビジネスが抱える問題点や成長の可能性を見出すことが求められます。
具体的な事業再生計画を策定し、持続可能な成長への道筋をクライアントに示すために、必要な能力といえるでしょう。
戦略的思考
戦略的思考も事業再生において、全体像を見据えたうえで適切な施策を考え出すために必須のスキルです。
事業の問題点を解決するさいには、どのリソースをどのタイミングで活用すべきかを計画し、短期的な改善策から長期的な再生戦略までを構築します。現場では限られた資源や時間の中で最適解を導く必要があり、柔軟かつ論理的な思考が欠かせません。
実現可能で効果的な再生プランを提示するために、柔軟な戦略的思考力が常に求められるでしょう。
コミュニケーション能力
事業再生コンサルタントは、クライアント先の経営陣や従業員、取引先など多くの関係者と円滑に連携する必要があります。
そのため、適切な情報共有や意思疎通を図るコミュニケーション能力が欠かせません。特に、経営層に対しては専門的な提案をわかりやすく伝え、従業員に対しては改革の意図を理解してもらうことが重要です。
関係者を巻き込み、協力を得ながら事業再生を進めるためのコミュニケーション能力があれば、事業再生コンサルタントにとって強力な武器になるでしょう。
事業再生コンサルタントに必要な資格や専門知識5選
事業再生コンサルタントの業務では法律や経理、会計方面の資格があると、役立つ場面が多いでしょう。
特に、以下に挙げる5つは社会的信頼度も高く、望ましい資格・専門スキルの代表格といえます。
公認会計士
公認会計士は、会計や経理に関する高度な知識を持つ専門家です。
事業再生の場面では企業の財務状況を正確に評価し、改善策を提案するために、公認会計士の資格は大いに役立ちます。
特に、債務整理やコスト削減など金銭面のアドバイスにおいて、信頼性の高い提案を行えるのが強みです。さらに、財務リスクを最小化するための具体的な施策を構築するうえで、公認会計士の知見は重宝されるでしょう。
税理士
税理士は企業などの税務処理を担当し、適切な節税や税務戦略を策定する専門家です。
事業再生の過程において、税金負担の最適化や税務リスクの軽減が必要となる場面で、税理士の資格が力を発揮します。
税理士資格がある事業再生コンサルタントは税務調査時の対応や、再生計画に沿った税務戦略の策定も可能です。税理士のスキルもまた、事業再生の成功に寄与するでしょう。
中小企業診断士
中小企業診断士は、経営改善のためのコンサルティングを行うパイオニアで、事業再生においても重要な役割を果たします。経営戦略や事業計画の見直し、改善提案を行う能力は、特に中小企業の再生において有効です。企業の内部分析や市場環境の把握をもとに具体的な改善策を提示し、経営の健全化をバックアップします。
幅広い知識と分析力を持つ中小企業診断士の資格も、事業再生コンサルタントにとって非常に有用といえるでしょう。
弁護士
事業再生のプロセスでは法的な手続きが必要な場面も多く、弁護士の資格は非常に有用です。
債権者との交渉や法的手続きを円滑に進めるためにも、法的な知識と経験が求められます。また、事業再生に伴う契約の見直しや労働問題、会社法に基づく手続きにも対応できるため、弁護士のサポートは事業再生の成功を後押しします。
コンサルタント自身が弁護士資格をもっていれば、法律の専門知識を駆使してリスクを回避しながら事業再生を進められ、クライアントにも力強い印象に映ることでしょう。
MBA(経営学修士)
MBA(経営学修士)は経営戦略や財務、マーケティング、人材管理など、企業経営に関する総合的な知識を示す学位です。
事業再生コンサルタントとして企業全体の戦略を見直し、組織の再構築や市場での競争力を高めるための助言を行う際に、MBA(経営学修士)の知識は非常に役立ちます。
企業の再生計画を策定する際などに、MBAで培った経営全般に対する深い理解が、実行可能な戦略立案を支える基盤となるでしょう。
事業再生コンサルタントの現状と将来性
事業再生コンサルタントとして働く場合、コンサルティング会社などに所属し、社内チームワークをベースに仕事をするのが基本です。
経験を積んだあとは自ら事務所を構えたり、フリーの事業再生コンサルタントとして複数の企業と繋がりをもって働くことも視野に入るでしょう。
では、事業再生コンサルタントの第一歩を、どのように踏み出せばいいのでしょうか。
大手コンサル会社に属するか、それとも中小か
事業再生コンサルタントを目指すことを検討し始めたらまず、どんなコンサルティング会社で、求人募集をしているかを把握するところから始めましょう。
就職先の可能性としては、さまざまなコンサルティングを請け負う大手コンサル、または事業再生に特化した中小のファームが挙げられます。
「事例で学ぶ 事業再生のリアル」で推奨するのはこちらの、5つのコンサルティング会社です。下記求人ページのリンクから募集要項がみられます。それぞれ比較して、ご自分にあった事業再生コンサルタントの仕事を探してみてください。
今後についての展望
高齢化社会をむかえた日本では、売上は安定しているのに後継者がおらず事業を譲渡したり、それも難しければ廃業という選択を選んだりする老舗企業が増えています。
そうした市場ニーズを考慮すると、事業再生コンサルタントは今後、必要な場面が増える仕事といえるでしょう。
希望の転職先が見つかれば、チャレンジしてみる価値は十分にあるといえます。
事業再生コンサルタントの給与について
就職するコンサル会社や保有している資格など、さまざまな条件によって、事業再生コンサルタントの給与には幅があります。
とはいえ、コンサルタントと名乗る仕事です。初任給から、ある程度の報酬が期待できる仕事といっていいでしょう。
初任給・年収の目安
事業再生コンサルタントとして就職すると、多くのコンサルティング会社ではまず「アソシエイト」と呼ばれるポジションを与えられます。
経験を積むことで報酬はアップしますが、初任給では500〜600万円前後が相場です。
業界全体の給与相場について
事業再生コンサルタントの年収目安は、下記の通りです。
アソシエイト(一般) | 600~800万円前後 |
---|---|
マネージャー(班長) | 800~1,200万円前後 |
ディレクター(責任者) | 1,000~1,500万円前後 |
パートナー(経営者) | 1,500万円以上 |
これらに加えて「アソシエイト・マネージャー」「シニア・ディレクター」といった中間的な役職を設けているところもあります。
コンサルタント会社に雇用される立場で働く場合は、安定した収入が得られる仕事といえるでしょう。
事業再生コンサルタントに転職するためのステップ
事業再生コンサルタントに転職しようとするとき、まずどのような準備をして、どんなステップを踏めばいいのでしょうか。
転職市場では、どのようなキャリアパスが評価されるか
戦略コンサルタントや業務コンサルタントなど、各種コンサル経験者なら、事業再生コンサルタントとして採用される可能性が高いとみていいと思います。
採用側としては、何らかの形で企業等のコンサルタントをしている素地があれば「事業再生コンサルのノウハウを身につける力がある」と判断するケースが多いでしょう。
転職を成功させるためのポイント
必ずしもコンサル経験者でなければ、事業再生コンサルタントになれないわけではありません。能力や熱意があれば、可能性は十分あります。
就職を成功させるためには求人を探すとともに、必要な知識の習得や職業研究を地道に行ってください。可能なら、資格取得も視野に入れましょう。
転職の成功事例と転職後のキャリア形成
事業再生コンサルタントとしてスタートを切る人の経験や年代は幅広く、前職の経験を活かしてステップアップをする人もいれば、ゼロに近い状態からスタートする人もいます。
事業再生コンサルタントして転職するには
他業種からの転職でも、やる気をアピールすることで事業再生コンサルタントとして、内定を勝ち取る人は多くいます。
未経験からの転職では、例えば「担当セクションを超えて幅広く事業の可能性を探り、企業全体を持続可能な方向へ導く立場に魅力を感じた」「本来なら、なくなってしまう運命の企業に新しい可能性を見出したい」といった志望動機がみられます。
熱意が伝われば、未経験でも事業再生コンサルタントとしてのキャリアパスを歩める可能性は大いにあるでしょう。
事業再生コンサルタントの次のステップは
経営の立て直しを実務で行う事業再生コンサルタントは、ネクストキャリアも多様です。
他の金融・経営分野へのキャリア展開をはじめ、経営者として企業に採用されたり、フリーランスでベテラン事業再生コンサルタントとして活躍する道も考えられます。汎用性の高い知識と経験が得られる仕事ともいえるでしょう。
まとめ:事業再生コンサルタントの魅力
事業再生コンサルタントの魅力は何よりも、高い社会貢献性にあります。経営が厳しい企業を立て直すことは、雇用を守り、経済を支えるという大きな責任を伴う仕事です。困難に直面する企業や経営者をサポートし、再び成長軌道に乗せることで、多くの人々の生活を支え、社会全体に大きなインパクトを与えます。
事業の再生を成し遂げたときの達成感は、何ものにも代えがたいでしょう。もしあなたが自分のスキルや経験を活かし、社会に貢献したいと考えているなら、勇気をもって事業再生コンサル業界に飛び込んでみてください。
挑戦を恐れないあなたの思いは将来、きっと多くの企業を救うことでしょう。