2026年10月29日
「仕事はあるのに、なぜか手元にお金が残らない」――そんな不安を抱えながら現場を回していませんか?
いま建築業では、倒産が増え続けています。東京商工リサーチによると、2025年の建設業の倒産は2,014件で、12年ぶりに2,000件を超えました。2026年に入っても勢いは止まらず、帝国データバンクの調査では、上半期の倒産と廃業の合計がリーマン・ショック直後を上回り、過去最多となっています。
倒産の多くは、資金に余裕のない小さな会社で起きています。資材の値上がりや工期の遅れが重なると、仕事があっても資金繰りが一気に苦しくなることがあるのです。
本記事では、最新データから建築業の「倒産ラッシュ」の実態と原因を整理し、経営者が今すぐ取るべき対策をわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 建築業の倒産ラッシュを示す最新データ
- 倒産が増えている業態と会社の規模
- 倒産が止まらない3つの要因
- 経営者が今すぐ取るべき3つのアクション
1. 建築業の「倒産ラッシュ」は本当か?最新データで確認
2025年の倒産は2,014件、4年で約2倍に
東京商工リサーチによると、2025年の建設業の倒産は2,014件(前年比4.6%増)で、4年連続で前年を上回りました。2,000件を超えたのは、2013年以来12年ぶりです。
コロナ禍の2021年は1,065件で、2000年以降で最も少ない水準でした。そこからわずか4年で、倒産件数は約2倍に増えたことになります。
※参照元:東京商工リサーチ「止まらない建設業の倒産、職別工事が総合工事を抜く」
2026年上半期は倒産と廃業の合計が「リーマン超え」
帝国データバンクによると、2026年上半期(1-6月)の建設業の倒産は1043件(前年同期比5.8%増)でした。さらに、倒産以外の形で事業をやめた休廃業・解散は4894件(同27.8%増)にのぼります。
両者を合わせた「撤退」は5937件となり、上半期としてはリーマン・ショック直後の2009年(5811件)を上回って過去最多となりました。つまり、倒産だけでなく、自ら事業をたたむ会社も急増しているのが今の特徴です。
※参照元:帝国データバンク「『建設業』の倒産・休廃業解散動向(2026年上半期)」
最新の2026年度上半期(4-9月)も高い水準が続く
2026年10月に発表された最新の集計でも、建設業の倒産は高い水準にあります。帝国データバンクの集計では1071件(前年同期比5.7%増)で、半期ごとにみると4期連続で1000件を超えました。
東京商工リサーチの集計では1,035件(同0.09%減)と前年並みでしたが、こちらも2年連続で1,000件台です。集計の基準は異なりますが、どちらも半年で1,000件を超える倒産が続いている点は同じです。
※参照元:帝国データバンク「倒産集計 2026年度上半期報(4月~9月)」、東京商工リサーチ「2026年度上半期(4-9月)の全国企業倒産5,373件」
2. どこで倒産が増えているのか?業態と規模でみる
中心は下請けの専門工事業者と小さな会社
東京商工リサーチによると、2025年は大工・とび・塗装・内装などの「職別工事業」の倒産が814件となり、元請けとなることの多い「総合工事業」(774件)を上回りました。職別工事業が総合工事業を上回ったのは、2000年以降で初めてです。
この流れは2026年も続いています。帝国データバンクの2026年度上半期の集計でも、内装工事や防水工事などの「職別工事」の倒産は527件(前年同期465件)と大きく増えました。
規模でみると、2025年に倒産した建設会社のうち、代表者を含む従業員数が10人未満の会社が91.4%を占めています。つまり、倒産ラッシュの中心は、一人親方や数人規模で下請け工事を担う会社です。東京商工リサーチは、下請け中心の小規模な専門工事業者は価格交渉力が弱く、厳しい経営から抜け出しにくいと指摘しています。
ハウスメーカー・工務店の倒産も急増
新築住宅を手がけるハウスメーカーや工務店も苦しい状況です。東京商工リサーチによると、ハウスメーカー(木造建築工事業)の倒産は2026年上半期に118件(前年同期比87.3%増)と、2倍近くに増えました。
帝国データバンクは、建築資材や土地の価格高騰、住宅ローン金利の上昇による着工数の減少に加え、建築基準法の改正(4号特例の縮小など)に伴う確認申請の厳格化や工期の延長も重なり、事業継続を断念する事業者が多いと分析しています。
2026年7月には、木造注文住宅メーカーのアエラホーム(株)が約61億6,100万円の負債を抱えて民事再生法を申請しました。資材価格の高騰や住宅需要の冷え込みなどにより、5期連続で最終赤字を計上していました。詳しくは「ハウスメーカーのアエラホーム(株)、約61億6,100万円の負債で民事再生法を申請」の記事をご確認ください。
※参照元:東京商工リサーチ「ハウスメーカーの倒産、26年上半期9割増の衝撃」
3. 建築業の倒産が止まらない3つの要因
要因1:資材価格の高止まりとナフサ不足
建設物価調査会の建設資材物価指数(東京、2015年=100)は、2026年6月の建築部門で147.8(前年同月比4.9%上昇)でした。資材価格は2015年と比べて5割近く高い水準にあります。
さらに2026年は、中東情勢をきっかけにナフサ(粗製ガソリン)の供給が不安定になり、ユニットバスや塗料、断熱材、塩化ビニール管など石油由来の資材で欠品や値上がりが続いています。帝国データバンクによると、資金力のある大手ゼネコンやハウスメーカーには資材が優先的に回る一方、中小の工務店や施工会社からは「そもそも材料が回ってこない」との声も聞かれます。資材を確保できる会社とできない会社の差が広がっているのです。
実際、帝国データバンクの2026年度上半期の集計では、仕入れ価格の上昇などによる「物価高倒産」628件のうち、建設業が176件で最も多くなりました。
※参照元:建設物価調査会「建設資材物価指数(2026年6月分)」
要因2:人手不足と人件費の上昇
建設業では職人の不足と高齢化が進み、東京商工リサーチは施工力が「希少資源」になりつつあると指摘しています。人を確保するための賃上げも避けられません。国土交通省が決めた2026年3月からの公共工事設計労務単価は、全国全職種の単純平均で前年度比4.5%上がり、14年連続の引き上げとなりました。
帝国データバンクの2026年度上半期の集計では、人手不足倒産225件のうち、建設業が70件で最も多くなっています。
※参照元:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」
要因3:価格転嫁が難しく「支払い先行」で資金が尽きる
資材費や人件費が上がっても、下請けの立場では値上げを受け入れてもらうのは簡単ではありません。さらに東京商工リサーチは、案件によっては支払いが入金より先になり、資金繰りに余裕がなくなりやすいと指摘しています。
例えば、架空のA社が1,000万円の工事を受注し、着工時に材料費と外注費600万円を先に支払い、完成後に代金を受け取る契約だったとします。部材が届かず工期が2か月延びれば、入金も2か月遅れます。その間も、職人の給料やほかの現場の支払いは待ってくれません。
帝国データバンクも、手元資金に余裕がない小規模事業者や一人親方は、資材の急な値上げや部材不足による工期遅延が重なると、資金繰りが急速に悪化しやすいとしています。つまり、仕事があっても、お金の出入りのタイミングがずれるだけで会社が倒れることがあるのです。
4. 経営者が今すぐ取るべき3つのアクション
Action 1:資金繰り表で「工期のずれ」を見える化する
まずは、現場ごとの入金予定と支払予定を月ごとに並べた資金繰り表をつくりましょう。そのうえで「工期が2か月延びたら」「資材がさらに1割上がったら」と条件を変え、手元の現金がいつ足りなくなるかを確かめます。
資金が足りなくなる時期が先に分かれば、金融機関への相談や支払い条件の見直しなど、打てる手を早めに準備できます。
Action 2:価格転嫁と取引先の分散で利益を守る
見積書や契約書には、資材価格が大きく動いたときに金額を協議するルール(スライド条項など)を入れておきましょう。口約束のままでは、値上がり分を自社がかぶることになりかねません。
また、東京商工リサーチの取材では、小規模でも好調な会社は品質で信頼を得て複数の顧客を持ち、リスクを分散していると紹介されています。信頼があれば価格転嫁もしやすくなります。1社の元請けに頼りきりになっていないか、一度見直してみましょう。
Action 3:資金が尽きる前に事業再生コンサルへ相談する
資金繰りが本当に行き詰まってから動くと、取れる手段は限られてしまいます。借入金の返済条件の見直し(リスケジュール)や公的な支援機関の活用、不採算部門の整理など、早い段階ほど選べる再生の道は多くなります。
事業再生コンサルタントは、資金繰りの立て直しや金融機関との交渉を経営者と一緒に進める専門家です。「まだ大丈夫」と思えるうちに一度相談し、自社の資金がいつまでもつかを客観的に確かめておきましょう。
参考記事:「資金繰りの行き詰まりは『相談のタイミング』で変わる!事業再生コンサルが行う支援とは」
参考記事:「資金繰り破綻寸前の経営者が知るべき『中小企業活性化協議会』活用の手順と仕組み」
5. よくある質問(FAQ)
Q建築業の倒産ラッシュはいつまで続きますか?
A当面は高い水準が続く可能性が高い。
帝国データバンクは、中東情勢による資材不足や価格高騰は経営努力でコントロールしにくく、事業継続を断念する建設業者は増える可能性が高いとみています。資材高・人手不足・金利上昇が重なっており、すぐに落ち着くとは考えにくい状況です。
Qナフサ不足による倒産はもう起きていますか?
A2026年6月末時点では、ナフサ不足が決定的な原因となった倒産は確認されていません。
ただし帝国データバンクによると、2021年のウッドショックは、木造建築工事業者の倒産として表面化するまで約3年かかりました。コストの打撃は時間差で倒産につながるため、今後の動きに注意が必要です。
※参照元:帝国データバンク「『物価高倒産』の動向(2026年上半期)」
Q小さな工務店でも事業再生はできますか?
A早めに動けば、再生の道はあります。
再生の方法は、民事再生のような裁判所の手続きだけではありません。金融機関と返済条件を見直す、公的な支援機関の力を借りるなど、会社の規模や状況に合った方法があります。資金が尽きる前に、専門家へ相談することが大切です。
まとめ:「仕事がある」うちに資金繰りを守る手を打とう
建築業の倒産は2025年に12年ぶりの2,000件超えとなり、2026年も半年で1,000件を超えるペースが続いています。中心にいるのは、下請け工事を担う小さな会社です。
資材の高止まり、ナフサ不足、人手不足、そして支払い先行の資金繰り。どれも一社の努力だけでは止められない逆風です。だからこそ、資金の出入りを見える化し、価格転嫁と取引先の分散を進め、苦しくなる前に専門家へ相談することが会社を守る近道になります。
「まだ大丈夫」と思える今こそ、早めの一歩を踏み出しましょう。
関連記事
-
2026年10月29日モニタリング強化型特別保証制度とは?保証料の約半分を国が補助する新制度をわかりやすく解説「保証付きの融資は、借りてしまえば次の決算まで銀行とのやりとりはほとんどない」と思っていませんか? ...
-

-
2026年09月28日2027年3月「約束手形廃止」で会社が倒れる? 経営者が今すぐ知るべき3つの資金繰りリスク「約束手形が完全廃止されるのは2027年3月だから、まだ時間はある」と安心していませんか? もしそう...
-

-
2026年09月28日7期連続赤字からの脱却!老舗酒蔵が達成した「本業黒字化」のメカニズムを解説長年の赤字に苦しむ企業が、どのようにして本業での利益(営業利益・経常利益)を取り戻すことができるのか...











