経営者が抑えるべき「中小企業活性化パッケージ」のポイント解説

経営者が抑えるべき
「中小企業活性化パッケージ」のポイント解説

2020年4月以降から行われてきたコロナ関連融資も返済期間を迎えようとしています。融資条件通りに全額を返済できると回答した事業者が8割に上る一方、1割弱は返済が困難となっています。

本コラムでは、このコロナ関連融資の返済が難しい事業者を支援するために策定された「中小企業活性化パッケージ」のポイントについて解説していきます。

コロナ禍の中小企業はかなり手厚い支援を受けている

コロナ禍における中小企業への支援は、大きく言って「資金繰り支援」と「収益力改善・事業再生・再チャレンジの一元的支援」の2つに分かれます。

まずは「資金繰り支援」から解説していきます。

コロナ真っ只中2021年の倒産件数は57年振りの低水準に

コロナ禍となった2020年4月以降、政府系金融や保証付き融資などによる各種の金融支援策が行われました。それにより、官民金融機関における中小企業向け貸し出し金額は大きく増加しています。その結果、2021年の倒産件数は1964年に記録した4212件以来、57年振りの低水準となる6030件に止まっています。

融資返済はこれから本格スタートも1割弱の企業が返済困難

実質的に無利子・無担保であるコロナ関連融資は幅広い層に行き届き、手元の現預金も比較的積み上がっています。このコロナ関連融資もそろそろ返済時期を迎えるようになっています。

帝国データバンクが2022年3月に行った調査によると、融資条件通りに全額を返済できると回答した事業者が81%いる一方、「返済条件の緩和を受けないと返済は難しい」など、返済に不安がある事業者も9%に上っています。この1割弱の事業者は2022年2月24日に発生しているウクライナ情勢に端を発した、原油・原材料高が追い打ちをかけたものと見られています。

経済産業省が策定した「中小企業活性化パッケージ」は、コロナ関連融資の返済が難しい1割弱の事業者を支援するためのものとなっています。

地域経済を支える中小企業の倒産を防ぐ

日本の企業数の99.7%を占める中小企業の再生は、雇用を守り地域の財政を守る地域経済活性の鍵です。地域経済を支える中小企業の倒産を防ぐために「中小企業活性化パッケージ」では、コロナ関連融資の期間を延長した上で実質無利子・無担保融資や危機対応融資を2022年9月度まで継続することを決定しています。

また、日本公庫の資本性劣後ローンについても2023年度末まで継続することを決定しています。

コロナ禍資金繰り支援策まとめ

資金繰り支援の継続や債務に苦しんでいる中小企業の収益力改善、事業再生、再チャレンジを促すことを目的としている「中小企業活性化パッケージ」は、経済産業省が金融庁や財務省と連携して策定した施策です。

「中小企業活性化パッケージ」では、以下の支援施策を実施しています。

実質無利子・無担保融資 セーフティネット貸付 セーフティネット保証4号 資本性劣後ローン
対象 コロナ禍により直近1ヵ月の売上高が前4年と比較して一定程度減少した企業 ウクライナ情勢に伴う原油価格や原材料の高騰などの影響に苦しむ企業 ①指定地域において1年間以上継続して事業を行っている
②コロナ禍により売上高が20%以上減少し、今後も減少が見込まれる
コロナ禍の影響を受けた企業かつ次のいずれか
※1に該当する方
限度額 無利子枠:
中小事業3億円
国民事業6,000万円
融資枠:
中小事業6億円
国民事業8000万円
中小事業7.2億円
国民事業4,800万円
2.8億円 中小事業10億円
国民事業7,200万円
実施機関 政府系金融機関 日本政策金融公庫 信用保証協会 政府系金融機関
期間 最長20年 運転資金 最長8年
設備資金 最長15年
10年程度 最長20年
利率 一定の要件を満たした場合、当初3年間無利子 利益率が5%以上減少した場合、基準利率▲0.4% 返済期間、融資額により0.5~2.95%

※1
1.J-Startupプログラムに選定された方、または中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資を受けた方
2.中小企業活性化協議会の支援を受けて事業の再生を行う方または中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合の関与のもとで事業の再生を行う方
3.上記1および2に該当しない方で、事業計画書を策定し、民間金融機関などによる支援を受けられるといった支援体制が構築されている方

●詳細は日本政策金融公庫のWebサイトをご覧ください。

実質無利子・無担保融資の継続

日本政策金融公庫(中小事業、国民事業)、商工中金といった政府系金融機関では実質無利子・無担保融資、危機対応融資を行っていましたが、融資期間を15年から20年へと延長し、申請期限も2022年6月末まで延長しています。

セーフティネット貸付の要件緩和

正式には「経営環境対応資金」と呼ばれるセーフティネット貸付は日本政策金融公庫が実施する融資です。過去に比べて売り上げが5%以上減少している中小企業者に対して、最大4800万円を基準金利(2.5%前後)で貸し付けるものです。

設備資金は返済期間上限15年、運転資金は返済期間上限8年となっており、据置期間3年を含み無担保・無保証人で借りることができます。

なお、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた特例措置として、売り上げが5%以上減少といった数値要件にかかわらずに、今後の影響が見込まれる事業者も含めて融資対象になるよう要件が緩和されています。

セーフティネット保証4号の期限延長

セーフティネット保証は1~8号までありますが、新型コロナウイルス感染症に関係するのは4号と5号です。「中小企業活性化パッケージ」では、「最大2.8億円、80%保証」の一般保証に上乗せした「最大2.8億円、100%保証」という別枠保証の対象となっているセーフティネット保証4号申請期限を2022年3月1日から2022年6月1日まで延長しています。

対象となる中小企業は、指定地域において1年間以上継続して事業を行っており、直近1ヵ月の売上高が前年同月比で20%以上減少し、その後の2ヵ月を含む3か月間の売上高が前年同期比で20%以上減少することが見込まれる事業者となっています。

資本性劣後ローンの継続

民間金融機関が自己資本としてみなすことができるために融資が受けやすくなる傾向を持つ資本性劣後ローンは、2023年3月末まで継続となりました。この資本性劣後ローンは、融資限度額が直接貸付で10億円と大きなものとなっています。

コロナ禍で資本性劣後ローンを活用した事例として過去記事でも紹介しています。

事業の状態によって3つのフェーズに支援を分類

「中小企業活性化パッケージ」の中の総合的支援施策パッケージでは、「収益力改善フェーズ」「事業再生フェーズ」「再チャレンジフェーズ」とフェーズを3つに分けて支援が行われます。これらは計画だけでなく実行に移すための支援となっています。

収益力改善フェーズ

収益力改善フェーズでは、認定経営革新等支援機関や中小企業活性化協議会の支援を受け収益力の改善を目指す「認定支援機関の伴走支援強化」と「協議会による収益力改善支援強化」という2つの施策が用意されています。

経営改善計画策定支援事業の内容

「認定支援機関の伴走支援強化」では、認定経営革新等支援機関の計画策定支援だけでなく計画実行までの伴走支援が強化されます。中小企業庁が認めた認定支援機関に伴走してもらうことにより、専門家の見地で経営状況を分析して事業計画を策定。実行のモニタリングまでを行ってもらえるようになっています。

「協議会による収益力改善支援強化」では、特例リスケジュール支援として当面の資金繰りを確保していきます。それに加えて、収益改善に向けた計画策定支援と資金繰り計画の策定を行ってから、金融機関への返済猶予を要請しますので、より具体的な事業改善計画を作成して金融機関とやり取りできるようになります。

2022年4月1日以降、ポストコロナを見据えた収益力改善支援へとシフトした経営改善計画策定支援は以下の流れに沿って実施されます。

  • ①収益力改善に向けた計画策定支援(必須へと変更)
  • ②資金繰り計画の策定支援(今後数年間の資金繰り計画の策定を支援)
  • ③リスケジュール
    (金融機関の支援姿勢を確認後、中小企業に代わって金融機関に返済猶予を要請)
  • ④定期的なモニタリング
    金融機関との支援方針の目線合わせ
  • ⑤金融機関とアクションプランの進捗状況を確認し今後の支援方針を擦り合わせ
  • ⑥適切な支援策への移行
補助対象経費
  • ①DD・計画策定支援費用
  • ②伴走支援費用
  • ③金融機関交渉費用
補助率 2/3
補助上限額
  • ①200万円 }
  • ②100万円 }=計300万円
  • ③10万円

事業再生フェーズ

事業再生フェーズでは、再生事業者や債務超過などに悩む事業者の支援を主体とした以下のような支援施策があります。

中小企業再生ファンドの拡充

中小企業基盤整備機構の最大出資比率を50%から80%へ引き上げ、補正予算300億円も活用していきます。この拡充によって、コロナ禍の影響が大きい飲食業や宿泊業などを重点的に支援するファンドの組成やファンド空白地域の解消促進を狙っています。

事業再構築のために最大1500万円の補助金導入

事業再生に取り組む事業者の収益力改善を促すために、事業再構築補助金では通常枠よりも補助率を引き上げた「回復・再生応援枠」を策定しました。補助金額は最大で1500万円(従業員数21人以上)となっています。

ガイドラインにより基準を明確化

中小企業再生ファンドは、中小企業に向けて見直しを図り基準を明確化しています。

元本などの返済一時停止のタイミング 事業再生計画案の策定前
(債権放棄案件であっても再生の基本方針で可)
実質債務超過解消までの年数 5年以内を目処
(小規模事業者の債務猶予案件はさらに緩和)
経営者責任の扱い 感染症などの影響に配慮しつつ経営者責任を明確化

第三者支援専門家(弁護士、会計士等)の費用を最大700万円助成

中小企業の円滑な事業再生を支援するために、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」の策定・活用が行われています。このガイドラインにある「中小企業版私的整理手続」に基づき私的整理を行い、認定経営革新等支援機関による計画策定支援を受けていれば、弁護士や会計士などの第三者支援専門家に必要となる費用を最大700万円まで補助されます。

再チャレンジフェーズ

廃業を考えている事業者や、既に廃業した事業者の支援を目的とした施策が再チャレンジフェーズです。本フェーズでは、「個人破産回避に向けたルールの明確化」や「再チャレンジ支援の拡充」が策定されています。

廃業時の経営者保証

廃業時に経営者が個人破産することの回避に向けた「経営者保証ガイドライン」に基づき、保証債務整理の申し出を受けた場合には「金融機関が誠実に対応する」というルールが明確化されています。

収益力改善・事業再生・再チャレンジの一元的な支援

2022年4月1日には、中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジという3フェーズを一元的に支援する組織として「中小企業活性化協議会」が全国47都道府県へ設置されています。

中小企業活性化協議会を中心に地域を支援

中小企業再生支援協議会と経営改善支援センターが統合された機関である中小企業活性化協議会では、できる限りで多くの事業者を迅速に支援していくために、金融機関や民間専門家などと連携して、中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジを地域全体で推進していくためのハブとして役割を担っています。

補助金活用で専門家に依頼し収益力改善を目指す

多くの中小企業を倒産させてしまえば日本経済も悪化の一途を辿ることになります。そこで、資金繰りが悪化している中小企業を再生し経済を悪化させていかないことが大切です。

経済を止めないためには政府でもさまざまな支援策を打ち出しています。専門家の再生計画に対する支援費用も最大700万円まで助成されますので、被害が大きくなる前にぜひ事業再生の専門家に相談をしてみてください。

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