2024年09月05日
この記事では、事業再生コンサルタントの仕事に焦点を当てて業務内容や求められるスキル、キャリアのステップアップについて詳しく解説。転職を考えている方や、事業再生コンサルタントの業務に興味を持つ方に役立つ情報をお届けします。
目次
事業再生コンサルタントとはどんな仕事か
事業再生コンサルタントは、経営難や市場の変化などで存続リスクが高まった企業などを再建する専門家です。多くは、事業再生コンサル会社に所属しています。
客観的な立場で、クライアントが抱えるお金の問題や経営課題を分析し、再生計画を策定・実行する役割を担います。そして、成長の軌道に乗るところまでを見届ける仕事です。
年収1,000万円以上も目指せるコンサルタントとして、戦略・業務・金融等各種コンサル経験者をはじめ、金融機関で融資業務に携わっていた人などが目指す職種として人気があります。
主なクライアントと具体的な業務
事業再生コンサルタントは「業績不振等で資金繰りが厳しくなり、金融機関からの借り入れが増えて返済に困っている」といった企業・団体などの経営陣が主なクライアントです。
担当するクライアントが決まり次第、現状分析や金融機関との折衝など、具体的な業務に移ります。
現状分析
まず、現状分析と問題点の洗い出しを行います。これらは、事業再生スタート時の重要な工程です。
このステップでは資金繰りの状況や業務効率、組織が抱える問題などを全面的に精査し、解決すべき課題を明確にします。負債の状況、資産の価値、収益性、キャッシュフローなど、企業の財務状況を正確に分析します。
事業再生計画作成
並行して、クライアント企業の事業内容や競合他社などを把握し、それらの結果に基づいて再生のための戦略やアクションプランを策定。
具体的にはコスト削減や財務、経営、事業改善、人員配置の最適化などの計画を立てます。
金融機関との折衝
金融機関との交渉も重要な役割の一つです。企業の再生を進める中で、当面のリスクを軽減するために、金融機関と協議を行います。
具体的には、返済スケジュールの変更や、追加融資、返済額の見直しなどの交渉を行い、財政面でのリスクを減らします。
実行支援
再生計画に基づき、計画を実行します。その後は再生計画の進捗をモニタリングし、必要に応じて調整を行います。再生が完了するまで、クライアントと密に連携します。
プロジェクトによって実行支援の頻度・期間などは若干異なってきますが、クライアントと共に長い道のりを歩む仕事が大半でしょう。
事業再生コンサルタントに求められるスキル
事業再生コンサルタントとして仕事をするには今までの経験で培った知識、能力に加えて人柄、場合によっては資格も求められます。
転職を考えている方の場合は、現在持っているスキルがどのように活かせるか、このセクションで確認してみましょう。
財務分析能力
事業再生コンサルタントには、企業の財務状態を正確に把握し、適切なアドバイスや金融機関との交渉などを行うための高度な財務分析能力が求められます。
クライアントの資金繰りや収益性を評価し、改善策を提案するために、財務分析能力(財務デューデリジェンス)や事業分析能力(事業デューデリジェンス)が必要です。
事業再生コンサルタントとして活躍する人のなかには、公認会計士や中小企業診断士、税理士の資格者も多くいます。企業の財務データを分析し、最適な再建策を策定するための専門知識を備えていれば、経営危機にある企業をサポートする力強い存在になれるでしょう。
事業分析能力
企業の再生を成功させるためには、クライアント企業の事業内容を詳しく分析する力が求められます。
経営状況に加えて事業モデルや商品・サービス力、コンプライアンス対応など、経営・事業全般を客観的に俯瞰し、分析します。
例えば、過去にコンサルタントとしてクライアント企業の事業戦略等の計画をバックアップしてきた経験がある場合などは、そのスキルを活かせる可能性が高いです。
事業分析の知識に加えてこうした経験がベースになれば、クライアント企業をよりサポートしやすくなるでしょう。
戦略的思考
事業を再生させるためには目先の課題解決だけでなく、長期的な視点での戦略も非常に重要です。企業が抱える根本的な問題を見極め、持続可能な成長を実現するための道筋を描くことが求められます。
そのため、過去に所属企業で経営戦略を担当した経験などがあれば、再生計画の策定において大きな強みになります。こうした経験は経営方針の見直しや新たな市場開拓の戦略等が提案しやすく、企業を再生するだけでなく、長期的な成功への支援につながります。
変化の激しいビジネス環境において、戦略的思考と実務経験を兼ね備えたコンサルタントは、まさに事業再生の専門家としてふさわしい人材です。
コミュニケーション能力
クライアントの事業再生計画を成功させるためには経営陣はもちろん、金融機関など利害関係者とのコミュニケーションが不可欠です。良好な関係を築ければ、再生計画の具体的な内容を共有し、同じ方向を向いて取り組めます。
同時に計画を経営陣や従業員に納得させ、実行に移すためのリーダーシップも必要です。強い意志と説得力をもった、頼られるリーダーとしてチームを鼓舞できれば、計画を実行に移しやすくなります。
こうした資質は、事業再生の成功に大いに役立ちます。
事業再生コンサルタントが保有している資格
法律や会計、経理などの専門資格があれば、より専門的な知識と信頼性を高めることができます。
以下の資格を保有している、事業再生コンサルタントは経験に基づいたコンサルをしてくれる可能性が高いと言えます。
また、転職を考えている方にも有利な資格になっています。
公認会計士
公認会計士の資格があれば企業の財政状況を正確に分析し、適切な財務健全化計画を策定できます。
社会的な信頼性が高いので、投資家や金融機関との交渉も有利に進められるでしょう。
また、会計・税務の専門知識が企業の健全な運営をサポートし、長期的な成長を促すことにもつながります。
税理士
財政が逼迫した企業にとって、節税はキャッシュフロー改善に不可欠です。税理士は税の専門知識を活かし、企業の税負担を減らすことができます。
中小企業診断士
企業と行政や金融機関などをつなぐパイプ役の役割を果たします。
企業の成長戦略策定や業務効率化を図ることで、事業再生を推進します。
弁護士
会社法、倒産法、労働法など、関連する法律の専門知識を持っている弁護士は、法律のプロフェッショナルです。事業再生を進める際に、様々な場面でサポートを行うことができます。
MBA(経営学修士)
経営に関する豊富な知識で、企業の再構築プロセスを描き、グローバルな視点からの課題解決や効率的な組織運営が行えます。規模の大きな案件に携われます。
事業再生コンサルタントというキャリアの魅力
事業再生コンサルタントを目指しいている方で、現状のキャリアを歩む中で感じている悩みや課題はありますか?
「クライアントとの関係が一過性で、成果を長期的に見届けられない」「短期間でのプロジェクトが多く、深い関わりが難しい」「同じような案件が続き、新しい挑戦が少ない」といった悩みを抱える方にとって、事業再生コンサルタントは非常に魅力的な選択です。
事業再生は、クライアント企業と長期的な関わりを持ち、成功を見届けられる点も魅力です。また、毎回異なる企業の再生に携わるので新たな挑戦が常にあり、キャリアに新鮮さと充実感をもたらすことができます。
事業再生コンサルタントへの転職を考える
ここからは、事業再生コンサルタントになるためのアプローチ方法を紹介します。
1.関連分野での経験を積む
事業再生に必要なスキルを身につけるために、関連分野での実務経験を積むといいでしょう。たとえば、監査法人で戦略コンサルタントや業務コンサルタントを経て、ネクストキャリアで事業再生コンサルタントを選択する人は多くいます。
戦略・業務コンサルティングの経験を積めば、企業の将来の方向性を見極めて改善する力や、競争を勝ち抜くための戦略的思考を養えます。
さらに、再生企業が新たな市場で成功を収めるところまで導く力が磨かれます。これらの分野での経験は、事業再生コンサルタントとして必要なスキルのベースとなります。
2.事業再生の知識を深める
事業再生の分野においても、最新の情報・知識を持っていることは不可欠です。
関連するセミナーや研修、書籍などを積極的に活用して専門的な知識を学び続けることも必要です。セミナーや研修では、実際の事例や最新のトレンドを学べる機会が豊富にあります。実務に直結するスキルが身につくでしょう。また、書籍やオンラインリソースを活用すれば、自分のペースで深く学べます。
業界の最新動向を常に捉えておくことで、より効果的な再生計画を提案し、クライアントの期待に応えやすくなります。
3.ネットワークを構築する
事業再生を成功させるためには、公認会計士や弁護士、税理士など専門家とのネットワークが非常に重要です。
事業再生コンサルタントとして実務に就いたとき、こうした専門家と良好な関係を築いていれば、プロジェクトにおける迅速な対応や問題解決が可能になります。例えば、公認会計士との協力によって資金調達がスムーズに進んだり、弁護士や税理士とのパイプがあれば法的・税務的な問題も解決しやすくなります。
日ごろから、異業種交流会などでネットワークを構築するよう心がけると良いでしょう。
事業再生コンサルタントを目指すなら
事業再生コンサルタントは企業を再び成長軌道に乗せるために、豊富な知識をはじめ柔軟な思考、リーダーシップ、そして情熱を必要とする魅力的なキャリアです。
あなたのこれまでのコンサルティング経験を活かし、企業の未来を切り拓く一歩として、目指す価値は十分にあると言えるでしょう。
こちらの記事では、公認会計士、税理士の在籍数が多く、実績の豊富さで定評のあるコンサル5社を紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。