2026年10月29日
「保証付きの融資は、借りてしまえば次の決算まで銀行とのやりとりはほとんどない」と思っていませんか?
2026年3月16日に始まった「モニタリング強化型特別保証制度」(略称:モニ特別)は、少し仕組みが違います。借りたあとも、税理士などの専門家と一緒に毎月の数字を確認し、年に1回、金融機関に報告することが利用の条件になっているのです。
そのぶん、保証料の約半分を国が補助してくれます。ただし補助の対象は2027年3月31日までの保証申込で、それ以降は補助があるかどうかもまだ決まっていません。
本記事では、制度の中身、借りたあとにやること、経営者にとってのメリットと注意点を、できるだけシンプルに解説します。
この記事でわかること
- モニタリング強化型特別保証制度の目的と、つくられた理由
- 保証限度額・保証期間・保証料補助などの基本条件
- 借りたあとに必要な「月次管理」「年1回の報告」「4者協議」
- 経営者にとってのメリットと注意点
1. モニタリング強化型特別保証制度とは?
ひとことでいうと、「お金を借りやすくする支援」と「経営を見守る支援」をセットにした信用保証制度です。
信用保証協会が保証人となって金融機関からの融資を受けやすくする点は、ほかの保証制度と同じです。違うのは、借りたあとの「モニタリング(定期的な経営状況の確認と報告)」が最初から組み込まれていることです。
① 目的:経営悪化の「予兆」を早めにつかむ
東京信用保証協会は、この制度の目的を次のように説明しています。
- 物価高や人手不足などの課題を抱える中小企業の、成長や立て直しに必要な資金需要に応える
- 認定経営革新等支援機関(税理士など)と連携した定期的なモニタリングで、経営状況が変わる兆しを早めにとらえる
- 経営支援を通じて経営力を高め、経営状況の改善につなげる
たとえるなら、年に1回の健康診断だけでなく、毎月体重と血圧を測っておき、数値がおかしければ早めに医師と相談するようなイメージです。
※参照元:東京信用保証協会「「モニタリング強化型特別保証制度」の創設について」
② なぜ今つくられたのか
中小企業庁の資料によると、制度ができるまでの流れは次のとおりです。
- 2025年3月27日:国の研究会の報告書で、税理士・公認会計士など企業と日ごろ接点のある支援者の関与も含め、企業にとってメリット(インセンティブ)のある信用保証の仕組みを早く検討するべきだと整理された
- 2025年11月21日:閣議決定された総合経済対策に、地域金融機関・信用保証協会・士業などが連携して「予兆管理」を強化する信用保証制度の新設が盛り込まれた
- 2026年3月16日:取扱開始
つまりこの制度は、「保証料を補助する代わりに、経営の数字を定期的に共有してください」という考え方でつくられた制度です。
※参照元:中小企業庁金融課「モニタリング強化型特別保証制度のモニタリングについて」
2. 制度の中身を表でチェック
まずは基本条件を一覧で確認しましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 利用できる人 | 認定経営革新等支援機関と連携して、月次で財務状況や資金繰り状況などを把握し、経営状況などを報告することを誓約する中小企業者 |
| 保証限度額 | 2億8,000万円(普通保証2億円以内、無担保保証8,000万円以内)。組合等は4億8,000万円以内。複数の信用保証協会の利用分を合算した金額 |
| 保証割合 | 責任共有対象(80%保証) |
| 対象資金 | 事業資金(運転資金・設備資金・運転設備資金) |
| 保証期間 | 分割返済:10年以内(据置期間は運転資金1年以内、設備資金・運転設備資金3年以内)/一括返済:1年以内 |
| 担保 | 必要に応じて |
| 保証人 | 必要に応じて(法人代表者以外の連帯保証人は原則求めない) |
| 添付書類 | 所定の申込資料+「モニタリング強化型特別保証制度申込人資格要件申告書兼誓約書」 |
| 取扱期間 | 2026年3月16日〜2029年3月31日に信用保証協会が保証申込を受け付けたもの |
※参照元:中小企業庁金融課「モニタリング強化型特別保証制度のモニタリングについて」、東京信用保証協会「「モニタリング強化型特別保証制度」の創設について」
保証料は国が約半分を補助(2027年3月末の申込まで)
保証料率は、決算書をもとにした財務面の評価に、財務以外の要素(定性要因)を加えて、9つの区分のどれかに決まります。2026年3月16日から2027年3月31日までに保証申込をした場合、次の補助率に相当する額を国が補助します。
| 区分 | ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 保証料率(%) | 1.90 | 1.75 | 1.55 | 1.35 | 1.15 | 1.00 | 0.80 | 0.60 | 0.45 |
| 補助率(%) | 0.95 | 0.87 | 0.77 | 0.67 | 0.57 | 0.50 | 0.40 | 0.30 | 0.22 |
| 事業者負担(%) | 0.95 | 0.88 | 0.78 | 0.68 | 0.58 | 0.50 | 0.40 | 0.30 | 0.23 |
たとえば区分⑥の会社なら、本来1.00%の保証料率のうち0.50%を国が負担し、実際の負担は0.50%になります。どの区分でも、事業者の負担は1%未満です。
注意したいのは次の2点です。
- 2027年4月1日以降の申込は、補助があるかどうかも、補助率も未定
- 返済条件の変更などで追加で発生する保証料(条件変更保証料)は、補助の対象外
※参照元:東京信用保証協会「「モニタリング強化型特別保証制度」の創設について」、一般社団法人全国信用保証協会連合会「日本の信用保証制度 2023」
利用のカギは「認定経営革新等支援機関」との連携
この制度を使うには、認定経営革新等支援機関と連携することが必須です。
認定経営革新等支援機関とは、中小企業の経営を支援する専門家として国の認定を受けた機関です。2025年3月末までに37,326機関が認定を受けており、税理士・税理士法人、中小企業診断士、公認会計士、弁護士、民間のコンサルティング会社、商工会議所、信用金庫や銀行など、顔ぶれはさまざまです。
顧問税理士がいる会社は、まず認定の有無を確認しましょう。
※参照元:中小企業庁・金融庁「令和7年度 認定経営革新等支援機関に関する調査報告」
なお、融資を申し込む金融機関そのものを支援機関とする場合は、その金融機関のプロパー融資(保証なしの融資)の残高が、金融機関からの総借入残高の5割以上であることが条件になります。
プロパー融資と保証付き融資を組み合わせる保証制度には、2025年に始まった「協調支援型特別保証」もあります。詳しくは「協調支援型特別保証とは?資金繰りに悩む経営者が知るべき新制度を解説」の記事をご確認ください。
3. 借りたあとにやること【3ステップ】
モニ特別のいちばんの特徴は、融資を受けたあとの「モニタリング」です。
期間は、借入をした事業年度から5事業年度分です(これを「モニタリング期間」といいます)。たとえば3月決算のA社が2026年5月に借りた場合、最後の月次管理は2031年3月分となります。
Step 1:月次管理(毎月)
会社と支援機関が連携して、毎月の財務状況や資金繰り状況を把握します。
- 原則として、対象月の翌月末までに実施(例:5月の実績は6月末まで)
- 国が参考様式の「月次管理表」を用意しているが、ほかの様式を使ってもよい
月次管理の結果を金融機関へ毎月提出する、という仕組みではありません。毎月の確認は会社と支援機関で行い、金融機関には次のStep 2・Step 3で報告します。
Step 2:モニタリング報告(年1回)
年に1回、会社と支援機関が「モニタリング報告書」を作成し、会社が金融機関に提出します。信用保証協会には金融機関を通じて報告されます。
| 決算期 | 金融機関への提出時期 |
|---|---|
| 4月〜9月 | 12月中 |
| 10月〜3月(個人事業主を含む) | 6月中 |
なお、借入をした最初の事業年度の分は、2年目の分とまとめて報告します。決算期によっては、決算が確定してから報告までの期間が短くなるため、スケジュール管理が大切です。
Step 3:経営状況の変化に関する報告と「4者協議」(異変があったとき)
モニタリング期間中に次のどちらかにあてはまったら、会社と支援機関で「経営状況の変化に関する報告書」を作成し、速やかに金融機関へ提出します。
- 今後6か月以内に資金不足が心配されるとき
- 上記にあてはまらなくても、報告が必要だと判断したとき(例:主要取引先の経営悪化や取引条件の変更で収益性が大きく下がった、社員の退職で営業力や技術力に課題が出そう など)
報告書と一緒に直近の決算書を出し、資金不足が心配な場合は資金繰り表なども添えます。
報告のあとは、原則として会社・支援機関・金融機関・信用保証協会の4者で話し合い(4者協議)、経営支援や金融支援が必要かどうかを検討して、今後の支援方針を共有します。全員が一か所に集まる必要はなく、電話やオンライン会議でもかまいません。
※参照元:中小企業庁金融課「モニタリング強化型特別保証制度のモニタリングについて」
4. 経営者にとってのメリットと注意点
メリット:保証料が安く、資金ショートの「手前」で手を打てる
まず、保証料の事業者負担がすべての区分で1%未満になる点は大きなメリットです。
もうひとつのメリットは、「6か月以内に資金不足が心配」という段階で、関係者が集まって対策を考える仕組みがあることです。資金繰りの問題は、気づくのが早いほど打てる手が多くなります。お金が尽きる直前に銀行へ駆け込むのではなく、余裕のあるうちに金融機関や保証協会と話し合えるのは、経営者にとって大きな強みです。相談のタイミングがなぜ重要なのかは、「資金繰りの行き詰まりは「相談のタイミング」で変わる!」の記事をご確認ください。
さらに、毎月の数字を専門家と確認する習慣がつけば、経営判断の材料が増えます。経営の実態を正しく伝え続けることで、金融機関との信頼関係も強くなります。
注意点:5年間の手間と「悪い報告」も必要なこと
一方で、次の点は事前に理解しておきましょう。
- 月次管理と年1回の報告が、最長5事業年度続く(途中で完済すれば、その時点で終わる)
- 業績が悪くなったときほど、報告が必要になる
- 支援機関とどこまで一緒に作業するか、依頼の範囲や費用は事前に確認が必要
- 保証料補助は2027年3月31日までの申込分が対象
とくに2つ目は大切です。この制度は、悪い数字も早めに共有することが前提です。「銀行に知られたくない」と報告を先延ばしにすると、制度の意味がなくなってしまいます。
5. よくある質問(FAQ)
Q経営者保証なしで利用できますか?
A経営者保証を外す選択肢があります。
保証人は「必要に応じて」求める扱いで、法人代表者以外の連帯保証人は原則不要です。また、本制度は「事業者選択型経営者保証非提供制度」の対象です。ただし、この制度を使って経営者保証を外す場合に上乗せされる保証料は、国の補助の対象外です。
Q途中で全額返済したら、報告はどうなりますか?
A完済すれば、モニタリングも終わります。
月次管理は完済日の前々月の実績分(完済日の前月に実施)までです。年1回の報告も、完済した時点で報告期限(12月末または6月末)が来ていない分は不要です。
Q取引先の銀行を支援機関にしてもいいですか?
A条件つきで可能です。
申込先の金融機関を認定経営革新等支援機関とする場合は、その金融機関のプロパー融資の残高が、金融機関からの総借入残高の5割以上であることが必要です。条件を満たさない場合は、税理士など別の支援機関と連携することになります。
※参照元:中小企業庁金融課「モニタリング強化型特別保証制度のモニタリングについて」
まとめ:モニ特別は「借りたあとも一緒に走る」保証制度
モニタリング強化型特別保証制度のポイントを振り返ります。
- 資金繰り支援と経営支援をセットにした、2026年3月スタートの信用保証制度
- 保証限度額は2億8,000万円、保証期間は最長10年
- 保証料の約半分を国が補助(2027年3月31日までの申込分)
- 借りたあとは、支援機関との月次管理と年1回の報告が5事業年度続く
- 資金不足の兆しがあれば、4者協議で早めに対策を考える
手間はかかりますが、毎月の数字を見る習慣と、困ったときに相談できる体制を同時に手に入れられるのがこの制度の本質です。
利用を考えるなら、まずは取引先の金融機関や顧問税理士に相談しましょう。
すでに資金繰りが厳しく、返済の見直しまで必要な状況なら、事業再生コンサルタントへ早めに相談するのが近道です。民間のコンサルティング会社にも認定支援機関の認定を受けている会社があり、事業再生に強いコンサルタントなら、制度の活用から返済計画の見直し、金融機関との交渉まで一緒に進められます。相談先の選び方は「事業再生に強いおすすめコンサル会社3社とコンサルの選び方」の記事をご確認ください。
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