【優良老人ホーム「サンフェニックス」が破産】やり手公認会計士が陥った錯誤とは

【優良老人ホーム「サンフェニックス」が破産】やり手公認会計士が陥った錯誤とは

2021年12月24日の日経産業新聞によると、高齢者向けの施設を運営していた社会福祉法人サンフェニックス(広島県福山市)が、同年9月28日に東京地裁に民事再生法の適用を申請し、再生手続き開始決定を受けました。

サンフェニックスの民事再生が特異なのは、同法人の理事長の本業が公認会計士だったことです。“財務のプロ”と言える公認会計士が経営を率いていたのに、なぜ破産にいたったのでしょうか。

本記事ではその真相を紐解いていきます。

サンフェニックスは中国地方の優良ホームだった

サンフェニックスは、特別養護老人ホームを運営するために1994年12月に設立。1995年10月に広島県で「特別養護老人ホームサンフェニックス」を開所したのに続いて、岡山県でも運営施設を増やしていきました。さらに2019年には東京都で「特別養護老人ホームハートテラス中野弥生町」を開所し、そのときには7施設を運営するまでとなっていました。

中国地区では規模の大きな社会福祉法人であり、介護士のきめ細かなサービスが利用者から評価を受けるなど、優良な老人ホームとして知られていたのです。

経営譲渡で一転!赤字に転落

優良老人ホームとして知られていたサンフェニックスが破産に至ったきっかけは、経営権を譲渡し赤字に転落したことでした。

42億円で会計事務所に経営権を譲渡

サンフェニックスは、2015年3月期には約20億9700万円の売上高を計上していました。しかし2015年10月には当時の理事長側が現理事長である佐藤裕紀氏に経営譲渡を打診し、2016年3月25日に最終合意契約書を締結。佐藤氏側が42億円を支払うことで同法人を譲り受け、2016年4月1日から新体制としてスタートしたのです。

現理事長である佐藤氏の本業は公認会計士でした。東京・霞が関に佐藤裕紀公認会計士事務所を構え、不動産の証券化事業で実績を持ち、都心ミニバブルの頃からは不動産投資も行っている“やり手”として通っていたのです。

さらに、政治団体「日本公認会計士政治連盟」では副幹事長の1人として国会対策局と組織局を担当しているなど、信頼をおける公認会計士でもありました。

サンフェニックスはかつて無借金経営を続けていたのですが、佐藤氏が買収後には設備投資を活発に行ったことで借入金が増加していました。また、新卒社員を含めて採用を増やしていったことで人件費が膨らむのと同時に、同業他社との競争激化により利用者離れを招いていました

同法人を経営権42億円で譲り受けたうち、20億円は先に支払い、残額22億円を毎年2億2000万ずつ分割払いすることとなっていました。この支払いも重くのしかかってきており、毎年のように赤字決算が発生し資金繰りが悪化していったのです

その後、2021年3月期には過去最高の売上高である約23億7800万円を計上し、表面上だけは経営状態は順調に見えていました。ただし佐藤氏に経営権が移ったことが、大きな落とし穴を生んでいたのです。

やり手公認会計士が経営に失敗した理由

その落とし穴とは、佐藤氏が支配するグループ企業にも資金を注ぎ込んでいたことでした。

グループ企業に資金30億円を注ぎ込む

佐藤氏は経営を支配する一般企業1社と医療法人3社を持っており、それらの企業は実質的なグループ企業となっていました。関係する企業も含めると40社近くにのぼると見られています。

そのグループ企業の間では資金循環が行われていたのですが、サンフェニックス買収後には同社も資金循環の輪に組み込まれるようになったのです。そして、買収時にサンフェニックスの手元にあった30億円の現預金も、資金循環の一環としてグループ企業へと流出していました

それでも期末になると、融通していた資金を戻すことで帳尻を合わせていました。しかし近年では他のグループ企業も損益状況が不調であったため、グループ企業内で資金を食いつぶすことになったのです。

その結果、サンフェニックス買収時にあった30億円の現預金が、2021年3月期には7944万円にまで減少することとなりました事業運営に必要な資金はほぼ消失したのです。

2021年3月期決算を迎える前には、弁護士を介して金融機関に対する債務返済計画も協議していました。スポンサー選定を前提に2020年10月から候補を探し複数の候補者と交渉していったのですが、その交渉は不調に終わってしまいました。

金融機関以外からの資金調達も模索していましたが、あえなく資金ショートを起こし、2021年9月28日の民事再生手続き開始へと至ったのです。

人手不足、稼働率低迷をコロナが追い打ち

サンフェニックスが破産に至った大きな要因には、人手不足と稼働率低迷があげられます

東京商工リサーチが2021年1月に発表したレポートによると、2020年の老人福祉・介護事業の倒産件数は前年比6.3%増の118 件を記録しています。

倒産の理由としては、新型コロナウイルス感染拡大が続いたことによる、いわゆる「コロナ倒産」もありますが、人手不足、後継者難、業歴の浅い企業の参入によるノウハウ不足が前年までに引き続き大半を占めています。

サンフェニックスでも、人手不足を補うために新卒社員を含めた採用を増やしています。さらに、人材確保のために紹介事業者も利用していましたが、その事業者に支払う手数料が負担となっていました。これらの理由により人件費が膨らみ、赤字につながっていきました。

また、サンフェニックスは異業種から参入したことで介護事業のノウハウが不足していました。そのため、2019年7月に開所したホームハートテラス中野弥生町では従業員がなかなか定着せずに稼働率の低下を招いています。

サンフェニックスの倒産は、人手不足と稼働率の低迷で赤字が膨らみ、コロナ禍が追い打ちとなって倒産に至ったという構図が見えてきます

関連企業が連鎖倒産!再生に向けた険しい道のり

サンフェニックスの民事再生では、監督委員ではなく管財人が選任されています。資金循環の流れが不透明なために、現理事長が残ったままでは再建が難しいと判断されました。また、施設の利用者を守るためにも、管理型の民事再生手続きのほうが良いと判断されたのです。

サンフェニックスが倒産した後、佐藤氏が実質的に支配しているグループ企業の一般企業1社と医療法人3社が相次いで破産手続き開始決定を受けています

佐藤氏が関係する企業は40社にものぼります。倒産に至った5社以外にも、資金循環が疑われる関連企業2社が破産準備に入っており、さらなる連鎖倒産の輪が広がる可能性もあります。

サンフェニックスをはじめとした管財人には経験豊富な人物が選任されており、次第に資金循環の流れは明らかになりつつあります。実態を解明していくことは再生につながりますが、その道のりは想像以上に険しいと考えられています。

財務のプロである公認会計士でも異業種経営は難しい

サンフェニックスはかつて、無借金経営を続けていた優良老人ホームでした。しかし、佐藤氏が買収した後の活発な設備投資や積極採用などの理由により借入金が増加。相次いで赤字決算が発生して資金繰りが悪化。倒産へと至りました。

“財務のプロ”である公認会計士でも、ノウハウを持っていない異業種に参入すると経営に失敗することがあるという見本のような事例です。資金繰りが悪化したときには手遅れになる前に、異業種にも対応ができ、多方面に知識のある専門のコンサルタントに相談することをおすすめします。

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